児童向けの本をあんまり読まないで育ったようにおもう。
幼児向け、絵本ともなるとさらに縁が薄かった。
あの「ぐりとぐら」すら未読だ。
え、だって、ぜんぜん興味ないんだけど。あれ。
読んで感じたなにがしかが、心や頭にしみとおり血肉となる、
体はどこにもいけなくても、心は旅にでられる、
読書という行為について そんなような
一種の哲学の種を心に育てるようになったのは、
つまり読書を自分にとって大切な いとなみと
とらえるようになったのは、中学3年あたりから。
(「哲学の種」は育たず、わりとはやめに腐り落ち、
わたしは単なる活字中毒と化したが。)
児童向けの本に、児童のうちに親しんだ記憶があまりに乏しい。
でも、ほんのいくつかは、おぼえている。ほんと、これだけ。
これがすなわちわたしのオールタイムベスト。
このブログを読んでくださるかたと
思い出がかぶるものはあるかなあ。
◆寺村輝夫/挿絵・和田誠
「ぼくは王さま」
5~6歳か。祖父母宅(現・叔父宅)で。
おとまりした朝、起きて階下に顔を出すといつも祖母が
「まだ早いからふとんに戻って、マンガでも読んでいなさい」と。
そのたびに書棚からこれを出して、読んだ。
新・名作の愛蔵版 ぼくは王さま | 株式会社 理論社 | おとながこどもにかえる本、こどもがおとなにそだつ本
小学2年。
宿題の読書感想文で
原稿用紙50枚ぶんほど、本作への思いをつづったら
担任の先生にドン引きされた。
くじらがフランス旅行に行く、イルカの趣味が筋トレ・・・
わけがわからなくて大好きだ。
大人になって自分で購入し、今でも読む。
ともだちは海のにおい | 株式会社 理論社 | おとながこどもにかえる本、こどもがおとなにそだつ本
◆カレル・チャペック
「長い長いお医者さんの話」
小学校高学年。図書館で何度か読んだ。童話集。
表題作は、その名のとおりお医者さんがお話をするお話だ。
性悪の魔法使いが、梅干しかなにかのタネをのどにつまらせる。
かけつけたお医者さんはのん気な人で、
死にかけの患者を尻目に、いろんなお話を披露する。
有名な(有名だっけ?)「ソロモンのおひめさま」、
水辺の妖精の骨折を治してやったときの話・・・、
夢があって、でも風刺がきいて、よかった。
◆ウルズラ=ウェルフェル
「火のくつと風のサンダル」
小学4年か5年?
いじめられっ子の男の子と
お金もうけは苦手だが愛情深いお父さん。
父子は男の子の誕生日を記念して、長期旅行にでる。
旅の場面もたのしいが、むしろなんでもない日常の描写がすきだった。
お母さんが、旅の荷物にケーキを作ってくれるけど
「あしたにならなくちゃ、切ってはいけませんよ。
まだ、できたてですからね」とか。
「市場にでかけていって、物売りのおばさんたちが品物をひろげる
手伝いを」して、お駄賃かせぎをするとか。そういうのが。
小学校高学年か中学1年。
指輪やナルニアもいいが、
本作こそわたしにとって別格。
外伝も含め全巻くりかえし読んでおいてなんだが
最高傑作は第1巻「影との戦い」。
カラスノエンドウとのわかれの場面や
「いとしいハイタカよ」にはいつも泣かされる。
ハイニッシュサイクルやオルシニアは、
大学生にもなってやっと読んだ。
◆ルーマー・ゴッデン
「人形の家」
小学校低学年・・・だったかどうかさだかでない。
お人形遊びがだいすきな姉妹に、ある日
豪華なアンティークのドールハウスと
これまた年代もののビスクドールが贈られる。
姉妹のもとには先住のお人形一家がいる。
やさしい姉妹のお世話をうけ平和に暮らしてきた彼らだが、
新しいお人形が仲間入りしたのを機に
その生活や人間関係が狂わされて・・・と、
今おもえば生々しいものをはらんだ物語だ。
真実とは何か、心はなぜうつりかわるのか、そんなテーマを
お人形たちをめぐる事件に託して巧みに描いている。
だが 読んだ当時は
お人形やドールハウスのディテールの描写にただ心をひかれてた。
総花柄の装丁も思い出深い。
ここに掲載したのは現在市販されているものの画像なのだが
わたしが読んでいたのは、これじゃない。
図書館にしかないのだ。個人的には持っていない。
調べたところでは
岩波少年文庫創刊40周年を記念した限定版とのこと。
本作は全30巻セット中の一巻。いまや入手困難だ。
わたしはやはりかつて親しんだ、
あの花柄の表紙のものでなくてはほんとうはイヤだ。
ときどき古書店やオークションサイトで・・・出回るようだが
どうしたものかね。
図書館にたまに読みに行くけど、もうぼろぼろなんだよ。
わたしくらいしか読んでいないとおもうんだけどな。
お願いしたらゆずってもらえないかな(笑)。