BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

メモ-190822。

執着する何ものもないといった虚無の心では人間はなかなか死ねないのではないか。執着するものがあるから死に切れないということは、執着するものがあるから死ねるということである。深く執着するものがある者は、死後自分の帰ってゆくべきところをもっている。それだから死に対する準備というのは、どこまでも執着するものを作るということである。私に真に愛するものがあるなら、そのことが私の永生を約束する。

 

三木清

他ブログ更新中-『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』レビュー-190822。

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多分もうレンタルショップに並んでるはず。

音楽も映像も実に凝ってて、とっても楽しめる。
ムダにミュージカルシーンがある(笑)

主人公の笑顔に引き込まれちゃって、
彼のことが大好きにならずにいられない。

あたたかくシンプルなメッセージを
心の真ん中で受け止めたい。

アニメ『ヴィンランド・サガ』第7話-190820。

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vinlandsaga.jp

ああ。トルフィンが荒んでいく。

ノルド語の通訳の男が
上官が話すフランク語をそっくりそのまま
完全コピーで伝えていたのがおかしかった。
日本語のアニメであるから
フランク語もノルド語ももちろん全部
日本語で表現されるのだが
(『ドリフターズ』みたいに
 新しい言語体系をわざわざ作って
  声優に覚えさせてしゃべらせて
 日本語の字幕をつけて放送するというような
 けったいなことをやるアニメもたまにはあるみたいだが)
例えば上官がフランク語
「あの川は急で、我々さえも手を焼いているくらいなので
 まさか敵がそこから攻めてくるはずはない」
と話せば、
通訳はトルフィンにそのまま
「あの川は急で、我々さえも手を焼いているくらいなので
 まさか敵がそこから攻めてくるはずはない」
と伝えるのだ。
こんなこと、おかしいと思う。
別の言葉なんだから。全く同じ表現はできない。
「敵は川からはこない、流れが急だからありえないと
 彼は言っている」
その程度にしておけば必要十分だし、自然だったと思う。
すべて日本語で表現しているだけに
完全コピーはさすがに不自然に聞こえすぎた。
何もまったく同じことを言わせなくても良いのに。
芸が感じられず、ちょっとがっかり。

アシェラッドの誓いの立て方は、

「全能の神オーディンの名において~」
「全能のオーディンの名にかけて~」

「我が祖アルトリウスの名にかけて」
「アルトリウスの名において」

大きく2つに分かれるな。

トールズの決闘の申し込みに応じたときは
オーディンの名にかけて」、
事前に交わした約束を、反故にした。
ビョルンが起こした事態を収拾するために、
やむをえなかった部分もあったように見受けたが。

だが、トールズの遺言を聞き届けたときには改めて
「アルトリウスの名にかけて」、速やかに兵を引く
と約束し、その通りにした。

きっと、本当に約束を守る気がある時、
やり遂げようとすることがある時には
母方の先祖、アルトリウスに誓うのだろう。
父方の信仰の対象であるオーディンではなく。

自分のルーツは母方の高貴な血筋にこそあるのだ、と
アシェラッドは考えているんだと思う。
すごく複雑で、難しい人物だ。

他ブログ更新中-『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』レビュー-190820。

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ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の感想
すべてCGであることがとても信じられなかったくらい
怪獣のバトルとビジュアルがスゴかった。

映画の感想-『ブルージャスミン』-190819。

※内容に触れていますので、あしからず。

原題:Blue Jasmine
ウディ・アレン監督
2013年、米

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最後まで観て、ようやく
欲望という名の電車』(1952年)
に似ているんだ、って気づいた。

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欲望という名の電車』では、
ブランチの妹は、夫のスタンレーにぞっこん。
でも、『ブルージャスミン』のジンジャー
(「ブランチの妹」に当たるキャラクター)は、
離婚歴があり、2人の男と関係を持っていた。
スタンレーを演じたマーロン・ブランドくらい
キャラが立ってて
ケイト・ブランシェットと張り合える、
そんな男優がいなかったので、
せめて男の人数を増やそう・・・ってことだろうか。
自信がなく、姉に対する劣等感が強いジンジャーは
ジャスミンに「男を見る目がない」などと言って
けなされると、不安になってしまい、
ああして、あせって新しい男を探そうと
してしまうのかもな、と思った。
それにしてもふたりの子どもたちが、かわいそうだな。
子どものこと、驚くほどまったく考えてないよね!

欲望という名の電車』の
ブランチの妹には、子どもがいなかったな。


強烈だった・・・
けど観て良かった・・・
ケイト・ブランシェット素晴らしい。
大好きだ。
これまでに観てきた
ウディ・アレン監督作品では
ミッドナイト・イン・パリ』と同じくらい
好きだな。この映画。

ジャスミンは、みずから夫を告発したのか・・・
それだけは多分、妹にも話してないんだろうな。
これは、重大な真実だ。ジャスミンにとって。
彼女は大学を中退し、キャリアを高める機会を放棄して
夫と結婚した。
結婚相手がお金持ちだったから、
恋と金とに目がくらんでしまっていて、
この先も何とかなる、大丈夫だ、と思ってしまったのだ。
でも、ジャスミンは自分で夫を告発したのだ。
自分の未来のすべてを棄てて獲得した結婚生活を、
決定的に破壊したのは、ほかならぬジャスミン自身なのだ。
ということは、ジャスミンは、理解している。
「わたしは何も知らなかった」
「わたしは何も悪くない」
と言いたくても、言える立場でないことを。
彼女は「被害者」の立場に安住することさえ
できなかったのだ。

ジャスミンは自己中心的でワガママだけど、
観ててそれが鼻についてしょうがない・・・、
といったことはなかった。
一文無しになったくせに、いつまでもセレブ気取りとか
妹に何から何まで世話になっているくせに、
その妹を内心バカにしていて謙虚さがない所とか、
イヤな感じだったが
イヤな女だなー! とは不思議と思わないのだ。

ジャスミンとわたしの境遇は全然ちがうのだが、
わたしのなかにもジャスミンは、いる気がした。
すてきな服が着たいな~とか、
清潔で快適な部屋で、ゆったり暮らしたいとか、
そんなことはわたしだって普通に思う。
良い暮らしをずっとさせてあげるよ!
君は好きなことをしてればいいし、
何もしなくてもいいんだよ! と
好きな人に言われたら、
心がゆれるかもしれない。
それに、あまりにつらいことがあって心が弱れば、
冷静に考えてふさわしい選択をする力がなく、
早まって、自分を貶めるようなことをしてしまうかも。
こういうことは、実際にそうなってみないと、
ピンとこない部分ではあるのだが、
ほんのちょっとのボタンの掛け違いで、
ジャスミンのようなことになるかもしれない。
わたしもそうだし、多分、人なら誰でもそうだ。

欲望という名の電車』には、
「ブランチがああなった背景には
 彼女ひとりの力ではどうしようもない
 難しい事情があった」
と、少なからず思わせるものがあった。
代々のザル会計と不況がたたって
大地主だった実家が没落し、
奔走のかいもなく屋敷が人手にわたってしまった、
という・・・。

だが『ブルージャスミン』では
ジャスミン自身が人生の選択を誤ったのが
 何よりもまずかった」
と思わされる感じになっていた。
夫がどんなに裕福でも、
キャリアアップの努力をやめるべきではなかった。
夫が違法な稼ぎ方をしていると気づいていたなら、
もっと冷静に話し合って、
もっと早く止めるべきだった。
自分自身が、人生の重大な局面で選択をあやまつ。
それは、誰にも起こりうる。
ジャスミンが転落していくむごい姿が
わたしの心に半ば自分のこととして
重く響いてきたのは、だからなんだろうな。

ジャスミンという人の心のなかでは、
「忘れたい過去」と「耐えがたい現在」が
本当に薄皮一枚くらいでしか
隔たってないんだよな。
それに、あまりに多くのウソをつきすぎている。
なのに、そのウソがなかなかバレないもんで、
ジャスミンの苦痛が長引くことになる。
いつバレるかしら、バレずに逃げきれるかしらと
ビクビクしながら、待つ苦痛がずっと続くのだ。

確かに彼女は愚かだった。
でも彼女は確かに深く傷ついていて。
正気と狂気のはざまでウロウロして、
すごく苦しそうだった。

つらい物語だった・・・
ジャスミンはどうなっていくんだろうな涙