BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『クレイジーホース パリ 夜の宝石たち』-201117。

原題:Crazy Horse
フレデリック・ワイズマン 監督
2012年、仏・米合作

f:id:york8188:20201120155154j:plain

www.youtube.com

この前観た、
パリ・オペラ座のすべて』というドキュメンタリー映画
とても良かった気がしたので、
同じ監督の別の作品を探して観てみた。

オペラ座と同じパリにある
老舗キャバレー「クレイジーホース」に密着した
ドキュメンタリー映画だった。
イヤー これはすごく良かった。
女性たちがとてもきれいで、
ショーアップのセンスも抜群で、女のわたしもため息でた。
多分ナイトクラブのショーで
ここまでやる所はまずほとんどないと思う。
クレイジーホース・パリは多分、
孤高にして最高峰、という感じの存在なのではないかと
想像する。
パフォーマンスの内容やダンスを考える人も、
衣装デザイナーも、支配人も、
みんな良い歳の大人たちだった。
余興とかそういうのではなくアートを
やろうとしている人たちなんだろうなと思う。

パリ・オペラ座のすべて』もそうだったが、
ナレーションとかはまったく入らず、
とにかくただ淡々と、ゆっくりと、
撮影の対象となる人びとやできごとを
撮っていくというスタイルだった。
メッセージやら言いたいことを押し付けるのではなく、
これという「ストーリー」が用意されているわけでもない。
ただ見るだけだ。
だけど、観ていてとてもおもしろい映画だった。 

ダンサーの女の子たちが、
ほぼ全裸で楽屋をあっちこっち歩き回る姿が
映像の加工もなしにのっけからバンバン出てきて
最初はびっくりした。

楽屋で、みんなでバレエのNG集か何かの映像を観て
「床が滑るのね」
「重くてリフトできないのね」
とか言ってキャイキャイ笑ってる女の子たちが
とっても可愛かった。

「革新的なステージを創造する時間を確保し
  英気を養うためには 休暇が必要なので
 しばらく店を休業したい」
と芸術監督がムチャを言い出し
支配人の女性が 株主がうんと言わない、と
あわてているのがおもしろかった。

ダンサーの衣装を作っているのは
けっこう年配・・・70代くらい? の小柄な女性だった。
セーラーカラーとかの、可愛い洋服を着て、
ブロンドの髪の毛をラフなアップにしていて、
いかにもおしゃれなフランスのマダムって感じの
可愛らしい女性だった。
彼女が芸術監督に苦言を呈する所をとらえた場面があった。
芸術監督が舞台のプランを気まぐれにコロコロ変えて、
2人で踊るはずだったのに当日急に1人にすると言ったり、
振り付けを変えたりし、
しかも事前にちゃんと会議を行わずに
もうどうしようもないというタイミングで急に変えるので、
衣装や照明などのバックステージが非常に混乱するという。
「女の子たちの身にもなってあげて。
 見ず知らずの男たちの前で大開脚するのよ。
 彼女たちにまともな衣装くらい作ってあげたいわ。
 でも忙しすぎて本来の仕事に集中できないのよ」
「会議を毎週●回必ずやる、という約束は
どこにいったの? 今月はまだ1回もやってないわ」
ちっちゃくてキュートなマダムが
そんなことをビシバシ言うのがなんか可愛らしかった。
芸術監督よりもこのデザイナーの方が明らかに年長で
「この前、プランを急に変えたのは確かに僕の責任だよ
 あれは悪かったと思ってるよ。素直に謝るよ・・・」
さすがの芸術監督もたじたじで笑えた。

女性ダンサーたちが割と、
あのダンスは好きじゃないとか、あれはやりたくないとか
そういうことをハッキリ言うのが観ていておもしろかった。
でも、ある女性が
「実はわたしあの振り付け好きじゃないの」
と言った時、
コーチが
「好きじゃない割にベストを尽くしてて、
 ステージでは完璧だったじゃないか。さすがだよ」
とか上手になだめていて、うまいなあと思った。

新しいダンサーのオーディションの風景が
観られたのも良かった。
応募者のどういうところを重点的に見ているのか、
採用基準がなんとなくわかって興味深かった。