BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想をおもに記録しています。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

モナリザから漱石へ。

ルーブルでは館が特定の人に、モナ・リザの模写を公認するとか。
史上その特権をえた人はシャガールと、斎藤吾朗だけ。
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赤に心が温まります。
赤といえば、漱石の「それから」。はじまりとおわりが、赤い!

冒頭にこう。
・・・
彼は胸に手を当てたまま、この鼓動の下に、
温かい紅の血潮の緩く流れる様を想像してみた。
これが命であると考えた。
自分は今流れる命を掌で抑えているんだと考えた。
それから、この掌に応える、時計の針に似た響は、
自分を死に誘う警鐘の様なものであると考えた。
この警鐘を聞くことなしに生きていられたなら、
血を盛る袋が、時を盛る袋の用を兼ねなかったなら、
如何に自分は気楽だろう。

ラストはこう。
・・・
忽ち赤い郵便筒が眼に付いた。
するとその赤い色が忽ち代助の頭の中に飛び込んで、
くるくると回転し始めた。
傘屋の看板に、赤い蝙蝠傘を四つ重ねて高く釣るしてあった。
傘の色が、又代助の頭に飛び込んで、くるくると渦を捲いた。
四つ角に、大きい真赤な風船玉を売ってるものがあった。
電車が急に角を曲るとき、風船玉は追懸けて来て、
代助の頭に飛び付いた。
小包郵便を載せた赤い車がはっと電車と摺れ違うとき、
又代助の頭の中に吸い込まれた。
烟草屋の暖簾が赤かった。売出しの旗も赤かった。
電柱が赤かった。赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。
仕舞には世の中が真赤になった。
夏目漱石『それから』新潮文庫

はじまりは拍動する血肉の赤。生の極みの狂気がきざす。
おわりは滾り襲う焔の赤。焦熱の果ての無が見える。