BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『鏡の中にある如く』-200713。

原題:Såsom i en spegel 
イングマール・ベルイマン 監督・脚本
1961年、スウェーデン

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3~4日前、夜中に観た。
昔の映画はたとえアクションものや戦争ものでも
総じてなんとなく雰囲気がのんきでテンポも遅いので
この映画をぼーっと観てそのまま眠っちゃおう、
と思ってたのだが まったくムリだった(笑) 
むしろ考え過ぎて眠れなくなった(笑)

家族と向き合うことから逃げている作家の父親、
精神疾患をわずらう長女、
彼女の17歳の弟、
長女の夫・・・ の4人が
島の別荘で過ごすひとときの物語だった。

長女は発症していったん病院に入ったのだが今は退院して
状態的にも安定し、弟や夫と楽しく過ごしている。
しかし彼女の夫は、自身も医師であることから
妻の病のことを良く知っており、
再発を案じて、人知れず悩んでいる。

長女も彼女の弟も、それぞれに、
父親に心の支えを求めていたと思うのだが
彼らの父親はそれに応えることができない。
応えることができない父親の姿を描くことで
逆に「こういう時 親はどうあるべきか」を
言おうとしていた所はあったのかなと思う。

壊れていく長女を演じた女優さんの演技が
それはそれは素晴らしくて
夜中に観てて正直ちょっとゾッとしてしまった。

長女は自分の心と体が 悪魔に侵されていくという
感覚におびえていて(病気による感覚なのだろうが)、
仲良しの弟にすがりつくことで恐怖から逃れようとする。
だがそのことが一層の事態の混乱を招き、
けっきょく弟の心も深く傷付くことになった。
彼女が、その危機から救われるためには、
心も肉体ももはや邪魔だったのだと思う。
誰にも信じてもらえない、
誰も私を助けることはできない、という
彼女の、多分「孤独」だと思うのだが
その気持ちはそれほどまでに烈しいのだと思った。

もうじきあの扉のむこうから神さまがお見えになる、
と言って 
物置みたいな所に通じる半開きのドアを 
目をきらきらさせて見つめる姿とか
「お父さんが話してくれた!」と歓喜する弟の姿とか 
もう二度と死ぬまで忘れられないだろうなと
思うくらい衝撃的だった。

ギリギリの所まで追い詰められた
人間の心がすることを
徹底的にクールに見つめていて
この映画作った人、いったい何者なんだ、
と思うくらい 物凄いものがあった。