ポケットのなかに
文庫本の一冊も入れずに
家を出てきてしまったと
気づいたときの あせりは、
窓を開けっぱなしにしたまま
家を出てきてしまったと
気づいたときの それよりも
はるかにわたしを
行動へと駆り立てる。
本を忘れて出てきたら、
走って家に取りに戻るか、
最寄りの書店、がなければ
コンビニまたは駅の売店で
なにか一冊購入する。
そうしなかったことは
今まで一度もない。
窓を開けたまま出てきたら、
ま、いっか、で済ませる。
そうしなかったことは
今まで一度もない。