BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『I'M FLASH!』-120922。

豊田利晃監督
2012年、日本
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オリジナル脚本だというところに
まえから注目していた。

正直いうと わたしには、
何が言いたかった映画だったのか
理解できなかった(=_=)

が、観るんじゃなかった
とはおもわない。

オリジナルであることは
誰がなんといおうと
それだけで偉大だと思うから。

・・・新興宗教団体
ライフ・イズ・ビューティフル」の
若き教祖ルイ(藤原竜也)。
彼は飲酒運転で自動車事故を起こし、
人を死なせてしまったために、
世間からの厳しいバッシングに
さらされている。
助手席に乗せていた女の子
水原希子)は植物状態で入院中。
教団の教祖はルイだが、
実質的な支配者のポジションには
彼の母親が君臨している。
母親は、ルイを教団施設内に軟禁、
息子の身の安全のために、
3人のボディガード(松田龍平ほか)を雇う。
ところが、ルイが
「教祖を降りる。教団を解散する」
と言い出したので、
母親はボディガードたちに、
一転「ルイを殺せ」と命ずる・・・

だいぶめちゃくちゃな話だが。

乱暴な考え方かもわからないが
仏教やキリスト教などの
伝統的宗教と
新興宗教の教えの違いって
ひとつには
まず、神さまみたいな
信仰の対象の問題。

それから
生きている間の幸せや充実を
追い求めることをうたうか、
それとも死後の幸せや充実のために、
というとこをうたうか
じゃないかとおもう

「神様かそれに準ずるなにかがある」
のが「伝統的宗教」
「神様がいない」か、
「生きている誰かを崇める」
のが「新興宗教」。

死んでからの幸福を追い求めるのが
「伝統的宗教」
生きている間の幸福の追求に
重きをおくのが「新興宗教」。
と考えていいんじゃなかろうか。

そしてそこからいくと
「ライフイズビューティフル」は
どっちでもなく、
あえていうなら中間?
みたいな印象だった。
でもほんとは中間でもなく
言ってしまえば
よくわからなかった

「神様」はいないっぽかった。
ルイは教祖だが絶対的ではない。

「死にこそ究極の救いがある」といってたが
「死んでからうんぬん」じゃなく
「死」という「点」扱いだった
「死」という点にむかって
精一杯生きろみたいなかんじかと思いきや
「おまえという存在なんてどこにもない」
とかすごく虚無的なことを言ってたり
「死んだあとにはなにもない」と言ったり
「体が死んでも魂はすぐに還ってくるんだから、
死を恐れて生きるな」と言ったり
その場その場で言うことが
ころころ変わっていて
言う人間の気分次第で
こんなに表現が変わってしまったら、
たとえ教義が 常にひとつだとしても
意味がものすごく変わって
理解されてしまうだろう

こういう、うまいこと
言葉をすりかえてくるかんじは
ずっとまえに観た
「DISTANCE」(是枝裕和監督)の
登場人物のセリフからも感じた。
あの映画も、新興宗教団体
(という名のテロ組織)がでてきた。
元信者(浅野忠信)が
警察の取り調べをうけるとき・・・
言ってることがコロッコロ変わって、
なにをいっているんだか
よくわからないのだ。
でも当人は
確固たる信念をもって
話しているように
見せているつもりなのだ。
あのかんじを思い出させられた。

ルイのいうことは
なんだかよくわからなかった。
あんまり深く考えて
つくられた教義ではない
(という設定)ようだった

いろいろとよくわからなくても
丸ごと受け入れて
自分を預けるとこから
信心がはじまるとすれば
それまでだが、
ここまでよくわからないと
実際に存在する宗教団体なら
ちょっと申し訳ないが
入信する気も失せそうだ
それでも
ライフ・イズ・ビューティフル」が、
人々の信心を集めつつあるのは
教祖ルイの存在が大きいかららしかった。
カリスマってそういうものだ

「ほんとにお金をもうけたいなら、
宗教やるのがいちばん手っ取り早い。
人はみんな自分のなかの扉を開ける鍵を
ほんとうは自分で持っているんだけど、
(それがどこにあるかわからないから)
誰かに扉を開けてほしがってる。
だから、宗教は儲かるんだよ」
ルイが言っていた

なるほどなー
と思わされた

ただ
ライフ・イズ・ビューティフル
は、たぶん宗教じゃない。
「カルト」として観てて
構わなかったとおもうので
ルイの言う「宗教」は
「カルト」におき替えて
理解していいんだろう

もっというならカルトというより
ヤクザに、近いありかただった。

「みんな何かにすがりたがっているのよ。
あなたが教団を解散しても、
他の教団が新しく生まれるわ。
そっちにいくくらいなら
みんなうちにいたほうが
いいじゃないの。」
ルイの母が、息子に語ってた。
考え方が完全にヤクザだ(=_=)
社会のどこにおいても
うまくやれない人の受け入れ先として
ヤクザが機能してるというのは
文化学や民俗学のほうでは
よくでてくる考え方だ

ルイの母が、
ルイに言ってたようなこと。
足を洗いたいと言ってきた者に
ヤクザの幹部がいかにも言いそうだ

ルイは教団に懐疑的だったが
ある意味ではすごく宗教的、
純粋なものの考え方、
生き方をしてる人だった
どうしてルイがそうなったのか
理由や要因のすべてが
わかるわけじゃない。
だが、教団の教義とは
ぜんぜんちがうマインドが
彼の中に育っていたにも関わらず
それでも教団の頂点に
いなくてはならなかったことが
彼を宗教的な、もしくはすごく純粋な、
人にしたのはまちがいないようだ。
彼は教団じゃない社会にいたほうが
らくに生きられたはずだ。
純粋すぎて悩んだかもしれないが
彼くらいのかんじの人は
わりといっぱいいる。
けれども もう
どうにも身動きがとれないところまで
来てしまっていた。
気の毒だった。

彼の立場で許される
ほかの居場所といったら
海の底しかないというのが
かなり痛かった。
彼ほど
がんじがらめで
苦しい人はいなかったのに
その彼がみんなに「魂の救済」とか
「ライフイズビューティフル!」
とか言っちゃってるとは。
切ない。

ルイの姉が 側近にむかって
「おまえはまだスタディー
足りないんだよ!!」
と怒鳴り散らすとこが
もうしわけないけど笑えた。
スタディーって。
ちょっと英語にすると
カルトっぽい雰囲気、でるよね(^_^)
いやわかるわかる

書いてみて思ったんだけど

宗教とか新興宗教とか
カルトについて
ものを考えてみるのは
ほんとうに難しいな。

まだまだスタディーが必要だなこりゃ。