BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『悪霊島』-201030。

篠田正浩 監督
清水邦夫 脚本
横溝正史 原作 
1981年、日本

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良い予告動画が見つけられなかった。

この画像、劇場公開時のパンフレットの表紙なのだが、
静謐ながらちょっとミステリアスな感じがあって
無駄な装飾がなくてとっても良いと思う。
岸本加世子がかわいらしい・・・
(ちなみにこのパンフレットの画像のようなシーンは
 映画の中にはなかった)

ビートルズの音楽が、挿入歌として何曲か使われていた。
別の歌手のカバーバージョンだった。
wikiでちょっと調べたところによると、
公開当時と、最初のテレビ放送と、
最初に発売されたビデオソフトの時には、
ビートルズのオリジナルバージョンが
使われていたのだそうだ。
でも、その後、楽曲の使用権の期限が切れた関係で、
以降はテレビ放送や新たなソフト発売がされなくなり、
この映画は、ずっと日の目を見ることがなかったのだという。
2004年にDVDが出た時には、ビートルズの挿入歌の所は、
別の歌手によるカバー版に変更されていて、
以後は、テレビ放送の時も、そのカバーバージョンが
使われるようになったらしい。
今回わたしが観たのも、カバー版ということのようだ。

多分、ビートルズの熱心なファンの人たちにとっては、
この、オリジナル版なのか、カバー版なのか、という所が
重大な問題になるんだろうと思う。
劇場公開のあった80年代に東芝EMIが一度ビデオを発売していて、
それはビートルズオリジナルバージョンだったはずなので、
多分、熱心なファンは、一生を賭けてもそのビデオソフトを
探し求めるんだろう(入手がめちゃくちゃ難しそう・・・)。
わたしはビートルズの特別なファンじゃないので
そんなに気にならなかった。
むしろ、カバー版の歌、とても良かった。

この篠田正浩監督版『悪霊島』は、
金田一耕助シリーズの実写映画化作品の一本、
というよりは、
金田一耕助シリーズという「基本フォーマット」で遊んだ、
トリビュート・ムービーと言った方が、近い気がした。
このふたつは、意味としてかぶる部分もあるかもしれないが、
やっぱり、全然違うと思う。

トリビュート、ということであれば
他の映画監督で、もっともっといろいろな金田一耕助
観てみたいような気もする。
「実写映画化作品」としては、やっぱり、
市川崑石坂浩二版、
ついで市川崑豊川悦司版、
が 自分のなかでは地位として盤石なのだが
トリビュート、って最初から言ってくれるのであれば、
どんな金田一耕助もおもしろがって観る気満々だ。

この映画は、
岩下志麻の名演が光りまくっているし、
岸本加世子はかわいらしいし、
孤島の古い神社で起こる忌まわしい連続殺人
・・・という所はやっぱり横溝正史、って感じで
観ていておもしろいところもたくさんあった。
陰惨ながら妙にセクシーな暴力描写には
篠田正浩らしさみたいなものを感じた。

ある人物がやった殺人を、他の人物が見ていて、
あとから人知れず幇助したり、
現場に手を加えたりしてかばう、
という所は、
金田一耕助シリーズの他の作品にも
通じる所があると感じた。

映画としては、話にムリがありすぎた。
(まあそもそも原作もたいてい
ムリがあると言えばあるのだが・・・)
勢いと、センセーショナルな絵面だけで
強引に押し通してしまっていた。
わたしは実を言うと『悪霊島』は
原作小説を読んでいないので
あまりえらそうなことは言えないのだが、
多分、映画化にあたって、
話を簡略化しすぎたのではないかと思う。
そんなにうまくいくかなあ・・・と思ったり、
矛盾を感じたり、疑問を感じたりして、
観ている間じゅう忙しく、
話に集中できなかった。
出てくるキャラクターたちはみんな、
キャラクターとしてはじゅうぶん個性的で
おもしろい人たちばかりだったと思うのだが、
内面の描き込みが全然されていないので、
「非常に風変わりなルックスの人形を見た」
というのに近い感じの、薄い印象しか残らず、
「ひとりの人物としておもしろかった」
という気持ちにはなれなかった。

刑部巴なんかはものすごく興味深い人物のはずなのだが。

それにしても
三津木の親は結局誰ってことになったんだろう(笑)

小野不由美の『黒祠の島』は
悪霊島』へのオマージュが
かなりあるんだろうなと思ったりした。