BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

プータロー9日目。もと自衛隊の諜報機関の人だった人の本。


無職生活9日目
9月23日。


午前中は少し寝た。
午後は図書館で本を何冊か読んだ。
夜から友人のAちゃんと映画を観に行った。


図書館で読んだ本のなかでは、

発足してまだそれほど経っていなかったころの自衛隊の、
秘密諜報機関で働いていたという人の、自伝がおもしろかった。
自衛隊秘密諜報機関 ―青桐の戦士と呼ばれて」
(阿尾博政著、講談社

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わたしは自衛隊の成り立ちについて、正直なところ全然知らなかった
(習ったけど忘れてた?)のだが、この本で知った。

みなさんは、自衛隊がこんなような流れで作られたことを、
ご存知だったろうか。
太平洋戦争終結後、日本の軍備という軍備はすべて解体され、
進駐軍がそのかわりをしていたのだが、
朝鮮戦争が始まったので、米軍は日本においていた進駐軍
そっちに行かせなくてはいけなくなった。
そこで、GHQのマッカーサー氏が吉田茂氏に要請、
日本に多少の装備をもたせた留守番隊を作らせた。
進駐軍朝鮮戦争にいっているあいだ、
留守番をしてくれればいい、というかんじだったし、
当時の進駐軍は日本においてほんとにたいした仕事はしていなかったから
そんなに重装備の集団ではなかったそうだ。
これが自衛隊の前身の「保安隊」の前身、「警察予備隊」だ。
全国で7万人あまりの人員が集められ、
強行スケジュールで基礎訓練が行われたとか。
さて、朝鮮戦争がおわって米進駐軍が帰ってきた。
じつは1948年くらいから、日米のお偉いさんの間で、
日本の再軍備やいかにせむ、という話し合いはされていた。
ちょうどポツダム令が失効する予定(これはのちほど、
法改正で失効しないことになったらしいのだが。なんだそりゃ・・)
の時期や
サンフランシスコ平和条約の発効の時期も迫っていたから
じゃあ朝鮮戦争もおわったことだし、
これを機に日本も専守防衛前提の、
自衛集団をもっていいことにしましょうや、ということになった。
そこで1953年、警察予備隊が改組されて保安隊(現・陸上自衛隊)ができた。

さらに、もと海軍の残存人員をもとに海上自衛隊の前身ができた。

さらに、なんやかんやで航空自衛隊ができた。
(だ、だんだん記憶があいまいに・・)

これが現在の自衛隊のなりたちだ。



知らなかったぜ・・
そういうなりゆきだったのか。
何もわかっていなくてはずかしい。

そういえば、警察予備隊という言葉は歴史の授業で聞いたかな・・。

この、自衛隊の成り立ちは、
たぶん一般教養として、知っているべきレベルのことなんだろうね(-_-;)


きょう読んだ本の著者は
なんやかんやで保安隊が「陸上自衛隊」になったころ、入隊した人だった。


中央大出身で、学生時代から、右翼系の大物など、
いろんな人と知り合う機会に恵まれた。
たぶんこの人自身、良いキャラクターの持ち主だったからだとおもうが、
出会う大物みんなに、ひどく可愛がられ薫陶をうけた。

伝説的相場師といわれた人物の下で、
学生時代から働き、卒業してもそのまま株で成功できそうだったが
大学の先輩かなにかから
「卒業したらどうするんだ。君にすごく向いてるから、自衛隊に行ったらどうだ」
とすすめられた。

自衛隊についてこのわたしレベルの知識さえなかった著者は
「え、自衛隊ってなんですか」
と言ったそうだ(^_^)
が、入隊試験にトップの成績で合格、
陸自、レンジャー、いまの航空自衛隊の情報部門とうつりながら順調に出世
やがて日米合同の諜報機関のメンバーとなった。
でも、せっかく集めた大事な情報や調査結果が、
米軍に筒抜けという当時の機関の実態が、著者はいやだった。
(日米合同機関だから、しょうがないことなんだが。)

「日本だけの独自の諜報機関をつくるべき」と建白書を提出、
なんとこれに許可がおり、
彼自身が責任者となって日本の自衛隊独自の秘密諜報機関が発足した

すごいとんとん拍子だ!
とんとん拍子にもほどがある!


日本の自衛隊に秘密諜報機関なんてありえたはずがない、
自衛隊の予算は全面ガラス張りなのだから、という声はもちろんあるようだが


「もし本書に偽りあれば、わたしはいさぎよく腹を切る。」
とまで、まえがきで著者が言ってるくらいだ、
あったと思って読むほうがおもしろいんだろう。
あったのかもしんない。ほんとに。



はじめ、手当たり次第にこの本をえらんだとき
タイトルがかたっくるしくて、つまらなそうだったから
いったんは棚に戻した
でも、ためしに冒頭の数行を読んでみたら案外、
文章がするするっと読みやすくておもしろかったので、
気が変わった。


なにしろよかったのは、全篇をつらぬく
著者のちょっぴり電波なポジティブ思考。

話を大げさにするクセはあるにせよ、かなりのストーリーテラー
自分の人生に誇りをもっていて
人に愛情深く、感情ゆたかに、たのしく生きてきたことがよくわかる。
良いじいさまだ。

何枚か著者の写真も載っていたが
30分も話せば誰もが彼に気を許してしまいそうな、
へんな魅力をかんじさせる風体で、なるほどねと。


教科書にでてきたような歴史的事件や大人物たちについて、
すごくいきいきと語られていて、読んでて楽しい。
このくらいのテンションで書いてくれると歴史の教科書もおもしろいのだが。

ただ正直なところ
相当うさんくさい。
わかりやすくていいのだが、かんじんなところで
モンヤリ、フンワリ、使い古しの漠然とした文章になってしまい、
あれっと思わなかったわけじゃない。

さすがもと相場師だけあって
やることがなんというか、デッカいのだが、いまひとつ中身がない
思い切りはいいが、ハズれればキツい

あの川島芳子が日本で生きていたなんてくだりは、
さすがにちょっと・・。

ま、事実は小説よりも奇なりというし、
そんなこともあったかもしれないと思ってみる程度なら悪くない
すくなくとも著者には、世界がこう見えていた、ということのようだ

あったかもなーと、どうだったかなーと、
思ってもおかしくない歴史のモヤモヤゾーンを、
あった!こうだった!と言いきっているだけのことだ。


何冊もこういうほら吹きじいさま(失礼ながら。)
の本ばっかり読んでいたら
たぶん、頭がおかしくなってくるが
たまにニヤニヤしながら読むなら悪くない。元気がでる。


罪のない本だった(^^)


いや、どうなんだ
罪深いのか?


陸上自衛隊ができてから60年
まだそんなもんなのに
こういう本を読んで「こことここ、ここも、これもウソ!」
ともし指摘したければ
ほかにも何百という本を読まないと、いや読んだとしても、
できないかもしれないんだというこのモヤモヤ感。

自分の国のことなのにちゃんと知らない、恥ずかしさ。


この無知と蒙昧が、こういう本の存在を許してしまう。


本には罪がないが

勉強不足のわたしには罪があるな・・



あ。
でも自衛隊の成り立ちはちゃんと合ってるはず。
高校の社会科の資料集で確かめながら書いた。