BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

高橋和巳「邪宗門」考-2-190202。

高橋和巳邪宗門

f:id:york8188:20190130003057j:plain

www.kawade.co.jp


はためいわくな
邪宗門」読み直しブログを
今日もきょうとて 書いてみたい。

物語のメインキャストを何人か
紹介してみることにする。
物語の梗概をへたくそな文章で
たらたらとつづるよりも
キャストたちの紹介をしたほうが
彼らの個性が勝手に輝いて
おもしろそうな小説だ、と
みなさんに思ってもらえる
可能性がより高まるかもしれないからだ。

だが
さいしょのほうに出てくる人たちだけ。
主要人物といえるキャストにしぼっても
源氏物語ばりに多いのだ。


邪宗門は3部構成の物語だ。
第1セクションは 
行徳まさを開祖とする宗教団体
「ひのもと救霊会」の
なりたちと、現在をたどり
当局の弾圧をうけて、
昭和のはじめに
いったん壊滅のときをむかえるまでを
みっしりと描きつくしている。
めくってもめくっても
ページが文字でうめつくされ
読みつぶしていくのが大変だけど快感だ。

このダイナミックなストーリーは 
14歳のとある少年が 
島根か鳥取のほうとおもわれる地方の
ちいさな村、「神部」の駅に
おりたつシーンで幕を開ける。
季節は晩秋だ。

「最初、砂礫敷きの細ながいプラットホームが
なんの飾りもなくのびる駅に降り立ったとき、
鮮明な雲の輝きが、少年の胸を撃った」・・・。
(上巻・7ページ)

汗とよごれでテラッテラになった
詰襟の学生服と学生帽姿、
首から骨壺をひとつさげている以外は
手ぶらだ。
朝夕にはけっこう冷え込むこの季節に
はだしにわらじでフラフラ歩いている。

疲れきって
呆けたような表情や
とほうにくれながらも
なにかとにかく
「これだけはやらなくちゃいけない」
と 思いつめているかんじが・・・
さびしく晴れわたる
夕空の下にとつとつと描かれ
読み返すほどに
いとおしいオープニングだ。

無賃乗車じゃないだろうなと
いぶかしんだ駅員さんとの 
かみあわない会話。
さびれた町の果物屋
りんごなんか見つめて、ふいに涙。
店主がけしかけた番犬を
ほえるままに任せ
力尽き、草むらに倒れこむ。
この やせこけた
うつろな瞳の少年はだれ。
こんなに弱っているのに
ひとりで知らない土地にきて・・・
いったいどうしたというんだろう??


・千葉 潔(ちば きよし)
初登場の時点で14歳。
ひのもと救霊会の信徒だった
母の遺骨を納めるために、
教団の本拠地・神部に
たったひとりでやってきた。
行きだおれ状態だったところを、
救霊会の古参の信徒に救われる。
正式な信徒ではないが、いきがかり上
なかば教団に参加するかたちとなり、
教主の娘である阿礼、阿貴姉妹や
組織の幹部たち、
熱心な青年信徒たちなどと
かかわっていくことになる。
ていねいな標準語で話すが、
かすかにのこる なまりから
東北地方の生まれであるらしいことが
わかる。
性格はまじめで従順。だが、
妙に陰鬱、不吉な雰囲気をただよわせ
何を考えているのかいまひとつ見えない。
そんなところを肌で感じ取ってのことなのか、
彼を忌避(敬遠?)する信徒もちらほら。
この どことなく暗く重い雰囲気の背景には
故郷で 彼が永劫せおうこととなった
ある重大な・・・
烙印、スティグマとでも
いうべきものが ひそんでいる。
ただ、潔本人はそれについて、
多くを語らない。


・堀江 駒(ほりえ こま)
老女。
ひのもと救霊会草創期からの信徒。
若かりしころ、惰弱な遊び人だった夫が
病をえたときに、祈祷をうけたのが縁で
行徳まさに帰依する。
組織幹部ではなく一介の信徒だが、
開祖の身の回りの世話をしたり
かつては全国行脚に随行したりと
古くから教団に尽くしてきたことで
たいへん尊重されている。
が、彼女が一目おかれているのには
もうひとつ、事情がある。
教主の次女・阿貴を引き取って
育てているのだ(戸籍も堀江に移している)。
寒空の下、死にかけの状態で倒れていた
千葉潔を発見。
はじめは見捨てようとしたが
最後には救護に尽力、献身的に看病する。


・堀江 真輔(ほりえ しんすけ?)
堀江駒の息子で ひのもと救霊会幹部。
第1部初出の時点ですでに、
教主・行徳仁二郎とともに
逮捕・投獄されている。


・堀江 菊乃(ほりえ きくの)
堀江真輔の妻。堀江民江の母。
結婚を機に、婚家の堀江家が入信していた
ひのもと救霊会の信徒となった。
逮捕されたまま連絡がとれない
夫・真輔との面会をもとめ
足しげく拘置所に通っている。
駒を、えがたい姑と尊敬している反面、
その衰えぬ行動力と抜け目のなさに
いつもふりまわされ さからいようもなく
内心嘆息ぎみ。
駒が阿貴ばかりかまいすぎるため
民江をかばう側にまわっているらしい。
初めて千葉潔のつらがまえをみたときから、
そのえたいのしれない雰囲気を
警戒している節がある。


・堀江 民江(ほりえ たみえ)
堀江真輔・菊乃夫妻の長女。駒の孫娘。
行徳阿貴の戸籍上の姉。
寡黙で一見むっつりしているが
祖母や親のいうことによく従い
どんなことでもてきぱきとこなす。
学生だが、第1部初登場の時点では
学校に行っているはずの時間帯に家にいて
千葉潔の看病を手伝う。
駒の一存で家業のために
学校を休まされることがあるらしい。


・・・

物語のオープニングは
おもにこの堀江家と千葉潔、
そして次項で紹介する
行徳姉妹と千葉潔の関係をたどるものだが、
いっぽうで
国家による弾圧にたちむかう教団、
一般信徒たちが教団内でひきおこす
かずかずの小事件とその顛末、
当局の厳しい追及に耐えつつも苦悩する
教主・仁三郎、
組織幹部それぞれの思惑・・・も
克明に描かれていく。

・・・

メインキャストの紹介を
1回で終わらせようとおもってたけど
ムリだった笑
ぜんぜん十分とはおもえないのに
もうすごく疲れちゃった笑

この次のときに
ひのもと救霊会の教主および幹部と
物語において
主要な役割をになう信徒たちの
紹介をして、おしまいにしたい。