BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

ラフォルジュルネ2019-アブデル・ラーマン・エル=バシャ-190504。

有楽町の東京国際フォーラムで開催中の
ラフォルジュルネ・オ・ジャポン2019にいった。

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今年は2公演 聴くことができた。
どちらも心からたのしんだ。

アブデル・ラーマン・エル=バシャ
サン・サーンスのコンチェルト第5番
すごくよい思い出になった。

1番と2番は何枚か CDを持っている。
エル=バシャの演奏のものも。
でも5番はあんまり聴かないなあ。
エジプト風なんて名前もついているし
ちょっと変わったメロディで有名だと思うんだけど
生演奏を聴いたことはわたしはない。

きょうは貴重な機会だったんだとおもう。

技巧でゴリゴリ華やかにアゲる系じゃないが
これたぶんすっごく表現技法的に
難しいんじゃないかな、って
おもわされる曲だった。

第3楽章 美しかった。

彼のピアノを聴いたとき、 
わたし、たしかに幸福を感じた。
すごくかっこわるいみじめな日々だったけれど
それでも、今日まで生きてきて、よかった
この演奏を聴くことができるんだから、と
はっきりと感じたのだ。

そんなふうにおもえたことがうれしかった。

ややスモーキーで やわらかい音だが
音色の透明感や 音の輪郭、
やろうとしていることの姿そのものは 
しっかりと保たれている。
わたしのなかでのビジュアルイメージは
アンデルセンの「雪の女王」に登場する女王の宮殿。
つめたく昏いが、同時に、あたたかい。
心によりそう、思いやり。ほほえみ。
緩急は自在ながら
あまりキツく歌わないでいてくれる。
ぜったいにはずさない安定感。
深く遠く響く。
よけいなことをしないところ。
調和を感じさせてくれる。
そして彼は一度たりとも汗をふかない。
汗をかいて青筋たてるような演奏じゃないのだ。

求道的な演奏、ってかんじじゃないかなとおもう。

わたしはこの人のピアノを
深く信頼している。

リサイタル聴きたいなあ。
もっと長く彼の演奏に触れることができたら
どんなにいいだろう。