BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『初恋』-200311。

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www.youtube.com

英題:FIRST LOVE
三池崇史監督
2020年、日本

これから2日くらいも経つうちに
だんだん気持ちが変わっていって、冷静になっていき、
とうてい擁護しがたい欠点の数々が、クリアに見えてきて、
なんでこの映画のこと2日前はあんなに好きだったのかなとか
思うんだろうなってことが今からもう想像できるけど、
それでもやっぱり今は、この映画のことかなり好きだわ。

今この時だけかもしれなくても
この映画が好きだなと思っていることを、
書いて残しておく必要を感じている。
書いたことを悔やんだりしない。

こういう映画、あって欲しいよな~。 いつまでも。

窪田正孝という俳優の演技を初めてまともに観たが
すごく良かったな・・・
匂い立つような色気を感じたんだけど
ごく普通の青年ぽさも、ちゃんと出してくるというか。
前半の死んだ魚みたいな眼が
後半の生き生きと輝く眼になっていくまでを
段階的に演じ分けていくので
静かだけどとても難しい役だったと思う。

ただやかましいだけ、ただエロいだけ、ただ頭がおかしいだけ、そういう役なら

演技の経験が浅くてもまだなんとかなりそうだが、

レオのように、内面に変化が起こっていく役は、高度ではないだろうか。
終盤の試合のシーンで 
人が変わったように、体いっぱいで勝利を喜ぶようす、素晴らしかった。

あと染谷将太のサイコヤクザっぷりも素敵。
あの人、いったいどういう役者なんだろう。
すごくヘンな人だ。

電車のなかのシーン 好きだった。

驚くほどちゃんと、恋の物語になっていたよね~。

事件が解決したあと、モニカ/ユリがどうしたか
眼をそらすことなく描いていたのは良かった。
この手の映画でああいう所をはっきり描いたものは
わたしが観てきた限りではなかったような気がする。

ベッキーも良かった。
ずいぶん思い切ってきたな~と思った。
あれだけやってくれれば、
ジュリというキャラクターはもうバッチリだと思う。

ラストシーンがとても印象的だった。
ああ確かにこれで終幕だよなと
心から納得できる、静かで優しい終わりかただった。

なんか腹立つ(笑)!!!!

ところどころ なにそれ!!!! って
観てるそばから思うような所も あった。
ストーリーとかめちゃくちゃだし
というかなんで今この映画なのか、というのが
全然わからないし
語り方とか、もろもろ雑だったのか、
映画のなかのキャラクターたちがやっていることに 
ぜんぜん興味が持てなかった。
だが、三池監督の映画はだいたいいつもそうなんだよな。
今に限ったことでなく 
これまで観てきた三池監督の映画は
どれもこれも、多少のおかしな所 あった。
なのに 観始めると、観ることができてしまうのだ。

まあレオの終盤のバトルシーンをもっと引きの映像で
ちゃんと全部観たかった、とか いろいろあるけど。
でも 三池監督の映画では暴力シーンが
ちゃんとかなり痛そうで、そこがけっこう好きだ。

あのホームセンターでの乱闘は
イコライザー』とか少しは意識したりしてたんだろうか。

ストーリーの骨組みはちょっとだけ
トゥルー・ロマンス』に通じるものがあるね。

わたし三池崇史監督の映画、好みなのかもしれない。
確かに
殺し屋1』(2001年)
IZO』(2004年)
スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007年)
悪の教典』(2012年)
藁の楯』(2013年)
『喰女』(2014年)
極道大戦争』(2015年)
と、ちょっとは観てて、割と好きなものが多い。
こんなのはフィルモグラフィのほんの一部であり、
特に、初期の方なんて、全然観ていないのだが。

三池監督の映画には、好感が持てることが多い。
その気持ちの内容をどうにか言葉で表現するならば
「監督は、映画というコンテンツに関わることを、
 そう大層なことだとは思っていない感じがする」
「監督は、自分自身を過大評価していない感じがする」
みたいなことに近い気がする。

できもしないことをやった風に見せない。
でも、できることは精一杯やって見せてくれる。
そこが気持ちが良いのだと思う。