ピーター・スコット-モーガン氏の『ネオ・ヒューマン 究極の自由を得る未来』(東洋経済新報社)読んだ。凄かった。ロボット工学を修めた優秀な科学者でコンサルティングファーム大手の若手有望株としてバリバリ働くも40代で早期リタイアし同性のパートナーと世界を旅して回る日々を楽しんでいた矢先にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命2年の宣告をうける。意識は完全に正常なまま全身の筋力がどんどん衰えやがて体がまったく動かせなくなり、さいごは人工呼吸器をつけていくらか長らえるかそれともどこかの段階で生命維持を断念してゆっくりと死を受け入れるかの二択をせまられるという残酷な病気だがそれでも彼はあきらめずロボット工学の知識を活かしみずからを実験台にして「肉体の完全サイボーグ化」と「人工知能と生物学的自我の融合」という一大プロジェクトに挑んでいく。
著者は本当につい最近までがんばっていてNHKとかのドキュメンタリー番組にも出ていたと思う。たしか今年の6月ごろ亡くなったはず。
自伝だけど超一流のSF小説みたいだった。
エンダーズ・ゲームみたいな。
もしかしたら小さなことかもだけど わたしは著者がこれほどハードな境遇にありながら最後まで心がすこやかだったことがほんとに驚異的だとおもった。心が歪んだり、うつとかを発症したりしても、全然おかしくなかったとおもう。いや、でもまちがいなく、想像を絶する葛藤と苦悩の日々だったはずだよ。病気になったからというわけではなく、たぶん物心ついたときからずっと。つらかったとおもうよ。前向きに戦ってきたように書いているけど。超人的な精神力、だけどそれは著者ひとりでなしえたのではなく。彼の伴侶であるフランシスさんがどれほどおおきな存在だったか、というかフランシスさんが著者のがんばるただひとつの理由だっということなんだろうな。全編をとおして、おもてむき文章表現や章の内容はちがっても、書かれていたことはたったひとつだった。この本はフランシスさんへの、ながいながい、痛切な、恋文だった。
すごい本だった。
来月くらいから、ミニヤコンカ山岳遭難事故のノンフィクションとヘンリー・ダーガーの評伝も読んでみたい。ほかにもいろいろ読んでみたい本ある。でも忘れないうちにこの2つは読んでおかないと。