BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『ラ・ラ・ランド』『ひるね姫』/小林泰三-170416。

ゴールデンウィーク進行で
あしたからしばらくまた 
うんざりくるほど大変になる。
休んでいる場合ではないような気がして
ものすごくきもちがそわそわしてる。
が、きょうは日曜日だから休んだ。
どうかんがえても、
休んでる場合じゃないどころか
むしろ休んでる場合だ。

先週の話なんだけど、
渋谷のBunkamura ザ・ミュージアム
「ゴールドマンコレクション 河鍋暁斎展」
をみにいった。
あれがとてもたのしかったので、
きょうもまた行ってきた。
最終日だった。
また会いたい。だいすきだ。
才気と気迫が 紙をはみ出して
ほとばしってる。
なんといっても新しい。
こんどいつ 
これほど大規模な展示があるかわからないが
埼玉の河鍋暁斎美術館にもまた行きたい。


これも今日の話ではないが、
先日
ラ・ラ・ランド』を観た。

原題:LA・LA・LAND
デミアン・チャゼル監督
2016年、米

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これはとってもよかった。
わたしには 響くストーリーだった。
ただ、
ミュージカルとしてというよりは
ただのドラマとして観てた気がする。
ミュージカルであることを
もちろん認識していたし、
形式としてはまちがいなく
ミュージカル映画なのだが、
役者さんたちが、「表現の手段」として
ダンスや歌をやっている感じではなかった。
技術的な意味で「必死すぎる」。
音楽劇とは、キャラクターが、
あふれるきもちを言葉では
表現しきれないから歌や踊りであらわす、
という、ものだとおもう。
そうでなかったらなんで
普通にしゃべればいいところを
わざわざ歌い踊るのか。
それだからこそ、
歌や踊りを表現の道具として
自分のものにしきっていない役者さんが
いくら一生懸命歌って踊っても
それはあくまでも歌であり踊り。
心の表現ではない、と感じる。
だから本作は、
ミュージカルと言える域には達していないと
言わざるをえないと思った。

その点やっぱり
メトロゴールドウィンメイヤーなどの
ハリウッドミュージカル映画黄金期の
作品を彩った役者さんたちは
ほんとうにすごい。
彼らは 息をするように踊り、歌う。
あと、
『ウエストサイドストーリー』
サウンド・オブ・ミュージック
屋根の上のヴァイオリン弾き
心そのものだ。歌や踊りが。

ああいったのが
まさにミュージカル映画だ。

だがべつに 
ラ・ラ・ランド』において
そこはそんなに深刻に考えていない。
つい長々説明してしまったから
マイナスポイントみたいな印象を
与えてしまったかもしれないが、
言うほどそこにマイナスを感じてはいない。
わたしはすごく楽しんで
この映画を観た。
後半など迷わず号泣であった。

オーディションで、
自分のことを語ってといわれたミアが
女優をめざしたきっかけ、
叔母さんの思い出を
語るシーンに感動した。
「どうか乾杯を、夢追い人に
愚か者に見えても 彼らの混沌に
どうか乾杯を、心の痛みに・・・」
泣かされる歌詞だった。

また、ミアと恋人の
ケンカのシーンもよかった。
お互いに、
「ほんとはこんなことが 
言いたいんじゃない・・・」
とおもっている感じがすごくあり、
それなのに口がとまらないというか、
なにかおかしな狂った空気に
なってしまっているかんじが
じつにリアルに出ていてよかった。
あのギリギリとした緊迫感に
かなり緊張させられた。

自主興行に失敗した
夜のシーンもとてもよかった。
あわててかけつけた恋人の顔を
まともにみようともせず
ミアは車で はしりさる。
彼女の傷ついたみじめな心が
痛いほど伝わった。

夢と現実。
大人ならぜったいにだれもが
ぶつかったことのある 
問題について。
そしてそれでも前をむいて
挑戦しつづけることの
せつなさと重みと傷とについて。

とても愚直に語りかけてくる
ドラマだったとおもう。

おもえば 
エマ・ストーンが出ている映画には
きまってこれまで やられてきたな。
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。

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エマ・ストーンが出演していることそれ自体とは
関係がないと思うが、
このふたつの映画も、今ふりかえると 
ラ・ラ・ランド』のような
要素をもったドラマだった。

エマ・ストーン
ハリウッドにおいては
この手のドラマのメインキャストとして
登場させるのに適しているとみなされる
年齢層の人なのかもしれない。
メリル・ストリープ
ジュリアン・ムーア
ミアやスキーターの役は
もう向かない、それは確かだろうから。
(バードマンでは エマは主役じゃなかったが)
・・・


それで先週の話はおわりで、


きょうの話にもどると、
河鍋暁斎展2回目をみたあと、
地元にかえってきて、まず図書館にいき、
小林泰三『人獣細工』(角川書店
をかりて、読んでみた。

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www.kadokawa.co.jp


この作家さんのことは
数か月前まで知らなかった。
知り合いからすすめられ、
まず短編集
玩具修理者/酔歩する男』を読んだら、
怒涛のおもしろさ。
その知り合いにこのまえ 
「『玩具修理者』おもしろかった」
と感想をつたえたところ、
こんどは短編集『人獣細工』
に収録されている
『本』をすすめられた。
その『本』を読むために
『人獣細工』を図書館でかりた。
そのあと映画をみる予定であったので、
映画がはじまるまでの数十分だが、読んでみた。
まず表題作『人獣細工』を読んだ。
わたしは夢中だった。
すごい作家さんだ。
なんでこのような力ある作家さんが 
もっと文壇でちやほやされないのか。
『酔歩する男』なんかは
似たようなかんじのテーマを
東野圭吾さんが
パラレルワールドラブストーリー』で
扱っていたと記憶しているが
こう言ってはなんだが
『酔歩する男』の方が圧倒的におもしろい。
パラレルワールドラブストーリー』の
半分のページ数で 
あれよりもずっと深いことを書ききっている。

・・・

時間になると、映画館に行き、
ひるね姫 知らないワタシの物語」を観た。

神山健治監督
2017年 日本

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www.youtube.com

清新、ということばがぴったりの、
よい映画だった。
ファミリーにもおすすめ。
何回も観たい美しい映像。
ブルーレイがでたら 
買って またみたい。
映像表現における
イマジネーションと
ハイテクノロジー
ノスタルジー
混ぜぐあいが
わたしにはちょうどよく
とても快適だった。
物語は、あまり深く考えないで
みたほうが受け入れやすいだろう。

でも観おわった今
深く考えたくなってしまっている。
一部 説明が不明瞭に思えた部分があった。

ワタナベの狙いが よくわからない。
完全自動運転車のお披露目を
オリンピックのセレモニーという
大舞台でわざと失敗させ、
あとで自分がその製造ノウハウを
モモタローから奪って完成させることで
名声を横取りし
会社を乗っ取ってやろう
ということだったのか?
だが、正直あのワタナベという男、
そこまでのことができる器には
まったくみえない・・・。
仮にその目論見が成功したとしても
そこから何をどうやったら
会社が乗っ取れるのかよくわからないし。
イクミが会社の中枢から引き離され、
末端の系列会社にとばされたことは、
エピローグで理解できた。
本編では そのころのイクミと
モモタローの記念写真がでてきて、
すみっこにワタナベがうつりこんでいた。
イクミが、左遷されても社長の娘であり、
優秀な人材であることを知っていたから
いずれ利用できると考えて 早くから
へつらっていた、ということだろう。 
目端がきかないわけじゃないらしい、
それはわかる。だが、
なんかちっちゃいんだよな。
どうせちっちゃいなら、
話ももっと小さく
まとまってたらというか・・・
たとえば、
オリンピックのセレモニーで
自動運転車のお披露目をしたいのに
車のシステムがうまく動かない
だがセレモニーでは失敗が許されない
いまさらシステムの開発が
うまくいってないという事実を
社長に言い出せず、それで
モモタローが持っているノウハウを
奪おうとした・・・とか
そのあたりの もう少し
けちくさい話だったら 
ワタナベの小物っぽさも 
納得できた気がする。

もしそちらの線でいくなら
夢の世界でも・・・
エンシェン姫が
幽閉の憂き目にあっているのは
彼女が機械至上社会において 
いまわしい存在であるところの
「魔法使い」だからなんだけど
彼女の幽閉を王に進言したベワンが
「じつはかくいう自分も
魔法使いなんです」という
王さまに言えない秘密の部分で
いろいろやってくれれば
現実と夢との話が
それなりにリンクするので 
ムリはなかったとおもうのだが。
ワタナベが会社を乗っ取りたいと 
考えていたことは理解できるのだが、
彼にそれができそうには
とてもおもえない感がすごかった。

エピローグはよかった。
モモタローと亡き妻の
なれそめの物語が語られていて、
妻が亡くなった原因も、
ほのめかされていたのがうまかった。
モモタローの顔に 
ちょっと出すぎだとはおもったが。

ひるね姫は、とくに 
ずっとみたいとおもってて 
みたというわけじゃなかったけど
すごくたのしい映画だった。
またみたい。 
映像がうつくしかった。