BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『メン・イン・ブラック3』『シグナル 月曜日のルカ』-120624。

メン・イン・ブラック 3』
原題:Men in Black III 
バリー・ソネンフェルド監督
2012年、米

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『シグナル 月曜日のルカ』
谷口正晃監督
2012年、日本

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はしごした。

MIBはわたしなんぞが
わざわざ書くこともない。
絶対的におもしろかった。
幅広い客層にヒット(^O^)
グチャグチャした
エイリアンとか気持ちわるいのは 
わたしは苦手だけど・・・
グリフィンのきらきらした眼と、
Kの若かりしころがよかった。

まだやってるのかな。
ぜひみなさんごらんください。



『シグナル』が、大穴だった。
アクションなんかはなく、
地味で、平凡で、ちょっとした
青春期の恋の物語だ。
「なにも期待しないで観たから
『意外と』良かった」
だけなんじゃないかと
われながら思って
きょうまで感想をまとめることなく、
冷静に振り返れるまで待ってみた。
だが、やっぱり良かった。
良かった。
誰がなんといおうと。

もしどちらか1本を
もう1度観るなら、
MIBではなく、本作を選ぶ。

あの主役の女の子がよかった。
彼女がそこにいるという、
ただそれだけのシーンから
息をするのもはばかられるような 
はりつめた 雰囲気を感じて
あの子を観ていたくて
しかたのない気持ちになった。
いるだけで人の心をつかむなんて
誰もが持っている資質じゃない。
演技の経験を積めば
身につくというものでもないだろう。
というかあの子も、
ふだんからあんな雰囲気を
まとった子ではないのかもしれない。
あの映画で、あの役で、
あのように撮ってもらって、
初めてあのように見えた。
だがそれって
一種の奇蹟じゃなかろうか。

終盤、夕暮れ時の川べりで、
相手役の男の子に、
かわいらしいひとことを告げるシーン。
いや わたしが惚れたわ。
えーーーー!!!
もうスキーーーー!!!
ってかんじだった。
あの夕暮れのシーンは、
神の祝福をうけていた。
すてきだった。

相手役の男の子は
ミュージシャンであり
AAAというグループの
リーダーだそうだ。
あのやさしい話しかた、
大学生くらいの人にみられるものだ。
じつにリアルでよかった。
ああいう抑揚のすくない、
おだやかな話し方をする人は、
じっさいいる。
感情過多でアツいコミュニケーションを
おしつけてくる人には、
ルカは心を開かなかっただろうし、
ケイスケはあれでよかったのだ。

高良健吾の気持ち悪さも絶品。
身の毛もよだつイヤな男を
みごとに演じきっていた。

この、高良健吾が演じた
レイジという男については
映画を観てから、きょうまで1週間、
けっこういろいろ考えた。
レイジは、ルカの元恋人だ。
くわしく書くと
これから本作を観る人か
原作を読む人に申し訳ないのだが、
わたしが本作を観たかぎりで思うに
たぶんレイジ本人が
嘘の設定、嘘の噂を広めたんだろう。
ルカの気を引き続けるために。

ルカに執着するレイジが、
彼女の所在をつきとめようとして、
ケイスケにさぐりをいれる。
ケイスケはこのとき、
レイジとルカの過去を知らないが、
不穏なものを察知して、とっさに
「彼女はここにはいない」
という意味の嘘をつく。
しかし、レイジは、
嘘を簡単に見破る。
なぜ嘘だとわかったのかなあと、
おもったんだけど
それはたぶん、レイジ自身が、
常習的に嘘をつく人間だからだ。
慣れている。
嘘で練り上げた自身の虚像を
保つために
さらに嘘を重ねて生きている。
ばれたとしても、平気で居直る。
本人も嘘と現実の区別が
あいまいになっている部分があり、
追及されても なんの話?と
キョトンとして見せるレベルだ。
そういう人だから、レイジは
ケイスケの嘘をも察知したのでは。
人は嘘をつく、ということを
実際的によく理解しているのだ。

レイジとルカの過去を知ったケイスケが
「都市伝説みたいですね」。
事実かもしれないが嘘っぽい
証拠たりえるものがなくもない
誰が言い出したかわからない。
言い得て妙なセリフだ。
ぜんぶが嘘ではないかもしれないが、
都合の悪い部分を隠すとともに
自己を演出するために
レイジが嘘をついたのだと、
わたしはおもう。
レイジは要するに臆病者なのだ。

何号さんか知らないが
彼女(崇拝者)のひとりが
よかれとおもって
あることをしたのを知り、
激高するレイジ。
ひとしきり暴れてから、
膝をかかえてうずくまったが、
やがて上目遣いにちらっと
おびえる彼女のほうを見る。
これがほんとうに
気持ち悪かった・・・
台本どおりの行動なのだろうか。
高良健吾の案だとしたら
彼ってすごい役者だ。

観てから1週間たっても
本作を印象深くおもいだす。

良い映画の、定義は
わたしにはまだよくわからない。

でもこれほど強い印象を私に残した、
これだけ称賛したい気持ちに
させてくれた本作が、
良い映画じゃないなんて、
そんなことあるだろうか。