BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『光(大森立嗣監督)』-190712。

大森立嗣監督、2017年、日本

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『さよなら渓谷』(2013年)の監督なのか・・・
それにしちゃ、そんなに良くはなかったな。
比べるとしたら『さよなら渓谷』の方が
映画としては 圧倒的に良かった。

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音楽がところどころ、悪い夢かと思うほど、
作品とまったくマッチしていなかった。
ジェフ・ミルズが悪いと言うんじゃないが
合ってなかった。
どうしてあんな、走ってる感じの音楽を
当てる必要があったのかなと思う。
全然受け入れられない。
それこそが何よりも作品を破壊してた。
そのことだけは言っておきたい。
音楽がとにかくマッチしてなかった。
実は本作は ちょっと前にネットフリックスで
配信されているのを発見して
そのとき、最初の十数分だけ観てみたんだけど
あの音楽がイヤすぎて 
途中で観るのをやめてしまったのだ。

けど、三浦しをんの同名小説の
映画化であることを把握していたので
原作の文庫本を購入して読んだところ、
小説はかなりの傑作だった。
やっぱり、どんなふうに映像化されたのか
知りたいような気がしてきて、
今回もう一度、映画を観てみることにした。

序盤は子役による過去パートで、
全員 あんまりにも演技がまずくて、
観ててしんどかった・・・。
そこにあの音楽がおっかぶさってくるから
ほんとにイヤになっちゃう。
ヒロインの美花、そんなに「蠱惑的」って感じじゃないし。
ヒロインとコトに及んでた旅館の客も
大人の役者にも関わらず、
素人目にみても演技がひどかった。
ルックスもなんか バカにしてんのかって感じの
いかにも気持ち悪い男だったし。
というかセリフがひどい。
たしかに原作小説に 
ほぼ同様のセリフがあったのだが、
映画化するにあたって完コピすれば
それで良いというものじゃないだろう。
小説だからこそ許容されるセリフ、
そういうのって、あると思う。

そんなこんなで、やはり序盤は相当しんどかった。

けど
「25年後」を描くパートになってから
けっこうおもしろくなってきて
最後まで観ていられた。

井浦新(信之)と
瑛太(輔:たすく)と
長谷川京子(美花)
良かった。
3人とも大好き。

小説を読んだときは、
島を中心に八の字にめぐる潮流のように
ぐるぐると、運命がまわってる
そんなイメージが頭にうかんでた。

だが、映画を観たらちょっとその
イメージが変わって、
「生」 ⇆ 「性」 ⇆ 「死」
と 直線的かつ双方向的に
いったりきたりする図式を、感じる。

圧倒的な暴力と、強烈な性衝動と、
「お母さんのおなかのなかに戻りたい」
「生まれるところからやり直したい」
といった潜在的な願望とが、
ある あまりにもトラウマティックな
できごとによって
ほどけないくらい複雑に結びついて
その精神に根付いてしまった。
そんな子どもたちの物語だったかもしれない。

彼らには帰る場所がもうないのであるし。

親じゃないものを親だと思い込んで、
すがっているフシもあった。
親に求めるべき役割を
親じゃない人に求めてしまってたというか。
生まれて間もない小鳥が
最初に見たモノをお母さんだと思って
それが機械仕掛けのおもちゃだろうと、
無邪気に あとについて回るように。

輔はそれが顕著だった。

「その言葉が信じられたら・・・」という
輔のセリフの意味が、
そのあとに続く彼の話を聞いてても、
よく理解できなかった。
輔は信之の行動原理をよくよく知っている。
だから、信之が「お前のためにやってやる」
的なことを言ったとしても
そんなのは本心ではないとわかってた、
ということだろうか。

音楽がまずいのと
子役がまずいのと
大人の役者も一部まずいのと
余計なシーンがところどころあったのは残念だが
意欲的な作品ではあったと思う。

輔のセリフの意味が気になるから
もう1回 小説を読んでみようかな。