BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『モンタナの目撃者』-210906。

原題:Those Who Wish Me Dead
テイラー・シェリダン 監督
マイケル・コリータ、チャールズ・リービット、
テイラー・シェリダン 共同脚本
マイケル・コリータ 原作
ワーナー・ブラザース 配給
2021年、米

f:id:york8188:20210908233944j:plain

www.youtube.com


当初は「観たい映画リスト」の外だった。
邦題がとてつもなくダサいし。
主演のアンジェリーナ・ジョリーもあんまり好きじゃない。
けど『ウインド・リバー』の監督だと知ったとき、
俄然、観る気になった。
ウインド・リバーとても好きな映画だから。

結果的には「観て良かった〜」と心から思える作品だった。
邦題がダサすぎて損しているとおもう。
邦題をつけるときに、もうちょっと頑張って欲しかった。
原題は、「私の死を願う者たち」みたいな意味っぽかったが。
でも確かにまあ、邦題考えるの難しそうな映画だなあとは思うよ。
タイトルに「目撃者」って付く映画、すでにたくさんあるしさ。

終盤なんか、とてもこらえきれなくて、
ちょっと嗚咽が漏れるほど泣いてしまった。
「立派だぞ・・・。がんばれ・・・涙」
とか心の中で声援を送りながら、ぐずぐずに泣いた。

失われた命へのリスペクトみたいなことが響く物語って良いよな。
「あなたのことをずっとずっと思っているよ」という、哀しく温かい気持ち。
あまりにも深い心の傷を抱えた人が、
その傷と向き合わざるをえない苛酷な試練をのりこえ、再び立ち上がる。
苦しいことばかりだけどそれでもふんばって生きていく。
そういうところを見守る物語って良いよな。
つまずきながらもがんばって生きてる人を、陰ながら支える人の物語も良い。
「健気さ」ということかなあ。

さっきアンジェリーナ・ジョリー好きじゃないって言ったけど、
(実際ほんとにあんまり好きじゃないのだが、)
主役のハンナの心細げな表情や、傷つき弱った心や、
おもってもみなかった相手に虚を突かれてたじろぐリアクションなんかは、
とてもうまく、自然なかんじに表現していて、良かった。

つらい過去を思い出しては、おさない女の子のように泣くハンナが、
ほんとに苦しそうで、
そばに駆け寄ってなぐさめることができれば良いのに、
という気持ちになった。
頭をヨシヨシしてあげるとか、したくなった。

コナー少年を演じた男の子も素晴らしかった。
子どもっぽい泣き顔が可愛いかったし、
でも僕は父さんから大事なことを託されてるんだ、
つらくてもがんばるんだ、といういじらしい強さを
しっかり表現していたとおもう。

モンタナの広大な山林地帯が舞台の物語なのだが、
そのわりには野生動物の姿が、子ネズミ1匹見当たらないのが、
妙といえば妙なのかなという気もした。
クマとかシカとかオオカミとか、なにか出てきても良いんじゃないかなと。
たとえば悪い奴が退治される方法のバリエーションとして
「クマに襲われる」があっても良かったのではないか、とか。
モンタナにクマがいるのかどうか詳しく知らないのだが。
けど、そもそも映画には、必要なものしか出てこないようになっている。
この物語にとって、リスやシカが必要だったか、
野生のクマに襲われるというシーンが必要だったかどうか、考えると、
「かならずしもそうとは言えない」とおもう。
それに考えてみれば映画のなかの季節も、ちょっと良くわからなかったし。
冒頭で、消防士の入隊式のシーンがあったということは、
欧米の新年度にあたる9月とかなのかな? 
わからない。
季節によっては、冬眠してる野生動物もいるだろうし、
人間が歩き回ってるところにノコノコ顔を出すクマなんて、
むしろ、野生動物としてはまれにみるどんくささだろう。
よっぽどお腹がすいてるか、気が立ってたらアレだろうが、
関わり合いにならないように、向こうから距離を取るのが、
反応としては自然なのかもしれない。
この映画では、物語のなかで、大規模な山林火災が起こるので、
動物たちはいち早く危機を察知して安全な所に移動していたのだろう
(そうであってほしい)。
のろまで愚かな人間どもが、火事場で殺し合いを演じている所に、
動物の姿が見えないなどということくらい、大した問題ではないだろう。

山火事の広がり方とか、山に落ちる雷がどんなものかとか、
全然知らなかったので、
この映画で実態が描写されているのをみて、震え上がった。
あんなふうになるんじゃ、そりゃ逃げられないわ。
ひとたまりもないわ。

 

 

アリソンが「急がないわ」と言ったのが泣けた。