BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

内田樹さんとそのお嬢さんの本と自分の父と自分-200608。

内田樹さんとそのお嬢さんの往復書簡のスタイルで、
「家族関係」とか「親子」とかについて語りあう、
というような内容の、新書がでているのを、
書店で見かけた。

内田樹さんの本が好きだから、
内田樹という文字を見ただけで、
迷わずその本を手にとってレジに行こうとしたが、
どういう内容の本かを確かめたときに、
自分の気持ちがなんか必ずしも「読みたい」という
感じじゃないことに気づいて、
すごく迷って、何十分か本を抱えたまま
お店のなかをうろうろしたあげく、
買わないで帰ってきた。

読みたくないと思っていたのではなく、
買いたくなかったのでもなく、
ただ内田樹さんのお嬢さんがうらやましかった。

ご自分のお父さまと手紙のやりとりをしたり、
本を作ったり、家族のことなんか話したりできるのだから。
ご自分のお父さまとそういうことができるくらい
関係が良好らしいことがうらやましい。

良好とかなんとかよりそもそも
「関係がある」ということがうらやましい。

胸が軽く締め付けられるような感覚をおぼえた気がする。

わたしと自分の父とのあいだには関係のカケラもみいだせない。
話をすることもかなわない。
実をいうと話をしたいと自分が思っているのかどうかさえ
わからなかったりする。

内田樹さんとそのお嬢さんとの
往復書簡の本とか、わたしは読めない。
読んでも、そこにわたしが欲しい言葉は
なんにもないだろうなと思う。
わたしに関係のある言葉も
ひとつもないだろうと思う。

お父さんか。
良いなあ。