BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

津原泰水『綺譚集』-200129。

津原泰水
『綺譚集』
創元推理文庫

f:id:york8188:20200129231121j:plain

www.tsogen.co.jp


1ヶ月くらい前に、書店で購入した。
最初の数行で、これは当たりだなと思った。
以来、今日まで、どこに行くにも持ち歩いて、
だらだらと 何度も何度も、読み返していた。
コートのポケットなどに入れていたから、
はじっこの方とかが折れてきたりして、
今や本がかなり劣化してしまった。
さすがにかわいそうだから、
そろそろ本棚に収めてあげようと思うに至り、
今日、1ヶ月ぶりに本体にカバーをかけた。
カバーは、購入してすぐに、取り外して、 
ずっと自宅に置きっぱなしにしていた。
カバーの表紙を良く見たら、
シェイクスピアの『ハムレット』の
オフェーリアを思わせる若い女性のイラスト。
オフェーリアか・・・ なるほど。
ピッタリだ この本に。 

収録されている作品、全部、大好きだけど
特に
『天使解体』
『サイレン』
『玄い森の底から』
『脛骨』
『安珠の水』
『ドービニイの庭で』
は 今、一番好きかもしれない。
でも やっぱり全部好きだな・・・

作品によってまったく違う文体を
楽しめる所がスゴイ。
『赤假面傳』の扉を開いた時、
いったい何が始まったのかと思った。
文体そのものを楽しむことができる、というのは
なかなかないと思う。

神西清チェーホフとか読む時と
同じような幸福を、
『綺譚集』を読んでいて 感じる。
良く考えて、端正に、丁寧に作られたものに
触れるのは、うれしいものだ。
絶対的に良いものは、絶対的に良いんだなと思う。
人それぞれ、とか 受け取り方は自由、とかを
超えた所にあるものだ。

『綺譚集』は、わたしは、この先
何度となく開いて読み返すだろう。
枕元に置いて、死ぬまでずっと、
読んでいるかもしれない。