BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

理由-121007。

10月20日に公開の映画
「エクスペンダブルズ2」は
ジェット・リーの出演場面が
すごく少ないらしい
予測はしていたものの、
それを知ったときは残念で、
しばらく落ち込んだ。
映画を観に行くのを
やめようかなとさえ思ったし、
ジェットの体調が悪いのでは
と 心配になった。

ジェットの出演シーンが
少ないらしいことについて、
自分なりにできる限り、
理由をしらべた。

体調不良などではなく、
やっぱりほかの活動(慈善事業)に
力を入れたいためだったみたいだ。

ジェットは2004年の
スマトラ島沖地震津波のとき
休暇でモルディブをおとずれており、
ホテル内で家族もろとも
首まで大波につかっておぼれかけ、
2番目のお嬢ちゃんにいたっては、
波にさらわれ一時手元から
離してしまうという体験をしている。
お嬢ちゃんは他の人が
手をさしのべてくれて助かり、
ジェットも家族もみんな軽傷ですんだが、
この体験は、彼の人生やものの考え方に、
すごく大きな影響をあたえた。

彼はその後、慈善事業に注力
みずから立ち上げた「ワン基金」の
スポークスマンとなって
世界中をとびまわるようになった。

中国・四川大地震のときは、
ボランティア活動に専念したいからと、
当面の俳優業の休業を公言した。

近年、少しずつまた
映画に出るようになってきたけど、
俳優業より慈善事業のほうを
がんばりたい気持ちは、
もう変わらないのだろう。

エクスペンダブルズ第1作も、
もともとは出演を断っていたそうで、
今回の2作目も断ったのだが、
シルベスター・スタローン
義理立てして 受けたという。
ハイライトシーンの撮影は
短期間で終えるようにとりはからわれ、
ロケもジェットにとって便のいい
香港でおこなうことにするなど、
配慮が重ねられたそうだ。

中国という巨大マーケットの魅力や、
たぶんそのほか、
わたしにはわからない
業界の様々な政治的なことも
からんでいたとは思うが、
スタローンはなんとしても
準主役級のポストに
ジェットの名がほしかったのだろう。
そして最終的には
ジェット自身が、出演すると決めた。

大規模事故や自然災害、暴力被害などで
命の危険に直面するといったような、
ちょっとふつうの生活ではありえない
大きな精神的ショックをうけたとき、
それが心の傷(PTSD)となって、
長く人を苦しめることがあることは、
知られている。

しかし、
人によってはそうやって受けた
「心の傷」が、さらに
非常に大きな「心の成長」という形
(PTG、ポスト・トラウマティック・グロース)
に、変わることがあるのだそうだ。

ある体験をとおして
考え方や価値観が変わる。
これは、言葉でいうのはやさしい。
だれにも たしかにありえることだ。

けれどもそれがじっさいに
明確に人の心に起こり、
じっさいにその人の人生を、
それまでと全然ちがう方向に
変えてしまったりするのだ。
そしてその変化は一時的なものではなく、
つまりその人自体を大きく変える。
その人がもともと持っている
能力や財力なんかによっては、
世界を動かしてしまうことさえある。

PTGは、PTSDとともに、
衝撃的なできごとを体験した
人間の心に起こる現象として、
心理学や医療の方面で
注目されているらしい。
わたしは、東日本大震災のとき、
その概念の存在を初めて知ったけど。

おもうに、
ジェットもたぶん、
PTGだったのだろう。
公式サイトにおいて、彼は
スマトラ島沖地震の体験について
たびたび語っている。
あの体験が彼の死生観に
どれほど大きくゆさぶりをかけたかが、
伝わってくる。

ジェットは昔から
かなり熱心な仏教徒だ。
武道を極めた彼ならば、
テクニックだけでなく
精神的な修練も人より積んで、
心の下地があったはずなので、
被災体験が彼を成長させる
きっかけになったというのは
わかる気がする。

わたしは、彼に持病があることを、
いちおう知っている。
公式サイトなどを見て
写真の彼の顔色が悪かったりすると、
心配になる。
体調は気がかりだ。でも、
映画の出演場面が少ないことの理由は、
望む道を歩くために
自分で選んだことだったとわかって、
今回は安心した。

スマトラ島沖地震が起きたころ、
わたしはまだ、ジェットを
特別に応援してはいなかった。
地震発生直後、
ジェット・リーモルディブ
行方不明になっていると、
一時、ニュースになったようだが、
それも知らなかった。

もしわたしがそのとき
すでに彼を大好きだったなら
行方不明の報道にふれ
心配で心配で、
なにも手につかなかっただろう。
とてもまともでは
いられなかったと思う。

わたしにとって
ジェット・リーの存在は
心の支えであり、喜びだ。
彼の動向は、わたしの気持ちに影響する。
彼についての
ニュースにふれるたびに一喜一憂する。
元気でいてほしい。
自分自身のことよりも強く、
そう願っている。

エクスペンダブルズ2」で、
ジェットの出演場面が
少ないとしたら残念だが
たとえ少なくても出演はすると
彼自身が決めたのだ、
やっぱり、映画は観に行こう。