BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想『梟 フクロウ』-240303。

f:id:york8188:20240303221333j:image 

きのうスクリーンで観た。1645年の朝鮮王国において発生したとの記録が残る王子怪死事件の顛末を、イマジネーションを拡げて描くサスペンススリラーだった。ある貧しい盲目の鍼医が、腕を買われて王宮付きの「御医」に。彼はある重大な秘密を抱えているが、それを誰にも明かすことなく、収入を上げて病気の弟を救うという目的のため、日々もくもくと仕事に励んでいる。そんななか、清に数年間に渡り人質にとられていた王子が朝鮮に帰国してまもなく、耳や鼻など体の穴という穴から血を垂れ流して死亡するという事件がおこる。毒殺とみられるが下手人がわからず宮廷内はおおさわぎに。死の直前まで王子のそばにいた鍼医は騒動の渦中にのみこまれていくが、じつは彼はある真実にたどりついていて・・・ といったようなストーリー。

 

すごくおもしろかった。思ったよりもずっと軽めで、完全にエンタメに振り切った、みやすい作品だった。もう一度観たい。

 

王子がほんとに寛厚で賢く、開かれた心の持ち主で、しかも繊細で優しく、とてもすてきな人物で、泣けた。王子の息子も、まだおさないのに父親ゆずりの利発さで、しかも心がやわらかくて、とても良い子だった。この子が、鍼医に助力を求めて泣くシーンが素晴らしくて、おもわず涙でそうになった。あの子役の演技とても良かったなあ。

 

わざとらしい繰り返し表現(あのとき誰それがこう言ってたよね、とか伏線的なことを鑑賞者に思い出させるための回想シーンみたいなやつ)をあんまり濫用せずに基本的には淡々と前に前にすすめていく、展開のしかたが好きだった。まあ、ちょっとはそういう手法も使ってたけど、この手の映画では、脚本がへたっぴだと、繰り返し表現がもっとしつこく何度も使われることもあるのに、本作はあまりなく、スッキリ素直な進行なので気持ちがよかった。

 

ちょっぴり弱かったような気もしなくもないが、この物語によって伝えようとしていたことも、それなりには伝わってきた。

王宮付きとはいえ一介の鍼医にできることは現実的にはとても少なく、彼がどんなに頑張っても、達成しようとしたことをぜんぶ達成できるわけではないのだが、それでも最後まで必死にかけずりまわり、声をあげつづける姿に胸をうたれた。