BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

言葉。-180907。

自分の発した言葉が人の心を動かした、と感じたくなって、
強い言葉を遣ってしまうことがある。
傷つけたいとおもってのことではなく、
「あのときあの人がこう言ってくれた」
と、あとで思い出してほしい、
おぼえていてほしい、
そんなばかみたいなことを急におもうのだ。
これは「心に爪痕をのこしたい」
なんて表現もできるものだろうから
ある意味で「傷つけたい」と
似たようなことを
わたしは企図しているのかも。

だけど人の心は
他人のおもいどおりには
ぜったいにならないものだ。
「覚えていてほしいから
こう言おう」なんて
ちまちまとした作戦ずくの言葉でなく
言った本人は
言ったという事実ごと
5分後には忘れてしまうような
何の気なしに口にした言葉が
人によってはその後の日々の
おくりかたを左右するほどの
宝になり、傷にもなりする。
わからないものだ。


わからないものだし、
しかもそんなことってめったにない。
言葉だけが人を動かすなんてまずありえない。

なにを言ったかよりも
だれが言ったかなのだ。
相手とのつながりという
鍵がないところでは
言葉の力は機能しない。

それに人の心とは
言葉よりもむしろ
それ以外の
ものによってこそ
動くものだと
わたしはほんとうはわかっている。

言葉は正しくないし
伝わらない。
まあだいたいこんなところで、と
折り合いをつける、
それだけのものだとおもう。

ほんのちょっとしたしぐさ、
ものを渡すときの腕の動かしかた
相手との会話をおえて
その場を離れるときの
目のうごかしかた、身のこなし、
横顔、口元・目じり・頬の「雰囲気」、
あいづちをうつかうたないか
返事をするまでに何秒かかるか
声の高低や話すスピード

たぶんもっとそれ以外にも
毛穴とか髪の毛先、嗅覚、触覚、
つかっていると
自分では意識できない
感覚すべてでもって
わたしは人からうけとり、
わたしも人にわたしている。

ほんとうはそちらが肝要で
言葉はどうにもしてくれない。
どうにかなったらいいのになあと
願うようなときにはなおさら
どうにもならない。
言葉でなんとかしようなんてのは
そうなってくると
怠慢ともいえるかもしれない。
それ以前も以前のことを
ひとりよがりでなく
尽くしてきたかが問題で
自分の意思に
うそがなかったかが問題で
言葉がものをいう可能性は
その土台のうえにのみうまれる。

言葉で心を動かせるほどの鍵なんて
わたしはだれとのあいだにも
作れていないとおもう。

だから誰になにを言ったって
なんの影響もありはしないので
悪態も罵詈雑言も垂れ流しほうだい
なんてことにもならないのが
ややこしいのだが。

人とつながること
かたり合うこと
心を明かすこと
どれもいまやしんどい。
しんどいくせに寂しさが苦しい。
つかれてめんどうくさいから
横着をして積み重ねの部分を棚上げし
言葉に逃避しているんだろう。

獲得できるはずもなく
ほんとは獲得したいとも
おもってないようなものを
ちょっととりにいってみようかな~と
軽くジャンプしてみて
ああいい運動した、みたいな
そんなものじゃないだろうか
わたしがしてしまうことの本質は。
他人をそれにまきこみたいと
考えるのは傲慢てものだ。

川。-180906。

自宅から6.5~7キロくらいのところに
となりの市との境となる川がある。
夜、散歩をするときは
そこまでいく。
歩いて行って
だいたい1時間半だ。

昼間だと
この川のあたりも
べつになんということはない。

だけど夜に歩くとちがう。
とくに晴れの日がつづいたせいで
水量がへり、流れがおだやかなときは
怖くないし、とてもいいようだ。
遊歩道も日が暮れると
人通りがなくなる。
かわりに水音と鈴虫の大合唱が
うきたつように響き
草のにおいのとけこんだ大気が
やわらかく体をつつんでくれる。
そんな感覚にきもちがたいへん軽くなり、
このときばかりは
外なのに
イヤホンで耳をふさいでおかなくても
まったくつらくない。



国内のあちこちで災害がつづいている。
西でも北でも
北海道でおおきな地震があり
たくさんのかたが困っており
ケガを負われたかた、
亡くなったかた。
まさかそんなことになるつもりは
なかっただろうに。
彼らが死ぬことなんてなかった。
終わっていいはずがなかったのに
残酷で理不尽だ。

諸星大二郎「私家版鳥類図譜」-180905。

諸星大二郎
「私家版鳥類図譜 新装版」(講談社)

f:id:york8188:20180906040822j:plain

http://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000018995

「鳥を見た」がすばらしいとおもう。
「ぼくとフリオと校庭で」あたりと
どこかつながっている。
屋上のタンクを開けたときの
少年たちの表情が秀逸。



新装版じゃないほうの
バーデザインもすてきなんだよな

無題-180904。

今年は台風が上陸する回数が
おおい。
たしか昨年は おなじ時期に
ぜんぜんなかった・・
いっそひとつもなかったと
記憶している。



台風の影響をうけ
ひどい頭痛にまいらされている。
体もだいぶ軋む。



パソコンが壊れてるのは
ややしんどい。
知り合いにちょっとした
手伝いをたのまれたが
パソコンが使えないから
断らざるをえなかった。
困っているからたのんできたのだろうに
わるいことをした。



パソコンでむだづかいしていた時間を
ほかのことに使えているような
気になれるのは
いいことのような気がする。
おもに本を読むとかだ。
おもにというか
わたしにできることは
本を読むことくらいであるから
人が聞いたら引くくらい
ほんとに本を読むことしか
していない。
実状を言えばいまは
その読書にもあまり関心がない
1冊読むのに3日やら1週間やら
かかることもありとても遅い
時間をかけたわりに
とくになにも頭にはいらず
心にものこらず
はい、読んだ。という
それだけの作業、だいたいは。
しかもそれすら
やりとげられないときも。
言うほど楽しくもなんともないし
夢中になるようなおもしろい本にも
ついぞ出会ってない。



だけど関心がなかろうと
ほかにできることがみあたらない。
とりあえずなにする、ってときに
手近にあるのはいつも
この四角い、文字が書かれた、
紙の束だけだ。
ほかのことをなにも知らない。
知ろうという意欲とかやる気とかが
そもそも欠けている。
それに、ただ活字にふれるという
ことさえ棄ててしまったら
もう希望はひとつもねえなという
かんじが、なんとなく。
本も読めないようじゃねえ。
ほかにもいろいろなものを
短期間のうちに棄てちゃった。
でもこれだけは失わないほうが
いいのだろうなとおもって。



本は、このとおりわたしが
なにを考えていようが、
支離滅裂わがまま放題だろうが
イヤな顔をしない。
なぜならモノであるから。
そこは本というもののいいところだ。
人間相手だとこうはいかない。

読書感想-倉阪鬼一郎「ブランク 空白に棲むもの」-180903。

調子をくずして
ほとんど寝て過ごした。


きのう図書館で読んだ。

倉阪鬼一郎
「ブランク 空白に棲むもの」(理論社)

f:id:york8188:20180903223541j:plain

https://www.rironsha.com/book/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF-%E7%A9%BA%E7%99%BD%E3%81%AB%E6%A3%B2%E3%82%80%E3%82%82%E3%81%AE

先日読んだ「血の12幻想」(講談社文庫)というアンソロジー
倉阪鬼一郎氏の「爪」が収録されていて、
ことばがきれいでよかったのでおぼえていた。
きのういった図書館には
中学生~高校生くらいのときに
読むといいかもね、といった
「ユースエイジ」なんとかという棚があって
スタンダールやら清少納言やら
漱石やらのハイライト版や
田中芳樹上橋菜穂子などが
あつめられている。
本作は そこにあった。



赤川次郎の「三毛猫ホームズ」を
もっとダークにし
「超能力」と
乱歩の「少年探偵団」ものの要素を
つけたした、みたいなかんじだ。
ネコがでてきて、
なかのよい兄妹が探偵役、
妹にほれてるまぬけだが気のいい大男。
大男は探偵役の主人公の
れっきとしたアシスタントであるが
基本はなんでももりもり食べて
ムダなことしゃべってるだけで
あんまり役にたたない。
彼の親戚の天才将棋少年のほうが
事件解決に多大な貢献をする。
なかなかできる子で かわいくていい。

主人公の妹が
ネコことばをつかう、という設定は
ぜんぜんいらない笑。
冒頭で登場するアキバ系アイドル
完全にキャラがかぶってた点も
最後までじっくり読んでみたが
その必然性がまったくみつけられず笑。
単純に作者が
アキバ系アイドルっぽい
「うにゃー」「なんとかだにゃん」みたいな
しゃべりかたをする女の子を
出したかっただけとしか思えなかった笑
冒頭でアイドルを登場させたんだけど
背景キャラにすぎないから
すぐ退場してしまったので
さびしくなってメインキャラに
にたような属性を付与したのではないか。
物語的になんの必然性もないのに
たんなる自分の趣味性向をここまで露骨に
押し出してくる作家さんもめずらしい笑。

鼻につく部分がおおく
疑問はいろいろのこりまくったが
頁数は400ちかいわりに文字がすくなめ
情報もすくなめで理解に問題はなく
とまることなく最後までよめた

なにより
やはりこの作家さんはほんとうに
文がきっちりとしていて
なんということのない描写にも
どことなく品がありしかも読みやすい。
「ホワイトデスシンドローム」なるものが
(主人公は「白」ではなくブランク、空白だと
かたくなに主張しているが。)
原因も防止法もまったくわからないまま
世界にひろまっていくかんじは
さすがに怖くてよかった。


本がめっきり読めなくなり
むずかしいことを理解しようという
読書をするうえで必要だと
わたしがおもうところの
一種のがまんづよさみたいなものが
減退してしまってるのを
なんとかできんもんか
とおもって
こういう10代むけとか子どもむけとか
読んでみたのだが
ちょっと
そこまでぴんとこないなあ笑
筋力がまるでないヒョロヒョロ野郎のくせに
そのプロテインはだめだよとか
そんなトレーニングじゃちょっとねとか
口だけ達者な人みたいなかんじで
超ダサいんだが
ぴんとこないんだなあ。
でもあの図書館の棚には
まだまだたくさんいろんな本があった。
ほかにいい方法がおもいついている
わけでもないし
こっち方面の「回復トレーニング」を
しばらくはつづけてみるかなあ。

映画の感想「銀魂2 掟は破るためにこそある(2018)」-180902。

銀魂2 掟は破るためにこそある
(福田雄一監督、2018年、日本)

f:id:york8188:20180902222551j:plain

https://movie.walkerplus.com/mv64165/

「優れたマンガ作品だから」というので
原作「銀魂」を読んだためしはない。
コミックス60巻あたりからは
読んでさえいない。
だけど、なぜだか、
たとえるならば
「しょうもなくって、あきれたバカで、
でもほうっておけないきょうだい」
みたいなかんじを あのマンガに
勝手に抱いていて
つまらないとか、つまるとか、
そういうことではなく、
生存確認をたまにしたくなる。
どうせまたなんか
愚にもつかないやっかいごとを
かかえてるか
わけわからん仕事とか
始めたといっちゃあ1年ともたずに
辞めるんだろうなとか
みえすいたバカさにへきえきしつつも
連絡がないとなんか
ソワソワしてしまうみたいな。


そういうのに似たものを
銀魂」の世界には感じていて・・・
自分でもほんとうに
ばかばかしいなあ、
ヘンだなあ、とわかるのだが。


銀魂、または空知英秋(呼び捨て)に関する
なにかしら
マンガでもいいし
アニメでも映画でもインタビューでもいいが
たまに、視界のすみっこにでも
ちょっとあってくれると
やや、いらっとしつつ
ほっとする。


さて
観てしまった本作だが
うーん笑。
あえて言うまでもないことなのだが
それをあえて言うと
映画作品としては、
どうしようもない仕上がりだ笑。
というか映画ともいえない笑。
高校生のなかよしクラスか
美大もしくは映像制作専門学校の1年生がつくった
文化祭の「出し物」
感覚としてはこっちのほうが近い笑。
批評家のだれかが
「叩いても叩いてもでてくる
モグラ叩きみたいな
にっくき福田雄一の粗悪映画」
といって
本作をこきおろしてたが
道理だ笑。

あと
銀魂をごぞんじないかた、
また、コミックスがいま70余巻でてるとおもうがそのうちせいぜい5、6冊をパラパラとお読みになった程度かな、というかたは、
本作が動員数ランキング上位だからといって
話題づくりのためになにもムリして
こんなものを観にいかれる必要はない。
そういうことなら「検察側の罪人」のほうが
まだなんぼかためになる。
本作はあくまで、内輪のおたのしみ、
それ以上のものとはいえない。
御身の人生のたいせつな2時間を
ドブにすててまでムリに観ることはない。
もちろん映画だけじゃなく
この感想ブログも。
それだけはいちおう申し上げておく。


だが
ファンとしては、
この映画が在ってくれることは
よろこび、そのもの笑。

・銀時役の小栗旬さんをはじめ、むりやり実写化するとしたらまあこうなるだろうな、そりゃそうだろうなという、すんなり納得の配役。ぎゃくにいえば「よくもまあここまできれいに全員揃えたね。よくみつけてきたね、こんなマンガからぬけでてきたみたいな人」。鴨太郎や万斎もだがなかんずく沖田が、目をみはるほど沖田。しかも見た目だけでなくキャラとしても沖田っぽさが出ていた。ファンが多そうなキャラクターだから配役にも力をいれたんだろうが、それにしてもすごい。


柳楽優弥さんが、ほんとにほれぼれするようないい男になって、まあ。


・橋本環奈ちゃんが超絶かわいい。クルクル変化する表情にくぎづけ。野に咲く白いガーベラの花みたい。鼻ほじりの演技もすばらしい。演技というかふつうに鼻をほじってた。


・箱根と江戸の距離感がおかしい。鴨太郎との告別は江戸に近いどこかまで戻って行われたということなんだろうか。
だけど彼のケガは、連れて移動できるほど軽くなかった。腕一本なくなってたし(出血がみょうに少なかったが笑)。
長距離高速移動が可能そうな手段としてヘリはあったが、あれは鬼兵隊のもので、しかも撃墜されていた。列車は大破、車も、使えるものが残っていたのかわからない笑。
もうしわけていどに夜にはなってたが、鴨太郎のケガの重さ、移動手段の問題、銀時が立ち会えたことの時間的な整合性、
どれをとってもムリがあるようにおもえてならない笑。
あ。エリザベスか、あの「バス」だろうか。
わからない。


・お妙の店のオーナーがおかしすぎた。長澤まさみさんが耐えられなかったらしく素で笑っちゃってた。


・銀時と万斎の一騎討ち、「マトリックス」シリーズみたいな映像表現をがんばっていたとはおもうが、残念なことになにをやっているのかさっぱりわからなかったし、これをいっちゃおしまいだがあのようなシーンである必然性じたい、なかった。バトルシーンのとこの音楽は、もっとやかましいかんじであるべきだった。間がもたなかった。あと銀時の服があれだけ暴れておきながらきれいすぎた。


・土方の受難と鴨太郎の陰謀事件の接続は、限られた時間のなかでギャグエピソードもいれつつ・・にしてはすごく自然でうまかった。だが剣が抜けなくなるくだりが残されていたことは疑問におもった。あれは原作の話のながれをこの先もふくめて完全に踏襲する意思がある場合にかぎり必要な伏線だとおもう。のこすならのこすで別にそれでもいいのだが、前もってアナウンスされていなかった。どたんばで急に剣を抜く抜かないで騒がれて「え、その伏線生きてたの!?」。しかもあとで「土方トッシー化のエピソードはもうやりません」とはっきり示唆されていた。剣のところはこのさいカットでかまわなかったとわたしはおもう。


・マンガを読んだときはよく考えた覚えがないけど、けっこう生々しく、シビアなことを描いたエピソードなんだなと、実写を観てきづいた。
「自分以外のやつはみんなバカだとおもっているのか。そのバカどもに認めてもらえないことが不満か。おまえはひとりだっただけ。おれにはおまえがほんとうに欲しいものが何かよくわかるよ。」。
鴨太郎と鬼兵隊の関係が原作よりも濃く、わかりやすく説明されていたおかげで、鴨太郎という人物の孤独と不器用さがよく伝わり、それだけに彼の心の救済を願わずにいられなくなるものがあった。


・・・
そんなところだろうか。
第3作があるのかないのか知らないが
そして、あるとしても、どのみちD級映画にしかならないことは火を見るよりあきらかだが
また忘れかけたころに
「元気な顔」をみせてほしいと
おもわなくもない。
マンガ銀魂はもうすぐ完結すると聞いているし、
そうなるとちょっとさびしいからな・・

読書感想「NOVA 1」「血の12幻想」-180901。

家にこもって本を2冊読んだ。
時間がかなりかかった。
庭に出てノラネコの頭をなでたり
フェルメールの画集をながめたり
だいぶ途中で脱線しながらなんとか読みおえた。
本がおもしろくなかったからじゃけっしてなく
単にわたしの体力みたいなもののもんだいだ。


来週からだいたいの小学校や中学校では新学期だなあ。
夏休みの課題でもくそくらえだったのは「読書感想文」だ。
あれがだいきらいだった。
じつにくそくらえだった。


「書き下ろし日本SFコレクション ノヴァ1 大森望責任編集」(河出文庫)

f:id:york8188:20180902010435j:plain

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309409948/

小林泰三「忘却の侵略」、藤田雅矢エンゼルフレンチ」、牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」、飛浩隆「自生の夢」がおもしろかった。
小林泰三さんの小説は、会話文が特徴的だ。ときに、へたくそな英文和訳みたいで、カチカチであじけない・・・みたいな批判もきかれる。わたしはすごくすきだが。批判は批判でべつに理解できないということはない。「忘却の侵略」もまさにそんなふうだったけど、そこに主人公の不器用な感情がにじみでていてかわいらしい。
・「エンゼルフレンチ」は終盤のスケールが「エンダーズゲーム」のエンダーとヴァレンタインのラストのところになにかすこしちかくて、気が遠くなるようなところがいい。
・「黎明コンビニ血祭り実話SP」はタイトルがなんだこりゃ、で、読み出したら中身もなんだこりゃ、だった。こんなのいままで読んだことがない。冒頭に付された、大森望さんによる紹介文がなければ、あまりにもわけがわからなすぎて、きっと最後まで読めなかった。1回じゃ無理だったけど、紹介文にはげまされてもう1回読んだらするっと入ってきた。度肝をぬかれた。こんなのよく思いつくもんだ。このような物語に出会えるというのならば、「SF」ってものを、これからはもうすこし積極的に読んでいきたい。
・「自生の夢」わたしの理解可能レベルぎりぎりオーバーくらいの難解な物語だったが、感覚的にはわかったしじゅうぶんたのしめた。自分でどんどん学習していくタイプのテクノロジーが人間の生活を想定を凌駕しかきかえ押し拡げていく、というようなのは、もしかして昔からけっこう多くの作家に書かれてきたテーマなのかなとおもう。だが本作はそれがすてきな感性によって美しいことばで描き出されていたし、舞台装置がレトロっぽくて、読んでてたのしかった。
円城塔「Beaver Weaver」もあったが
これはざんねんだがわたしにはほぼまったく理解できなかった。難しすぎてついていけない。



津原泰水監修「血の12幻想」(講談社文庫)

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http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000202471

こちらは「血」をテーマとするホラーや幻想、ミステリーの短編アンソロジー
わかるわからないでいったら わたしにはこっちのほうが、わかるよそりゃ笑。
小林泰三「タルトはいかが?」、倉阪鬼一郎「爪」、山村正夫「吸血蝙蝠」、津原泰水「ちまみれ家族」をおもしろく読んだ。
・「タルトはいかが?」昔の作家さんなら迷った末にやめておくのであろう最後のもう1ツイストを躊躇なく入れるのが小林泰三さんだとおもった。ひやひやさせられるがギリギリ「入れてよかったね」ってなる笑。
・「爪」は文章がとてもするどく、さびしいかんじでよかった。何回も読みたい。
・「吸血蝙蝠」ふるくさいながら、さすがにベテランで、キリッとまとまっておりほんとうに読みやすい。必要なことはぜんぶ書いてあるが、書きすぎてない。お父さんのご乱心のシーンが怖かった。
・「ちまみれ家族」は笑った。こんなの読んだことがない。OVAになったらおもしろいだろうなーと一瞬おもったけどどうだろうな。
「早船の死」はちょっと「ダサい」印象。作家志望の高校生の習作みたいだった。「血の汗流せ」「遠き鼻血の果て」は「ちまみれ家族」系なんだろうなと理解したが、いまいちのりきれない。カッコイイことをやろうとして失敗したイメージ。
よくわからんのだが書くなら最後までちゃんと書いてほしいな。
「凶刃」はたぶん、切り裂きジャックの一連の事件が、手口とかターゲット選びの点で微妙に一貫性にかけていたといわれていることに 着想をえたものだろうなと理解。どうせなら殺人の場面がもっと ものにとりつかれたようにヤバイかんじだとよかったのにな。