BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

本の感想『幸福の科学との訣別 私の父は大川隆法だった』

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4日くらいまえに図書館でかりて読んだ。

わたしはこういう文章けっこう好きだ。

書かれていること以上の意味を伝えてこないというか。

実際的で即物的な文章というか。

この人は、頭の良い人だ。子どもの頃から勉強が苦手だった(特に算数に苦手意識があったらしい)、と振り返っているけど、たぶん、本はよく読んできたんじゃないかな、とおもう。言葉がとてもちゃんとしてて、思考の芯も太いことを感じた。

 

なんかわたしはこういう文章を書く人ってけっこう好き。

 

軽井沢のカブトムシとかクワガタの話、めちゃめちゃリアル・・・というか、なんというか、生き生きとした人間の営みのにおいがする。あと、東日本大震災の発生直後くらいのときの話。それから、お父さんとお母さんの離婚にまつわる話。どれもこれも、この人にしか語れないエピソードだ。

 

「なんて空虚でしょーもないことばかり書かれているんだろう」「教団の実態とか、どんなことが行われてたかとか、そういうのがほとんど何も書かれてないじゃん」、最初はそんなふうにおもって、ちょっと不満ではあった。


だけど これはつまり「俺の親父が代表をやってたあの団体は、それだけ空虚でしょーもない中身しかない団体だし、俺の家族関係もバラバラのスカスカで、ほんとうになんにもないんです。出そうとしても出てこないんです。スカスカだから」ということを 伝えてきてることになるんだな、と、今は考えをあらためてる。

 

すごく特異であり、その点において、とても良い本だとおもう。

 

かの団体とかかわることでつらい体験をした人、たとえばお布施しすぎて破産した、家族がめちゃくちゃになった、そういう人がいるとして(実際いそうだけど)、その実態をくわしく調べて、世間にしらせることが、この人の仕事なのかというと、別に、そうじゃないからなー。
それは、ジャーナリストとか警察とか、国とかがやることだ。


この人は、単に団体の代表者の息子として生まれた、それだけ。


「俺が当該教団の被害者救済の相談窓口となり、政府や警察と連携してがんばります」と、みずからすすんで言ったくせに、はじめての関連著書がこのようなスカスカな内容に終始したのだとしたら、さすがにいろいろキツいけど、
この人は、そんな活動、するとは一言も言ってないんだからな。すくなくとも自分の今後の人生のすべてを捧げて、メインで被害者救済の活動をします、父がしたことの責任を俺が取ります、とか。そんなこと、全然言ってない。

 

この人は、映画を作りたいんだよ。アクションコメディ映画を撮ったり、クリエイターどうしがつながれるバーをやったり、YouTubeチャンネルで配信をしたり、そういうことがしたいんだよ。

 

自分がやりたいこと、できることをやって、頑張って生きてるだけ。

人間みんなが、そうであるように。

たしかにあの団体の代表の息子であるし、それがどういうことなのかも、よく自覚してるみたいけど、そのためだけに生きようとはしていない。

 

だから、ただ、書けることを書いたんだよなー。

 

人生きっついよなあ。

 

きついと思うよ、この人。

 

死んだりしないでほしい。つらければ日本にいなくてもいいから世界のどこかで元気に生きててほしい。
だってほんとは全然関係ないじゃん。お父さんのことと、この人とは。

息子ではあるけど。