BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『チョコレート・ファイター』-200402。

アトミック・ブロンド』(2017年)を観て以来
女性が活躍するマーシャルアーツものの映画が
観たくなって、いろいろ観てみている。
元もと「アクション映画」で括られる映画が
大好きなんだけど、
中でも体技がカッコイイものが良いと思っている。
ワイヤーアクションや特殊映像効果に頼り過ぎずに、
本物の人間の体の動きを活かしたものが良い。

今回はそんなわけでこれらにたどり着いた。

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チョコレート・ファイター
原題:ช็อคโกแลต(読めない・・・)
英題:Chocolate
プラッチャヤー・ピンゲーオ監督
2008年、タイ

3日間、繰り返し繰り返し、
ゲシュタルト崩壊のような感覚に襲われたほど、観た。
それだけの良さがあった。

生まれつきハンディキャップを抱えているヒロイン、
という設定が、とても効果的だった。
ずいぶん思い切った設定を持ってきたな~とは思った。
でも、この映画の場合に限って言えば、
これで良かった、とはっきり思うことができた。
ヒロインは、普段は、世界とうまく折り合えていない。
この子、お母さんや周りの助けがなくなったら、
生きていけるのかな・・・と観ていて心配になる。
だけどそんな形勢が、敵と戦う時になると、一変する。
驚異的な身体能力を初めて発揮する製氷場のバトルシーン、
わたし、観てて、体がふるえた。
彼女と世界の関係が、瞬時に、完璧な調和をなして、
ヒロインが、その場をすっかり掌握してしまうのだ。
この落差の表現がすごい。
普段はちょっとぼーっとした子なんだけど・・・、とか
そういうなまぬるいキャラ設定では、
ここまでの落差は絶対に出すことができない。
世界との関係をうまく結べていないように見える人が
その手に世界を取り戻す、形勢をひっくりかえす、
っていう劇的な逆転が大事なのだ。

ジージャーちゃん、きれい。
スラっと細くて長い脚。
まだ、大人になりきっていないのは明らかなのに、
でも、不思議に充実した体格。
ぴしっとのびた背筋。
技を繰り出して体勢を戻した時の姿勢の様式美。
一朝一夕のものではないのが一目でわかる。
この映画を作るために、
元もとテコンドーの強化選手だったジージャーちゃんを
4年間かけて一から育て上げたと聞いた。
作品の成り立ちからして普通じゃないと思う。
ジージャーちゃんの眼を見れば、わかる。
本気だ。この映画は。価値は、そこにこそある。

90分の映画のなかで、主たるバトルシークエンスが
5つあったが、それぞれに特色があり、
飽きさせない工夫がされていて、すごく楽しめた。
製氷場は、足技+「ブルース・リー」。
倉庫会社は、手近な物を活用して闘う「ジャッキー・チェン」。
肉加工場は、刃物を持った敵にどう対抗するかが見られる。
クライマックスのマフィアのアジトでは、
ヒロインと同じ属性(ハンディキャップ)の強敵が出現、
それに加えて、日本のヤクザ映画風の、刀を使った大乱闘。
最後は、高さ十数メートルはありそうな建物の外壁を伝って
上下左右に行き来しながら敵を追い詰めていく・・・という
めちゃくちゃなバトルを、スタントなしで見せてくれる。

わたしは、最初の製氷場の所と、肉加工場の所がすき。
肉加工場の所なんか、いったいどこからこういう人を
連れてくるのかな・・・と思うような
日本には絶対いない感じの顔つきのモブキャラとかいて、
ああ、外国の映画観てる、って気持ちになれるのも楽しい。

エンディングで、ジャッキー・チェンの映画でおなじみの
NGテイクシーンが流されていたけど、
天井の低いフィールドでの戦闘中に、頭上の鉄のパイプに
思いっきり頭をぶつけるヒロインの姿、
(すごくヤバイぶつけ方してた・・・)
かかと落としやヒザ蹴りが側頭部や首にもろに入って
死んだように倒れ込む敵役の役者、
首をがちがちに固定されて入院している役者、
拭いても拭いても出血が止まらない役者・・・
ああ・・・これ「NG」というか・・・
なんというか・・・普通に「出しちゃダメ」なやつ・・・
っていうメイキング映像が、次々と映し出されて
息をのんでしまった。

まあ、ストーリーや設定の部分では、いろいろと
なんだそれ!!! って思わされる所もあった。
テンポ感が奇妙で、やや、のっぺりしてるし。
観慣れた「ハリウッド映画」ではないので当然だが。
でもこのヘンにゆったりした感じが
「アクション映画なのに癒やし系」みたいな所があって
個人的にはきらいじゃないような気もする・・・

また、ヒロインの驚異的な潜在能力があきらかになった時、
周りの誰も驚かないで、すんなり受け止めたのが不思議。
「あの子にこんなすごい力があったのか!」ってのがない。
全然、誰も、驚いていなかった。

さっきまであおむけで寝ていたのに
今はなぜかうつぶせ、とか
前後の繋ぎが明らかにおかしい所もちらほら。

これ言っちゃぁおしまいかもしれないんだけど
そのへんの市場や会社の普通の労働者が
なんでみんな 武道の心得があるんだか
(誰も彼もがすごくキビキビと良く動く・・・)
そもそもよくわかんないし・・・(笑)


サブキャラの扱いがそっけなさすぎるのも気になった。
例えば、ヒロインの幼なじみのムン少年が、
最終的にどうなったのかわからずじまいだ。
ヒロインが戦う理由そのものであるお母さんの扱いも
最後は拍子抜けするほどあっさり。
ただ、これは、文化や人生観の違いなのかも。

マフィアのボスの呼び名が「ナンバー8」なのも
意味がわかんないしな~。「8代目」ってことかな?

だが、こういう細かいことはハッキリ言ってどうでも良い。
ヒロインの100%生身の超絶アクションが楽しめる、
それで十分だし、それがすべてだと思う。

また観たい~
DVDを買おうかな~。