BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

220119。

『ザ・ライト』という映画を、おととい配信で観た。アンソニー・ホプキンスが、型破りな悪魔祓い師(エクソシスト)を演じている。まあ、派手な作品では全然ないし、ホラー仕立ての、退屈な、キリスト教バンザイ映画、といわれたらそれまでかもしれない内容ではあった。でも、映画として、良いところもいっぱいあり、個人的には、観終わってすぐにもう一度観返したくらい、好きだった。特に、悪魔祓いをしてもらうためにエクソシストのもとに通ってくる少女の描き方がとても良かった。彼女は、いつも親戚の女性に付き添われてやってくる。まだローティーンだが、身籠っておりおなかがかなり大きい。平常時はごく普通の子なのだが、ふとしたときに、言葉にしにくい、どこかおかしい、そうとしか言いようのない様子を見せはじめる。そこの描写とか、素晴らしかった。実際、彼女はどこも変じゃない。でも、うなじを後ろ手にポリポリ掻く仕草や、視線が、うまくいえないのだが、さっきと今とではあきらかに何か違っていておかしい。ああいう繊細な描写、なんでもない動作にあたかも何かしらの意味があるかのように見せる撮り方? は、何もないところから思いつくことはなかなかできないとおもう。実際の宗教的な体験談とか、おおいに取材して参考にして場面を作り上げたのだろう。あのシーンは凄かった。あと、エクソシストが病院で泣く場面と、昼間の広場のエクソシストの姿とかも凄い。アンソニー・ホプキンスは偉大な役者だなとつくづく思ったし、映像としても、美しかった。

エクソシストとの出会いを通して自分の道を模索していく若い聖職者(コリン・オドナヒューが演じている)も、良い。

 

悪魔憑きは精神疾患ではないのか、医療の力をかりるべきところを宗教に頼るのはなぜか、といったような、「よくあるご質問」とのすり合わせも、うまくなされており、病んだ心、弱った体を狙って付け入るのが悪魔、というふうな描かれ方だった。

悪魔に取り憑かれたのであれ、精神を病んだのであれ、誰かがどこかで嘘をついているのであれ、ある人が苦しんでいて、助けを求めているとき、その苦しみによりそう人がいることは大切だとおもう。

人が不完全な存在である以上、たぶん宗教も医学もどちらも完全なものではないのだとおもう。でも宗教も医学も、どちらも人には必要なんだろう。