BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

ドラマ「全裸監督」-190812。

ネットフリックスで
「全裸監督」というドラマが公開されている。

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www.netflix.com

「全裸監督」
武正晴 総監督
本橋信宏 原作
2019年、日本

ストーリーは、
バブル期の日本で活躍したAV監督・村西とおる氏の半生を、
虚実おりまぜて描くというもので、
山田孝之村西とおる氏を演じている。

山田孝之主演の「勇者ヨシヒコ」シリーズを
好んで観ていたら、
「おすすめの作品」て感じで、
「全裸監督」がトップ画面に上がってくるようになった。
話題作だからというのもあるだろうが。
第1話を観てみて、
「なんつうもん『おすすめ』してけつかるのだ」
と、ちょっと思ったけど(ちょっとかよ)

傑作だ!!!
世界に誇っていいんじゃないかな。
誰がこんなことを今までに、やってくれたろうか。
少なくともわたしは初めて観た、こんなドラマ。

テーマへのアプローチのしかた、
というのかな・・・なんというか・・・
キャラクターの役立たせ方が
すでに固定されてしまっている感がある。
パターンがそればかりなので、その意味で
ちょっと退屈かな、と思わなくもない。それは本音。
「権力VS革命」は 「当局」と「村西軍団」、
「男の性」:「女の性」は 「村西」:「黒木香」、
このフォーメーションでいくのだ、と
はっきり定められていて、動くことがない。
また、基本的にはこの2つのことしか描こうとしていない。
それはやりかたとして巧みであり、
シンプルゆえにスッキリしていてわかりやすいが、
逆に言えば、わかってくると、やや飽きる。
だが題材から考えれば、これが妥当なのかもしれない。
全8回でスパッと完結らしいし、
これ以上いろいろ詰め込んだら
今度は「テーマがぼやけてる」とケチがつくだろう。
難癖をつけてしまったが、
じゃあどうだったら良いのかなー、という
わたし自身の意見とかは、まだ思いつかない。
ひとまずは、最終話まで観てみようと考えている。

時制を過去・・・「昔」に置いて描くドラマや映画では、
役者さんたちが「昔の人」の表情をしていないことや、
舞台装置(建物や小道具)がいかにも作り物っぽいことが、
気になる場合が多い。
お金がないなかで作られる、日本の作品では特にだ。
その点、本作はネットフリックス製作ということで
予算が十分にあったのか、
そうした、例の違和感があまりないのがうれしいポイントだ。
役者さんたちが、わりとちゃんと「昔」の顔をしていて、
昔っぽい服装やヘアメイクが、かなり板について見える。
男性のスーツの仕立てが、現代のものじゃないこと
(80年代末から90年代初頭の仕立てで衣装を作ったこと)
わたしでもさすがに、見ていてよくわかる。
セットも凝っていて、目にも楽しめる。
女性が実家に電話をかけるときに用いる、
公衆電話のきったねえ感じ。
それから、「ばいび~♪」という若者言葉は言うに及ばず
当時の大学生くらいの人たちの言葉遣いや口調。
うわー芸が細かいな、と。

それにしても、なんといっても、
山田孝之が、これほどの役者さんだということを
わたしはろくすっぽわかっていなかった。
(「勇者ヨシヒコ」じゃわかんなかったんだなあ笑)
山田孝之、スゴイ・・・
よくここまでやったもんだな、というのはもちろんだが、
彼に、乗り移っているようにさえ見える、
村西とおるという人物の魂が。

森田望智という女優さんが、
村西とおる氏のミューズ・黒木香を演じている。
山田孝之と、この森田望智がもしいなかったら、
本作の素晴らしさは、確実に8割減だ。

黒木香の初めての撮影では、
監督である村西とおる自身が、相手役を担当する。
村西とおると出会ったことによって、
ずっと抑圧されてきた己の性を解放できる場を得た黒木。
「すべてをさらけ出すんだぞ。
 俺のビデオは『本番』だからな」
黒木は、にっこりとほほえんで
「それ以外に何があるんですか?」
そして始まる撮影のなかで、
黒木はどんどん美しくなっていく。
それに反して、
村西とおるは、げっそりと老け込んでいくのだ。
黒木は白い肌も長い黒髪も、しめりけをおびて
つやつやとしてくるのに
村西は、健康的に映えていたその肌の浅黒さが
「土気色」と表現したくなる色味に変わってくるし、
実際、肌の表面が何やらポソポソに渇いて見える。
山田孝之の実年齢的には本来あってもおかしくなく
それまでは気にならなかった「口元のしわ」などまで、
見ていて妙に目についてくるのだ。
こんなところを、とらえてしまって良かったのか?
と思ったくらい、すべてが生々しかった。
この初めての撮影のシーンは壮絶だった。
それに、美しかった・・・。黒木香が。
驚くべきなのは 
これが「演技」だということなんじゃないかな。
なんてことだろう。芝居って、本当に偉大だ。

観ていて、感じられるのは、本作が
「エロ」のさまざまな側面を見せつけようと
してきているのではないか、ということだ。
今の時点でわたしがわかるのは、
カラっとしててバカみたいで、ただただ愉快なエロと、
途方もなく美しい(そうなろうとしている)何かの極みとしてのエロ。


「おすすめ」することは 
ちょっと、はばかられるが・・・。
大人の方なら、このドラマから、
きっとなにか・・・
強烈に、受け取るものがあると確信する。

・・・

このようなブログも始めてみた。
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