BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『白頭山大噴火』-210907。

原題:백두산
英題:Ashfall
イ・ヘジュン、キム・ビョンソ 監督
イ・ヘジュン、キム・ビョンソ、クァク・チョンドク、
キム・テユン、イム・ジョンヒョン 共同脚本
2019年、韓国
ツイン配給

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かなりおもしろかった。
ディズニーランドのアトラクションみたいに、
テンポよく次から次へと事件が発生しまくる。
そして、なんやかんやありつつも、最後にはすべての試練を乗り越え、
力強く生き抜く、タフな主人公たち!

大規模な自然災害が発生して、
市街地に甚大な被害があった場合に
想定される事態(と、人間の対応)のシミュレーションみたいなシーンが
この映画には、潔いまでに、なかった。それがすごく印象的だった。
そういう描写を入れることって、わりと、
ディザスターパニックものの常道、って気がするのだが。
具体的にどんなトラブルが起こると想定でき、
人はどういう風にそれに対応していくのか・・・、
この映画では、そんなこと、全然描かれない。
火山が噴火!
地震が発生!
ビルが倒壊!
街が壊滅!
迫りくる大波!
逃げ惑う人びと!
奇をてらうことのない大味でド派手なパニック描写が
ただひたすらに続く。
はい、CG使ってます!!! ってなザツなビジュアルには驚かされたし、
そもそも、地震災害の描写は、実際との乖離がかなり大きいように感じた。
たとえば北朝鮮の政府庁舎は、地震によってというよりも、
ダイナマイトで計画的に爆破した時みたいな倒れ方をしてた。

地震で建物が倒れる時ってこんなんじゃないよね・・・って素人でもわかる不自然な倒れ方だ。
でも、朝鮮半島は、日本よりは地震が少ないと聞いたことがある。
地震の経験値が低い地域で作られる地震のフィクション映像なんて、
案外こんなものなのかもしれない。

モブの描写で、
けっこう、見知らぬ人どうしで普通に助け合う姿が時々描かれ、切迫した状況でも人としての心を忘れない、みたいなことを感じて、それは決して悪くなかった。
けど本当に、「大災害と人間」ということを
多角的に描く群像描写みたいなものは、
ほぼ皆無と言って良かった。
人間の姿は、主役たちのドラマにぎゅぎゅっと集約されており、モブは、何万人出てこようともあくまでモブで、意味のある役割はほとんど与えられていなかった。
超ハイテンションなパニックアクションのあいま、あいまに、
メインキャラクターたちのかなり濃厚な人間ドラマがさしはさまれ、「人間」の姿がみたければ、そこでみてくださいという感じだった。

トータルでは、アクションとドラマの配分のバランスがとても良かったのか、
最後まで飽きることなく楽しめた。
シリアスな話だけど、皮肉のきいたユーモアも忘れてなかった。
韓国製の映画の良い所だなあ。


それにしても、
「あんたの国の人たちが全滅することになってもしょうがない、
なんたって『国際平和』のためだからさ」
に等しい言説がまかりとおるのをみて、
舌打ちが出そうなくらい「イラっ!!!」と来た。
お前が言うな。
そんなこと決める資格のある人間がこの世にいるとでも思うのか。