BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『失われた週末』-201119。

原題:The Lost Weekend
ビリー・ワイルダー監督
チャールズ・ブラケットビリー・ワイルダー 脚本
チャールズ・R・ジャクソン 原作
1945年、米

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売れない作家が宿痾のアルコール依存症に苦悩し
葛藤する姿を描く物語だった。

恋人ヘレンの優しさすこやかさに、観てるこっちが救われた。
主人公の兄が、序盤だけ出てきてすぐ退場してしまったのが
残念だった。
良いキャラクターだったと思うのでずっと出てきて欲しかった。
ヘレンも重要なキャラクターではあるのだが、
主人公の兄は、昔から、弟の面倒を何から何までみて
一番苦労している人なので、
その兄と主人公の関係をもっと掘り下げて描いてくれたら
アルコール依存症患者を家族に持つということ」について
もっと詳しく観ることができたと思う。

人の弱さ、
人が弱さをさらけだすこと、
弱い人間が、それでも一生懸命生きようとしてもがくことを
描いていた映画だった。

主人公は、最終的に自殺を考えるまでになるのだが、
彼の気持ちに気付いたヘレンが、
懸命に思いとどまらせようとする
終盤のシーンが、とても良かった。
何が良かったと思うかと言うと、
大げさなことをしなかった(泣いたりすがったり叫んだり)所と、
すごく空虚だが、でも必死な、言葉の応酬がなされた所。
ほんとうの絶望の淵での闘いって
案外こんな感じなんじゃないか?
欲しいのは言葉ではなくて、
自分のために真剣になってくれる人がいる、
明るい方へ、温かい方へ、連れて行こうとしてくれる人がいる、
ということなんだと思う。

この映画のなかで繰り広げられることは、
多分これでもかなりマイルドな描写にとどまっていたと思う。
本当の依存症の地獄は、きっと、こんなものではないはずだ。
だから、わたしは、この映画の全部が「リアルだった」
と思っているわけではない。
でも、あの終盤の、自殺するしないのシーンは
わたしは結構、納得がいった。
リアルな所を描き出そうとしているな、と思った。
案外こんなもんだろうな、というのがわかる気がした。