BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想『王の涙 イ・サンの決断』-240323。

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『王の涙 イ・サンの決断』

このまえ観た『王の運命(さだめ)』に出てきた、英祖の孫(思悼世子の息子)が主人公だった。
あの物語の中では、まだ10歳くらいの子どもだった。
英祖の息子・思悼世子は、次期国王と目され教育を受けてきたが、成長するにつれ不品行が目立つようになり、やがて王への叛逆の嫌疑をかけられ、むごい監禁刑で飢えて死んだ。が、これは実は反対派閥「老論派」による事実上の謀殺だったらしい。英祖は内心ではその事情を理解していたのだが、後世のことを考えて泣く泣く派閥の目論見に乗り、しかし息子を叛逆者としてではなく「単に父を怒らせた罰として」死なせることで、かろうじて孫を王位につける道をつないだ。大逆罪で死んだ王子の子は、たとえどんなに優秀でも、王にはなれないという決まりがあったから。英祖の悲願かない、長じて王となったイ・サンだが、即位したその瞬間からすでにまわりは敵だらけであり、四六時中、暗殺を警戒し、信頼できる宦官ひとりに身の回りの世話をさせるほかは誰も近づけず、書庫でひっそりと暮らす始末。いちばん怖いのは亡き祖父の後妻(イ・サンにとっては義理の祖母ということになるが、自分より歳下)で、彼女は何年も前から老論派や軍部を味方につけ、王の命を狙う。そして最大の暗殺計画が動き出し、王は刺客と対峙する・・・。

 

おもしろかった。

国史劇、すごく興味深い。
このクラスの映画が まだほかにもいっぱいある気がする。積極的に観ていきたい。現代劇よりも史劇に興味がある。

 

せつなすぎた。
イ・サンの気持ちをおもうと わたしまでつらくなって、涙出そうになった。

父が刑死したときのことを、イ・サンは鮮明に記憶しており、つらかった思い出がたびたび脳裏によみがえっては彼を苦しめる様子が描写され、痛々しい。しかもその過去パートの描写が生々しく、むごい・・・ 監禁刑で、厠にも行けなかったので、父のなきがらの着物の下半身は、・・・。

 

周囲の人間を容易に信用できない日々を送ってきたせいで、ということなのか、イ・サンは、感情をあまり顔に出さないタイプの人物だった。でも、その胸の裡では、積年の哀しみ、悔しさ、怒り、憎しみが、内側から発火して本人はおろか周りの者たちも誰彼かまわず焼き尽くさんばかりに、たぎっていた。終盤の、義祖母との対決のシーンを観ていたら、そのことがよくわかって、イ・サンがとてつもなく気の毒だった。あのシーンには、ぞっとするほどの凄みを感じた。

 

しかも、あれほど重いものを心に背負いながら、彼の最終的な選択は、・・・。

 

政治の力だけでなく人間的にも優秀。
まさに名君。

 

暗殺者たちのことを描くパートは、この物語にとって、むちゃくちゃ重要な縦糸だった。でも、エピソードの配置のしかたや、横糸である朝廷ドラマとの組み合わせかたに、やや問題があったのか、すごく価値の高いパートになりえたはずなのに、なんか全体的にちぐはぐで、それどころか完全に蛇足に感じた。

もったいなかった。たぶん朝廷劇のほうが弱かったんだとおもう。

一部のキャラクターを描くことに集中しすぎて背景や脇役が完全に止まってるとこがいっぱいあったし。

老論派と武官の思惑とかもっと見せないとダメなんじゃないかなとおもう。

でもそれでもかなりおもしろかったけど。

たとえばスポーツカーの4つのタイヤのうち前1個とうしろ1個が欠損していたとしても、車はなんとか走るだろう。タイヤが足りていなくても、スポーツカーはスポーツカー。

でも、もったいないね笑

孫文の義士団』などは、登場人物がとても多い中で、エピソードの取捨選択と配置をうまくやっていたとおもう。それぞれに立場と事情があって、それらが時に絡み合い、時にあいいれず激突する、ということが、必要十分に表現されていた。

今ふりかえると、だけど。

 

それにしても韓国の女性の役者さんって なんてきれいなんだろう。
いろいろと、「お手入れ」しているとは聞くけど なんだか、お顔が、というよりは、眼が・・・。瞳がきれいで うっとりしてしまう。


イ・サンの義祖母を演じた役者さんなんて、彼女が登場するたびに、なんだかドキドキした。