BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

大友克洋さんの映画を観る-200403。

大友克洋さんが監督や脚本を担当した映画を
集中的に観ている。
今週は
迷宮物語』(1987年、オムニバス作品)
AKIRA』(1988年)
老人Z』(1991年)
『MEMORIES』(1995年、オムニバス作品)
メトロポリス』(2001年)
を観てみた。
AKIRA』は前から何度か観ているが
他のものは全部初めてだった。

これらはみんなU-NEXTで観ることができた。
大友克洋」で検索して出てきたものを
「古い順」で並べ替えて上から観て行けば
作品が発表された年順に追いかけられるので
とても便利だなと思っている。
大友克洋さんの作品をすべてカバーできるわけではないけど
1本も観られないよりはずっと良いと思うし
特に『迷宮物語』は、監督を担当した作品としては
最初期のものらしいので 観られて良かった。

『MEMORIES』の『大砲の街』はすごく好きだった。
ひとつの街が、他所を砲撃するためだけに存在していて
都市機能も、市民の生活も、すべてが
「砲撃」を中心に回っている、という設定がおもしろかった。
また、どこを砲撃しているのか、何のための砲撃なのか
実の所 良くわからない(「大人になったらわかる」)
というのも想像がふくらむ感じだった。
設定がおもしろかった、と絵空事のように言ったけど
でもこういう
「なんだかよくわからないが、ずっと前から続いていることだ」
という感じは、 
「砲撃」を「戦争」と置き換えて考えれば
わたしたち人類が 経験済みのことなのだと思う。
一般民衆は 戦争というものを、案外そういう感じに
とらえていたのかもしれないと。

メトロポリス』は、
手塚治虫の同名のマンガを原作としているとのことで、
大友克洋さんは、脚本を担当している。
物語は、けっこう、
こういう話は他でいつか読んだことがあるような
どこかで観たことがあるような感じではあった。
手塚治虫が草分け、ということなのかもしれない)
また、テンポがいやにゆったりとしていて、眠くなるのと
音楽が場面にマッチしていないと感じた所が多かったのが
やや気になった。
キャラクターの心の動きの描写も甘かった。
こんなにゆったりとしたテンポで話を進めることができるなら
その分、もう少し時間を割いて、キャラクターの心の描写を
こまやかにすれば良かったのに。
でも、声の演技とかは品があって良かったと思うし、
キャラクターはかわいらしかったし、
映像はとびきり繊細で美しかった。
話の流れに、常に最低限の納得感が確保されていた所も
わたしとしては気に入った。
伏線がほうっておかれないのも良かったし。
ところで、わたしたちは、日常の言葉遣いにおいて、
「祭日」と「祝日」は、意味の違いを厳密に意識して
使い分けてはいないと思うんだけど、
この『メトロポリス』のなかでも、人びとは
「祭日」と「祝日」は適当に好きな方を
遣っているらしかった。
ケンイチたちが、人探しの仕事でメトロポリスに来た時、
街は、「ジグラット」という建造物の完成を記念した
特別連休の、真っ最中ということになっていた。
そのことをケンイチたちに説明する人が、
「祝日が1週間も続くんです」、と「祝日」と言っていた。
一方で、話が進んで、デモ行進する市民たちに対して
「祭日中のデモは禁止されています」という
アナウンスがあった。ここでは「祭日」を遣っている。
なんかこういうあいまいな所がある感じが
リアルに思えて良かった。
そんな所、多分作り手は気にしてなかったと思うのだが。


ジグラット東京都庁のビルか
世界貿易センタービルに ちょっと似てるな~とか
思ってしまった。
ところで、ジグラットという建造物があることや
当局肝いりの自警団に「マルドゥーク」と
名付けていることからも推察できるように
メトロポリス』の物語の世界観には
わたしたちの現実世界の、バベルの塔の伝説が
そのまま適用されている。
つまり物語の登場人物たちが
バベルの塔の伝説、というものが
あることをちゃんと知っているのだ。
でも、だったら彼らは、バベルの塔が、
伝説のなかで最後どうなったか知っているはずなのに
新しく作った建物に「ジグラット」と名付けるなんて
そんな縁起でもないことするかね、と 
ちょっと疑問には思った。


まだU-NEXTで観られる 大友克洋作品があるので
全部押さえたいと思っている。