BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

231202-2。

『死せる獣 殺人捜査課シモンスン』(ロデ・ハマ、セーアン・ハマ著、松永りえ訳、ハヤカワポケットミステリ)というデンマークの警察小説を読んだ。これが今年1冊めに読んだ本。5人の男性の無残な他殺死体がみつかり捜査がはじまるが、被害者がみんな小児性愛のヘンタイ野郎だったという情報がメディアによってすっぱ抜かれ「だったらそんなやつら殺されて当然じゃないか」と犯人擁護の世論が激化、性犯罪の前歴者のプロフィールが流出し各地で市民によるリンチ騒動が起こるなどデンマーク国内は大混乱・・・という筋だった。

 

おもしろくなりそうな筋だし、じっさい前半はかなりセンセーショナルで、登場人物たちもみんな個性的で、キャラクターそれぞれにしっかりとしたドラマがあり、読んでてわくわくした。

 

けど後半はだいぶきつかった。警察が、犯人逮捕のためといっては法的、コンプライアンス的に完全にアウトな捜査手法にバンバン手を染めていくのだ。わたしはモラルのことを言いたいわけではなくて、単に「それがOKなんだったら、もうこの小説、なんでもアリってことになっちゃうじゃん」って思うわけで、そこが納得いかなかった。そういうチートをやらずにどうやって難局を切り抜けるのか、が腕のみせどころじゃないんかい笑 主人公のシモンスン警部補はそもそもはみ出し刑事ってかんじでもなくむしろすごく常識人タイプだったしさ。まあ、そのようにまじめなシモンスン警部補が、なりふりかまわぬ強引な手段に出たきっかけは、いちおう説明されていたのだが、ちょっと根拠としては弱く見えてしまった。

終盤の真犯人の扱いもひどかった。ふつうに「うわー、かわいそう。いくらなんでも、そんなことしなくても・・・」って感じた。

 

全体的に翻訳にすこし不安定さを感じ読みにくかった。誤訳じゃないか、とおもうようなところもチラホラあった。

 

でもストーリーとしてはおもしろかったとおもう。すこし脚色したうえで、全5回くらいの連続ドラマか、映画の形でみることができたら、もっとたのしく観られるかもしれない。

 

本国ではシリーズ3作めまで出ているらしい。邦訳で続編がでたら、また読んでもいい。シモンスン警部補の糖尿病が心配だし笑