BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『チャーリーズ・エンジェル』-200312。

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www.youtube.com

原題:Charlie's Angels
エリザベス・バンクス監督
2019年、米国

このところ、観る映画観る映画
ハイレベルすぎて、大好きすぎて
何か、こんなことばっかりやっていたら
頭がおかしくなるんじゃないかと思う。
ここは、愛すべき地雷系の映画を2~3本も観て、
ちょっと、ほっとしたい時期だ。
実を言うと先日の『初恋』(三池崇史監督)も
そのつもりで観た映画だったんだけど
目論見はやや外れた感があった・・・。
イヤ、どうかな もうちょっと・・・
あと1日か2日もしたら
やっぱり「(逆に)当たり」だったかもと
評価を改めるかもしれないが。
三池崇史監督の映画は わたしにとって
そういう なんかこう、いろんな意味で
遅効性の所あるからな・・・

だが『チャーリーズ・エンジェル』は狙いどおり。

実にイイ~~所に的確に投げ込んできた。

これはヒドイwwwwww

優秀な駄作。

まーしかし、あくびしながら
ニヤニヤして観ていられるような
害のない駄作、とは言えなかった。
あえて 好き嫌いでいうと
大嫌いだ。 わたしこの映画。

なんかこう 
出来がヒドイとしか思えないうえに
鼻持ちならねえんだわな、この作品。

全編を徹底的に貫通する「フェミ道」感は 
まあ良いんだけど、
ヒロインのひとりであるサビーナに、のっけから露骨に、
「フェミ」メッセージを言わせ過ぎだ。
(「女はなんでもできるのよ」うんぬん)
映画を通して何らかのメッセージを伝えたいという意図がある時に
それをセリフで表現しても、別に良いとは思うけど、
もっとさりげなく、うまく、物語のなかに自然にとけこむ形で
入れてくれないと、ダサく感じられてしまう。
もっと言うと、自分が興味もないカルト集団の「布教」映画を
みせられているような気持ちになって、非常にイヤなものだ。
サビーナに言わせるのは良い。だが、
ああいう露骨なのはクソカッコ悪い。

それに輪をかけて、
映画のありかたをダサいものにしてしまったのは、
オープニングに次いで唐突に放り込まれた
ストーリーとまったく無関係のイメージカットだ。
「世界中の女の子たちが、生き生きと
 アクティブに暮らしを楽しんでいる」
という感じの。
受け取り方は人それぞれだろうけど、
わたしは あれで、かえって気持ちが冷えた。
アメリカのクライムアクション系ドラマで
なんだったっけな、実家でわたしの兄も観ていたが
ロサンゼルスとかハワイの警察のドラマで・・・
暑そうなビーチ、水着の美女、カクテル、
ヨットとサーファー・・・のイメージカットが
オープニングにいつも入ってた。
あれも、ストーリーとは全然関係ないものだけど、
あれは普通に「サービス」でしょうし、
普通に「ムードづくり」でしょ。
あれは良いでしょ。
けど『チャーリーズ・エンジェル』の、
あのサビーナのクソダサいセリフや、
女の子たちのキャッキャウフフカットは、
フェミ道のごり押しとしか思えない。

「女の子は男がいなくても自分の力で
 人生を切り開けるのよ!」

だってこの映画全体を観ていれば、
そういうことを言うための映画なんだと、
ハッキリと感じ取れるんだもん。

フェミニズムにおける
ものの言い方ってのは
正直、たまに鼻に付くのだが・・・
女性の解放、的なことを謳っておきながら
それはそれで結局 別の新しいタコツボに
自分から入っていっちゃってませんかねって
気がするんだよね
「旧来の家父長制や男性支配型社会からの
 脱却を宣言する女性」
という新たな鋳型に女性を押し込んでしまってる。
私は自由な女性です、と
高らかに宣言し体現する女性でなければ、女性じゃない
という感じに、なっちゃってないか。

実際、『チャーリーズ・エンジェル』において、
新たなエンジェルとなるエレーナは、
せっかく工科大学を首席で出たほどの頭脳派なのに、
爆破物処理の講座や戦闘訓練も徹底的に受けさせられ、
結局武闘派スパイに仕立て上げられていくのだ。
まあ、(こんなこと真剣に語ってもしょうがないかもだけど)
確かに、スパイなんかやる人は、たとえ自分一人になったって
どうにか生きて帰れるように、いろんな訓練を積むんだろう。
いつどんな不測の事態が起こるかわからないのだから。
エレーナだって、実地ではデスクにいればいいかもだけど、
いつもジェーンとサビーナが守ってくれるとは限らない以上
自分も闘えるようにしなくちゃいけないんだろう。
だがそういうことじゃなくて、
この映画の言いたいことは何なんだって話なんだよね。
本当は、人それぞれ、さまざまな
生き方、考え方、人柄、得意分野、美があって
みんな受け入れられるべきではないのかな。
エレーナにはエレーナの得意なことがあるだろう。
なのにそれを活かした頭脳派スパイになりました、という
エピローグになぜしなかった?
結局 自分でバトルができて、フィジカルで男に負けない
スポーティーな女こそ、カッコイイ女! ってことなのか。
この映画が標榜しようとしているフェミニズムとは
そういうことなのか。
だとすれば底が浅いとしか言いようがないだろう。

ほんの少しも 内省がない・・・
自分のしていることがおかしくないか、
間違った方向に行っていないか、
もっと考えるべきことがあるんじゃないかと
ある意味で「迷う」ことを忘れてしまった状態で、
自由の旗手を持って任じているとすれば、
それはクソダサい。危険だし、罪悪だ。

まあ別に、良いんだけど、この映画の場合は、
ガールズエンパワーメントを企図したにしても
フェミ道の伝道をしたいにしても、
もっと他にやりようがあったし、
この仕上がりでは、
監督の考えの浅さを露呈しただけに
終わった、と言わざるを得ないと思う。

あと、はっきり言っておきたいんだが、
おステキなフェミメッセージを
込めたつもりかどうか知らないけど、
映画は何よりもまず、おもしろくないと。
でなくちゃお話になんないから。

その意味で、ハッキリ言ってこの映画は
つまんないんだよな~。

だが、ここで先に言っておきたいんだけど、
チャーリーズ・エンジェル』は、
エンジェルたち、主要3キャラクターは
すごく良かった。キャラが立ってた。

ジェーン(エラ・バリンスカ)は
背が高く、スタイル抜群で手足も長くて、
とにかく全身、見れば見るほどカッコイイ。
きまじめで、ちょっと自信がない性格なのも
人間くさくて、可愛らしいのだ。

サビーナ(クリステン・スチュワート)は
パンク系のファッションが良く似合っていたし、
元気いっぱいで小回りが利き、やることがハデ。
彼女が出てくるだけでわくわくした。

エレーナ(ナオミ・スコット)は
品のある顔だちで ビックリした時の表情とかを
思いきってやってくれるのが、喜劇向きで良い。
まだ正式にエンジェルになっていない役柄だったので
カタギらしくトロい感じをうまく出していたと思う。

だが せっかくこんなにキャラクターが魅力的なのに
物語が退屈なので 一言で言って 
観るのがしんどかった。

いろいろあるけど、特に気になって、
しかも「イヤだなあ」と思ったことがある。それは、
エレーナが、エンジェルに志願することに
まったく抵抗がなかったことだった。
今回のミッションでは、罪なき人が死んだかもしれなかった。
エレーナの職場のセキュリティの男性で、
エレーナも良く知っている人だった。
この物語は、ある新エネルギー装置の奪還をめぐって
繰り広げられるミッションを描くものだ。
装置を開発したのは、エレーナだ。
そのミッションを遂行しようとするなかで、人が死んだ。
「私が作ったもののせいで、あの人が」とか
「もっと早く何がなんでも私が手を打っていれば」とか
エレーナが混乱しても不思議じゃない状況だった。
あの人が倒れて、けいれんするのを、目の前で見たのだから。
なのに彼女には、終始、何の葛藤もなかった。
エンジェルは時と場合によっては人を殺す。
自分の命も、常時、危険にさらされる。
ジェーンとサビーナのミッションを間近で見る中で、
エレーナはスパイの厳しくも残酷な現実を知ったはずだ。
なのに彼女は、恐れることもためらうこともなく、
簡単に エンジェルになりたい、と言った。
謎すぎるし、なんだかけったくそが悪い。

彼女は、
あのセキュリティの男性に恨みでもあったのか?
それとも、これまでによほど、男たちにふみつけにされて
恨みをつのらせてきたというのだろうか?
罪なき人が傷付いても、見知らぬ人が死んでも、
それが男だったら、ま・いっか、とでも思うほど?
エレーナの過去にいったい何があったと言うんだ。
怖いんですけど!!!

この映画で描かれる男たちってのは、確かに
だいたい一様にマヌケでバカで女をみくびっていて
ムカつくやつらが多かったけど
女を上げて男を下げることが
フェミ道の極意なんですかね?
この物語の中で描かれていたのは、ただの
「男性嫌悪」じゃない?

わたしは、終盤で、男どもが全員倒れ込み
そのあとに女たちだけが立っているあのシーンを観た時
ほんとう こういうたとえはどうかと思うのだが
遊郭みたいなものをイメージしてしまった・・・

採石場でも人が死にまくっているし。

競馬場で、アラブの王族みたいな人が来た時
ジェーンが発砲したのも意味がわからんし
あの時撃たれた人も、ミッションとは何の
関係もなかった人だよな・・・とばっちりだ。

もっとこう、カラっとしてて、おバカなのが、
むしろ売りのシリーズだったと思うんだけど。
チャーリーズ・エンジェル』って。
でも、この映画は、
チャーリーズ・エンジェル』なのに、
そういう、愉快なものを心に残してこず、
代わりに、ムナクソ悪いものをつめこんできた。
それがイヤだった。

人が死ぬんだよな~。
それが気になるんだよとにかく。
しかも全然美しくない流れと、やり口で。
全然必要がない所で。
というか麻酔銃を使っているとか言っておきながら
なんであんなに人が死にまくるんだ。
そして死ぬのは全部、男性だ。
エンジェルはもっとおバカでカッコイイやり方で
ばったばったと悪者をやっつけるのが
良いところだと思うがね。
銃をあんなに簡単に撃つのもどうかと思う。
なんか、終始、エンジェルっぽくないんだよな。
っぽくなくても良いんだけど、
旧来のエンジェルに代わる 新しいエンジェル像みたいなものを
打ち出してみせようという 心意気も感じられない。

そこは おかしいと思った。

エンジェルの見せ場には、斬新さがない。
エレーナの職場に潜り込む時の
セキュリティの突破方法も
単にその会社の社員のIDカードを盗んだだけ。
もっとイイ方法あるだろ~。
エンジェルならではの、おバカでオシャレなやつが~。
IDカードを盗むんじゃなく
そのカードの持ち主に全身変装して見せるくらいのことは
あっても良いだろ。
バトルシーンも、
他のスパイミッション系の映画でさんざん見てきた
銃撃戦を中心とするバトルがあるだけで、
そのバトルにも、特に目新しい趣向はなかった。
バトルフィールドからして、採石場って。
ベタすぎるだろ。
その筋の人間が闇取引とかの悪事を
いかにも行いそうな場所だ。

いけすかないうえに
工夫がない映画・・・

3人のエンジェルがとっても良かったのに
なぜこうも もったいない使い方に
なってしまったのか。

けど、ジェーンとサビーナが
パーティー会場に潜入するシーンで
ディスコダンスを披露していたのは
ステキだった。
このあと、ふたりでプリクラ撮ってた(笑)
こういう所は、より現代っぽくリブートされた
チャーリーズ・エンジェルって感じで良かった。

www.youtube.comこれ。
でも初めて来たパーティー会場の
初めて聞いた音楽なのに
なぜ振り付けを知っているんだろう・・・

あと、ジョナサン・タッカーがカッコよかったね。
敵役が倒されるのはしかたがないけれども
死ぬ必要までは、なかったと思う、彼も。


・・・

まあ、
やっぱダメだな。
そのつもりで観て本当にその通りだったから
言うまでもないことなのだが
この映画は、ダメだ(笑)!!!

全然好きじゃない!!!

でもエンジェルたちはステキだった。
彼女たちの活躍は
まだ、これからも観たい気もしなくもない。
続編があるとすれば
その時はもっと良い映画になっていますように。