BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』-201021。

原題:Pina
ヴィム・ヴェンダース 監督・脚本
2011年、独・仏・英合作

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2009年に亡くなったドイツの振付家ピナ・バウシュを扱った
ドキュメンタリー映画だった。
ピナ・バウシュが率いたヴッパタール舞踊団のパフォーマンスを
観ることができる。

春の祭典』や『カフェ・ミュラー』のパフォーマンスは
すごく良かった。
言葉では形容できない。体に響く感じのパフォーマンスだった。

男女が感情に任せてきつく抱きしめあっているのを、
そばで見ている男がおせっかいを焼いてやめさせて、
男女の姿勢や腕の角度を手早く決めていき、
しかるべき手順で男性に女性を「お姫さまだっこ」させる。
だが男性の方が、抱いた女性をすぐに床に落っことす。
ふたりはまた向き合って、ひしと抱き合う。
立ち去りかけていた監視役の男が駆け戻ってきて、
再び男女の体勢をいじり「お姫さまだっこ」させる。
男性が腕に抱いた女性をすぐに床に落っことす。
男があわてて戻ってきて最初からやり直し・・・
これを何度も何度も繰り返し、速度も上がっていく。
(スゴイ重労働の振り付けだなと思った)
男女はやがて、力ずくでやらされていたはずの
「お姫さまだっこ」を、みずから自分たちの動作の
ルーティンに組み込んでいく。
監視役の男が来なくなってからも、自分たちで
「お姫さまだっこ」のポジションを取るようになる。
・・・という、一連の不思議なパフォーマンスも
なんか観入ってしまうものがあった。

男性の踊り手が、
小型犬にキャンキャンほえたてられながら
おどけたタップダンスを踊る所も良かった。

ヴィム・ヴェンダース監督は
ピナ・バウシュと親交があったそうで
元もとはバウシュの生前から
彼女のドキュメンタリーを撮り始めていたという。
だが、バウシュの急死を受けて監督は失意に沈み、
撮影は断絶してしまった。
でも、バウシュが芸術監督をつとめていた
ヴッパタール舞踊団のメンバーたちに勇気づけられ
再び撮影に着手、作品を完成させた、ということだそうだ。

確かにこの作品は、
どこかしら寂しくて、静かで、でも優しくて、
故人への温かな思いに満ち満ちていたように思う。