BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『ロリータ』-191009。

原題:Lolita
スタンリー・キューブリック監督
1962年、米

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これから先、何回も思い出して観たくなりそうだな~。

わたしは、キューブリック監督の映画が
そんなにすっごく好きというわけではない気がするが
でも、無視はできない。
遺作『アイズ・ワイド・シャット』はたしか
学校をサボって観に行った覚えがある。
あの人の映画は、どこか、アンバランスで、
うまくいえないが、病んでいるような感じ。
安定感に欠けるような気がするわけだ。
でも、まさにそこにこそ ひかれることがある。

『ロリータ』は
個人的に好きな所と、
あんまり好きじゃない(物足りない?)所があり、
わたしのなかでは、
それなりの作品だ、としか言いようがない。
それなりに好きで、それなりにどうでも良い。
ナボコフの原作も、
問題作で、かつ傑作であることを認めるが
でも個人的にはたいして趣味ではない。

このキューブリック版『ロリータ』、
原作の読み込み、本質のつかみ具合という点では
さすがだなと思う。
あの小説はすごく重層的で、多次元的だ。
そのことをほんの少しでも 
わかるように表現できているかどうかが
映像化においては大切なことのように思える。
99年版のロリータは、きれいではあったけど、
単純なラブストーリーにまとまっちゃっていた。
あの原作で、
どうしたらあんなに単純なラブストーリーに
まとめることができたのかが逆に謎だった。

自分がロリータに愛されていない、ということを
ハンバートはちゃんと理解していた。
ロリータは、ハンバートを愛しているかと言われれば
多分愛してなかったが、
でも、生きるために義父が必要だったので
割り切って彼を愛しているフリをしていたのだ
と言われると 本当にそれだけとも言い切れない。
そのへんの複雑な所を
62年版は一生懸命、出そうとしている。

99年版は1回観たらもう良いかな、って感じだ。
実際、ずいぶん前に一度観たきり、もう観てない。
62年版は多分今後 何度も観る。
それだけおもしろいからって意味じゃないつもりだが、
なんか、繰り返し、ダラダラと観たくなる映画だ。

少女ロリータは
わたしはスー・リオンで全然良い。OKだ。
カワイイ。演技がとてもうまい。

ロリータがもう戻ってこないという
現実を思い知ってわんわん泣きつつも
大金を残して彼女の元を去るハンバートを
観ると正直グッとくる(62年版)。
彼があの金を作るために事前に粛々と行った
作業の数々を想像すると泣ける。
大人なんだよな、この男は、って思う。

ヘイズ未亡人のうっとうしさ、痛々しさは
シェリー・ウィンタースの方が
99年版のメラニー・グリフィスよりも
うまくやっているような気がする。
「前の夫に『セニョーラ』って呼ばれたわ」
と話しながらフラメンコダンサー気取りで
指をパチンと鳴らすシーンは
観ててゾッとするくらいイタイ。
見た目も非常にイタイ。
もうあの時すでにハンバートに惚れているよな。

あと、62年版のオープニングと音楽が好き。