BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『ザ・ライダー』-201004。

原題:The Rider
クロエ・ジャオ 監督・製作・脚本
2017年、米

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ブレイディは、馬の調教に従事するかたわらロデオに熱中してきた。
しかし、競技中の落馬事故で、頭に重傷を負ってからというもの、
自分の意思とは無関係に手が硬直するなどの後遺症に悩むことに。
これではロデオはもちろんのこと、馬と関わる仕事ももうできない。
物心ついた時からずっと馬と一緒だったブレイディは
若くして生きがいも希望も見失うこととなり、苦悩する・・・

ひかえめな共感の力、
絶望の淵からはい上がろうとする人の底力のきらめきを
感じさせてくれる映画だった。
物語上の起伏みたいなものはあまり激しくなく、
淡々と、ごく静かにストーリーが進行するので、
観る方もゆったりと気分良く過ごすことができた。
昔からの伝統らしいカウボーイたちの習俗などを
ながめるのは楽しかった。
ブレイディのカウボーイルックは
主役だからなのか特別あか抜けた感じにしてもらっていて
色の合わせ方とかセンスが良かった。

主要キャストは本人が本名のまま本人役で出演しているそうだ。
つまりみんな本職の役者さんじゃなく、別の仕事がある。
どの人も馬の調教とかいわゆるカウボーイの仕事をしていて
彼らの仕事が始まる前か終わったあとにしか撮影ができない。
だから夜明け前か黄昏時のシーンが多い。
いわゆる「マジックアワー」といわれる時間帯だ。
息をのむほど美しい映像をたくさん観ることができた。

ブレイディ役のブレイディ・ジャンドローさんも
本職の役者さんじゃない。
だけど表情といい たたずまいといい
もう役者で通用するな、って感じの「良さ」があった。
語られるだけの価値がある体験をしてきた人だから
姿かたちもそういうふうになるんだろうか、と思った。