BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

本の感想『大阪に来たらええやん!』-240419。

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西成はあいりん地区に事務所をかまえ、生活に困っている人の相談にのり、不動産仲介業の資格を活かして居住支援をし、生活保護などの適切な行政サービスにつなげる活動をしているNPO法人の代表さんの著書。

 

大阪西成地区、ドヤ、生活保護、生活困窮者、貧困ビジネス、とかって、ボンヤリとなんとなーくのイメージはあったけど正直よく知らなかったトピックのひとつだった。

とくに貧困ビジネス、っていうのがよくわからなくて。

でも「悪いこと」なのは知ってるけど。「悪いこと」があるところには、まずたいてい「オリジナル」がある。「悪いこと」は、オリジナルを模倣し、悪どく、うまく、アレンジすることで生まれる。これは利用できる、もっとズルくやれば金になる、と思うからこそ、やる。わたしは、「貧困ビジネス」のほうもどんなことやってるのか知りたいけど、そのまえにオリジナルのほうが知りたかった。オリジナルがどんなことをやってるのか知りたかった。それでいったんたどりついたのがこの本だった。

 

どなたもいちどこの本を読んでみてほしい。わたし、図書館でかりて読んだけど、自分のお金で買おうかなあ。


NPO法人・生活支援機構ALLは、YouTubeチャンネルもあるので、本を読むのがおっくうだったら、動画を観てみてほしい。わたしはほとんどぜんぶ観た。

 

でもこういう良きことをする人って、かなしいかな、ワンマンだったりするよねえ 
なんか、この代表さんも、忙しくてごはんもまともに食べられない毎日みたいだし。いまはまだ若く健康だからいいんだろうけど、この先はね・・・。ほんとうに末永くこの活動がつづいてほしい。

 

わたしはだいたい理論や知識をおいかけて頭で転がすのが好きで、それでなにかを吸収したからといって、じっさいに「行動しよう」っておもうことって少ないんだけど、
この本にでてくる人たちの成し遂げてきたことやがんばりを知って、「わー この人たちのために自分にできることはないのかなー、自分の能力やスキルのうちで、この人たちのために役立てられるものは、何かないのかなー」と、初めて思ったし、何かをしたくなった。

 

たぶん、この本を読んで、そんなふうに具体的な行動にまでつながりそうなほど強く心をゆさぶられるのは、わたしだけじゃないだろうとおもうし、わたしだけじゃないといいな、ともおもう。

巻末には「こんな場合も生活保護の申請はできるの?」「こんなことで困ったらどうしたらいいの?」みたいなTipsが、フラッシュカードを並べたような見開きのデザインで、すごく見やすく、短くまとめられている。それに、著者が代表をつとめる支援団体の連絡先(フリーダイヤル)が、おおきく記載されている。本当に困っている人がこの本を読んだとき、たとえばその人が精神を病んでいたり、困窮のあまり心が冷静な状態じゃなくても、ポンと頭に入ってきそうだし、「電話しようかな」って思ったとき、これならすぐ電話できる。無料だしね。

 

この本を読んでいちばん行動してほしい人は、生活に困ってる人だ。

この本は、その生活に困ってる人が、まさしく行動できる作りになっている。

 

それはこの本の良いところ・・・というか、真骨頂だとおもう。