BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想をおもに記録しています。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想- 「萌の朱雀 Suzaku(1997)」-120717。

萌の朱雀
英題:Suzaku
河瀬直美監督
1997年、日本

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夏になると観たくなる。

本作も 真夏の物語であり
しかも奈良の、山村が舞台なので、
体感温度が現実と変わらなくて
鑑賞中もずっと蒸し暑いのだが。

でも夏になると観たくなる。
観るたびに なにか、
新しいことをおもう。

ストーリーは、ないようで、ある。

過疎化が進む奈良のちいさな村
そこに住まう、とある家族の物語。
数年前にたちあがった
鉄道敷設計画は
過疎化に歯止めをかけ
村の活性化につながると
期待されていたが
この計画は
中止においこまれる。

一家の当主が
この工事に従事していたが、
計画の中止がきまったことで
仕事をうしなって、
彼は無気力な毎日を
おくるようになる。

当主の姉は、息子の栄介を
この家におきざりにし、
出奔してひさしい。

現在は栄介が、町の旅館で働き、
一家の家計をささえている。

当主の妻は、収入の足しにと、
甥の栄介とおなじ旅館に
働きにでることにする。

栄介は彼女にひそかに想いをよせ、
体が弱い彼女を心配し 
さりげなくかばう。

当主の娘、みちるは中学生。
いとこにあたる栄介を
ひそかに恋している。
みちるは母に嫉妬する。

当主の老母(みちると栄介の祖母)は
心優しいおしゅうとめさんで、
孫のことも嫁のことも、
我が子同然にいとおしがり、
しずかに家を守っている。

やり方によってはいくらでも、
昼ドラ的にできそうなプロットだ。
でもこの家族には、
そういうかんじのことは、
なにもおこらない。
とても微妙な、
あってないようなつながりで、
けれども確固たるなにかをもって、
この人たちは家族だ。

演技といっていいのかどうか・・・
演技を超えたなにものかを、
役者さんたちがみせてくれる。

みちる役の 尾野真千子
監督にみいだされ
この映画でデビューしたという。
いまも女優さんとして活躍してる。
NHKの連続テレビ小説
カーネーション」や
民放ドラマ「Mother」に出てたはずだ。

わたしは この映画が好きだ。
人間は、
なみうつ情念を
このように 胸の内に抱いたり
抱いていることを
たまにはちょっと忘れたり
言葉にならない想いを
ひとりで見つめて
苦しい涙をながしたり
こういうふうに
生きている。

なにも押しつけがましく
伝えようとしてないのに
まぎれもなくなにかを
訴えてくるのは
この映画のどこが
どうだからなんだろう。

もっとギュウギュウ
おしつけてくるような映画でも
なにも感じないときは感じない。

真夏の、
暴力的なまでに晴れた休日の、
16時半くらい。
冷房をとめて、
部屋の窓をあけて、
電気を消して、自然光で。
畳のうえにでも、
ぐだーんと寝っ転がり
麦茶かなんか飲みながら
観たい映画だ。