BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『エリザベス ゴールデン・エイジ』-200610。

原題:Elizabeth: The Golden Age
シェカール・カプール監督
2007年
英・米

f:id:york8188:20200611011736j:plain

www.youtube.com


あくびがでるほどつまらなかった。

あまりにもいろいろな要素を短時間のうちに
ザツに詰め込みすぎていて
結局何一つ まともに描けていないという印象を受けた。

各国のやんごとなき殿方から求婚があり
夫候補の肖像画が山ほど届く、というシーンで
ロシアのイヴァン雷帝(求婚したのは事実みたいだが)
の 良く知られた「あの肖像画」が出てきたときは
おいマジか と思った(笑)

ウォルター・ローリーがエリザベスの侍女に
なびくまでの流れは 
あっさりしすぎていて つまらなかった。
どうせそうなることはわかりきっているにしても
そこまでの流れをクッキリと描き出して欲しかった。
「便宜を図ってもらうためにエリザベスに接近した。
 最初は俺も恋愛ごっこがまんざらでもなかった。
 でも相手が意外にも本気になっちゃって面倒くさい。
 最近は俺をいろいろ束縛してくるしつくづくイヤだ。
 彼女に会いにいかなくちゃいけないのがストレスだ。
 でも彼女のお付きの子は可愛くて癒し系でホッとする。
 それで つい なびいちゃった」。
侍女の気持ちのうつりかわりも全然描いていなかった。
彼女はエリザベスと固い信頼関係を築いていた。
親友とも姉妹とも言えるほどの心のつながりがあった。
侍女自身、エリザベスを本当に慕っていた。
なのに裏で女王ご執心の男と通じている。
そのことによる侍女自身の苦悩とかそういうのが
全然描かれてないのが なんとも・・・

アルマダの海戦の所 映像が安っぽく、がっかりした。
あの海戦のシーンにおいて
ウォルター・ローリーが、何かをしようとしていた。
だが、いったい何がしたかったのか
わたしがあまりマジメに観ていなかったせいもあるのだが
正直よくわかんなかった。


エリザベスがスペインとの開戦を決意する場面は
まあまあそれなりに良かった。
「わたくしにも嵐を起こすことはできます!」

ダンスの練習の場面で
かつての恋に思いをはせるシーンは
(やや露骨で直接的すぎる表現ではあったけれども)
まあまあそれなりに良かった。
エリザベスみたいな 難しい立場の人は特に
ああいう切ない気持ちになるだろうな、ということは
それなりに理解できたし。
でもエリザベスとロバート・ダドリーの関係は
(年ふるにつれいわゆる『恋愛関係』では
 なくなっていったかもしれないが、)
ダドリーが亡くなるまでずっと続いていたはずで、
エリザベスにとって ダドリーは生涯を通じて
特別な存在だった、という風にわたしは理解している。
なのに この映画では 
ふたりの関係がすっかり過去のものになっている、
みたいな描かれ方をしていて 
やや解せない所ではあった。

航海に出たがっているウォルター・ローリーを
自分のそばにいて欲しいがために
むりやり近衛長官に任命してしまうシーンも
エリザベスの心の 強い部分と弱い部分が
不安定にちらちらと表情のうえで明滅して
まあまあ良かったような気がする。
エリザベスがウォルター・ローリーに
魅かれていく流れを
もっと時間をとってしっかり描いてくれていたら
もっと良いシーンになったんじゃないかなと思う。

主演のケイト・ブランシェットはきれいだった。

サマンサ・モートンが演じた
メアリー・スチュアートも良かった。
ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(2018年)の
メアリー・スチュアートシアーシャ・ローナン も
あれはあれで 全然、良かったのだが。
けど、わたしのなかのメアリー・スチュアート像には
サマンサ・モートンの方がやや近いような気がした。

ウォルシンガム/ジェフリー・ラッシュ
名優だなあと思った。

スペインはフェリペ2世の治世なので
彼の娘のイザベル・クララ・エウヘニア
と思われる少女が
序盤と終盤で、ちょっとだけ登場していた。
だがそれによって何を表現したかったのか わからない。
まだ年齢的にほんの少女であり セリフもないのに
なぜわざわざ登場させたのかという疑問。
成長したイザベルが 父の仇! とかいって
エリザベスに宣戦布告した・・・みたいな史実もない。

ただ 
エリザベスは生涯結婚しなかった。
それに対し、
イザベルは結婚し夫とともにネーデルラントを治めたはずだ。
エリザベスの治世がイングランドの黄金時代と言われたように
イザベルと夫の共同統治時代のネーデルラント
めざましい経済発展をとげ、大変栄えたと聞いている。
つまり
エリザベスはひとりで一時代を築き上げたけど
イザベルは夫とともに自分の仕事をなしとげた。
幼いイザベルをちらっと登場させたのには
エリザベスと、未来のイザベルを
軽く対比させる意図があったのかもしれない。
(でもフェリペ2世の娘のイザベルなんて
 日本では 高校で世界史をとっていたとしても
 興味がないと知らない人物じゃないだろうか。
 対比されてもわかんないと思う)
それに確か
イザベルの夫は リスボンの戦いで
イングランドをボコボコにした人じゃなかったっけ(笑)
イングランドアルマダの海戦には勝ったけど
そののちずっと断続的に起こるスペインとの戦いでは
いずれもめっちゃくちゃ負けるんだったな。


エディ・レッドメインが エリザベス暗殺計画の
鉄砲玉役でちょっとだけ出ていて驚いた。
エディ・レッドメインにもこういう時代が
あったんだね。