BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『虐殺器官』-190717。

村瀬修功監督、2017年、日本

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www.youtube.com


原作小説がすごくおもしろい。
映画化されたときはほんとにうれしかった。

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www.hayakawa-online.co.jp

伊藤計劃虐殺器官
ハヤカワ文庫

小説も、映画も、わたしには 難しい。
映画を観て小説を読み返してまた映画を観直して
・・・と何回もやって 楽しんでいる。
映画でよくわかんなかったところの答えを 小説に探し
小説で想像しきれないところの答えを 映画に求める。
要するに 1回でも一方向でも わたしにはとても理解できない(笑)

終盤の、列車がこの世の地獄と化すシーンが好きだけど
映画では改変されて列車じゃなくなっちゃったのが
いつ観てもちょっと残念だ。
けど しょうがなかったのかなと思う。

「どうです、今なら子どもを殺せそうですか?」

ジョン・ポールの語り口が良い。
ジョン・ポールとルチアの関係なんかは
人間の本当にどうしようもない業の部分みたいなものを
鋭く見せつけてくれているなと感じる。

人間の本質的な残虐性を描き出した物語、
そんな風に言うことは簡単だが、

「人間には、虐殺行為の意思的な推進をつかさどる器官が
 遺伝子レベルで搭載されている」
という設定自体に
「人の本質的な残虐性の表現」を見るべきなんだろうか。

この物語はそういう風には必ずしも なってないと思う。
「人は生まれながらにして残虐なんだよ」
と 済ませられる話ではない。

殺戮本能と言えるその器官が 
人に備わった理由について、
小説でも映画でも、示唆されている。

虐殺器官」の存在を把握したからと言って
そいつを人工的に呼び覚まさせて
お好みの地域、お好みの言語圏に大量虐殺行為を誘発し
世界経済や世論を都合の良いように操作しようとする
・・・という発想にたどりつく、
そしてそのアイデアになんら問題意識を持たない、
それこそが、人の残虐性の表出ってことなんじゃないかな。

罪悪を、罪悪と感じることができないときがある。
それはすごく深刻な、人の問題であると思う。

たとえやったことがないことでも、知らないことでも、
ダメなものはダメだと判断できないといけない。
それに、できるからといって、やっていいのかと言うと、
そうではないのだ。