BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想『ネクスト・ゴール・ウィンズ!』-240309。

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FIFA世界ランキングで長年にわたり不動の最下位だった米領サモアが、アメリカからやってきた白人の新任監督に率いられ、2011年サッカーW杯において公式戦初勝利をおさめたという実際のできごとをベースに描かれる、めっちゃ楽しくさわやかなスポーツヒューマンドラマ。


監督は『ジョジョ・ラヴィット』などで知られるタイカ・ワイティティ。監督自身もたしかハーフか何かでサモアの血を引いている人だったとおもう。


試合中の乱暴な行為などでアメリカ代表監督を解任されたトーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)が、協会の指令で超弱小・米領サモア代表の監督に任ぜられる。W杯のためなら死ねると豪語し、勝利のためのサッカーに人生を捧げてきたトーマスは、美しい南の島の、善良だがあまりにノンキでサッカーを知らなさすぎるチームにまったく馴染めず、選手たちとの心の距離ももちろん縮まらず、言うまでもなくチームは弱いままで、もう、毎日イライラ。だがW杯初戦の日は目前に迫り・・・

 

わたしマイケル・ファスベンダー好きなんだよな・・・ なんか顔が好き。パーツが大きく濃いようにみえてよく考えるとあまり特徴がない。おかげでどんな役をやっても違和感がない。ファスベンダーではなくあくまでもその役の人物だと感じさせてくれる。そしてどこか、わずかに不幸そうで性格暗そうで不健康そう。いかにも役者ってかんじの顔。

 

まあ、結果ははじめからわかっているわけなんだけど、とにかく不思議とワクワクできるし、ハッピーなきもちになれる、ほんとに楽しい映画だった。似たようなストーリーをたどるスポーツものの映画はたくさんあるけれど、描き方や視点の据え方ひとつで、こんなにも最高になっちゃうんだね。ユーモアのセンスが秀逸で、悪フザケもギャグも効いてて、レイトショーで空いていたのをいいことに、ゲラゲラ声出して笑いながら観た。

 

なんか、こんなこというのはおかしいんだけど、タイカ・ワイティティ監督が 鑑賞者であるわたしたちのことをすっごく大好きでいてくれてるのが伝わってきた。おかしな感覚なんだけど。
あの人の映画って、親しみやすくて、なんか、うまくいえないけど、ほんとにかわいいんだよな。監督が、人間というものを愛してるってことなのかな・・・


あと、「映像」というよりはどこか、具体的な「言葉」によって直接かたりかけてきているようなかんじがするのも、この監督の映画の特徴のように感じる。そんなふうに感じるのには、わたし自身が昔から、自分を表現しようとするときの方法として、ほかのなによりも「言葉」に依存してきていることが、何か、関係してるのかもしれない。この監督は映像作品の監督だけど、ものすごく、言葉の人なんじゃないかなーとおもう。この監督の映画は、わたしにとっては、言葉によって(もっというと「活字」によって)なにかを説得されるときと同質の効力がある。でも日本語じゃないのに。外国の人なのに。へんな話なんだけど、そう感じる。

 

まーなんにしても大満足の2時間だった。シリアスなものではなくみんなで楽しめるかわいい映画。『インビクタス 負けざる者たち』ではなく『がんばれベアーズ』方面。

もうスクリーン上映は終わってしまうかもだけど レンタルや配信で ぜひ観てみてほしい。