BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

221224。

Amazon prime videoで『呪術廻戦0』の配信が始まった。スクリーンでも観たのだがもう一回観てみた。

やっぱりとくにおもしろくはなかった。でも好きなところもけっこうあるから、「ぜんっぜん話にならないくらいヒドイ映画だ」とか、そんなことは少しもおもわないのだが。

 

駆け足のダイジェスト版をみているようなかんじがあることが気になった。 登場人物たちの人間関係の変化、思想のうつりかわり、積み重ねられた思い出、そうしたエピソードらしきものが次から次へと出てくる割には、それらの描写がとてもうすっぺらい。とくに憂太と彼の呪いであるリカにかんしては、物語の中心的なキャラクターだけに、バックボーンのうすっぺらさが気になる。憂太は今10代であり、リカのほうは小学生くらいで死んでいて、ふたりとも子どもなわけだけど、彼らの保護者がどうなってるのかとか、憂太が高専にくるための学費はどうなってるのかとか保護者がその進路に同意してるのかとか、あるいは保護者がいないのかとか、そういう「背景」がまったく感じられない。子どもを主人公にした映画で保護者のことを描かないのはおかしいし、描かない理由が2時間のなかであきらかにされないこともおかしい、というかもったいない。学校であれだけの傷害事件をおこした(少なくとも深く関わった)にもかかわらず、なぜ警察ではなく高専が憂太の身柄をおさえ、今後の処遇とか決める権利を持ってるのか、全然わからない笑 警察と高専の関係(「一般社会」と「呪術の世界」の関係)がまったく理解できない。五条先生は、警察の捜査中の現場に顔パスで入っていくことができるようだったけど、あれはどうしてなのだろう。・・・そういう細かいところが薄いので、この映画は、わたしを全然、納得させてくれないんだよな(でも、細かいことかな? 気になって当たり前だとおもうが。)。魅力的な舞台装置のなかで魅力的なキャラクターを描こうという意欲だけは、すごくありそうだったけど、舞台にも、キャラクターの存在そのものにも、厚みが少しもない。そんなわけで、結局、なにを伝えたい物語なのかがよくわからない、という感じになっていたとおもう。この物語の世界を信用することができない。これは、原作どうこうというよりは、たぶん脚本をつくっていく段階で、こういう結果を引き起こすような失敗が起きていたんじゃないかなあ。

 

結局 この映画の2時間だけでは、憂太に「(ぼくの友だちを傷つけたお前を)グチャグチャにしてやる」とか「力をかして。これが終わったらぼくの心も体もみんなリカにあげる」とか言わせるほどの何かがあったとは、とても信じられない、ということが すごく問題のような気がするんだよな。わたしにとってはそれが一番の問題と言ってもいいかも。

 

リカちゃんが、死んでからの数年間の方が、生きていたときよりも幸せだった、みたいなことを言ったのを聞いて、彼女は生きていた時かなりしんどいことがあったのかなあ、と想像した。幼いときに死んでいるので、彼女の人生どうこう、というよりは、シンプルに虐待とか生育環境になんらかの重大な問題があり、幸せな子どもではなかったのかもしれない。憂太と初めて会ったとき、なんで入院していたのかもわからないし。あと、リカちゃんは、あの本格的な指輪をどこで入手したのだろう。あの指輪、だれか、大人の持ち物じゃないのかな。あんなものをどこから持ってきたんだろう。リカちゃんのあの憂太への執着はいったいなんなのか。 憂太は高校生になってもあの指輪をつけたり外したりできるようだったけど、よっぽど指が細いんだろうか笑 あと、「ぜんぶぼくのせいじゃないか!」とか言って3秒前まで鼻水と涙が一体化するくらい号泣していたのに、リカが去る時にはぴたりと泣き止んですっきりとした笑顔で見送ったりしてて、憂太の感情が怖い・・・