BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『さよなら、人類』/海外ドラマ-『GET DOWN』-190502。

お天気がだんだん上向いてきたようだ。
きょうの昼間はあたたかかった。

・・・

きのうから今日にかけては
『さよなら、人類』という
スウェーデン製の映画を4回くらいも
くりかえし観てた。

原題:EN DUVA SATT PA EN GREN OCH FUNDERADE PA TILLVARON
ロイ・アンダーソン監督、2017年
スウェーデンノルウェー、フランス、ドイツ合作

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movie.walkerplus.com


というのも、1回観たくらいでは
なにがなんだかわからなかったからだが、
くりかえし観ることでそれなりに
理解できるようになってきて・・・
そうこうするうちに今度は
この映画のことが大好きになってしまったのだ。

映画にもいろいろあるものだ。

新作・旧作映画にはかならず
公式ウェブサイトがあって
そこでプロダクションノートや
ストーリー解説などが
かならずおこなわれるものだ。
極力、本編を観るまえには閲覧しないことにしている。
観たあとも、できるだけ読まない。
「あのシーンはこうやって撮ったらしい」
「あのシーンにはこんな意図が込められたらしい」
そういうのって 正直に言えば
ものすごく知りたいんだけど
知ってしまうと それ以外の観かたが
できなくなるようにおもう。
ただでさえ いちど自分で「こうだろう」と
解釈したら それ以外の考えをみちびきだすことは
むずかしいので
自分じゃない人から「答え」を提供されて
それがただしいと頭のなかに固定してしまう流れは
ちょっとイヤだ。
きょうび どんなにシャットアウトしたつもりでも
情報は 入ってきてしまうものだが。

・・・

米国のすでに完結ずみの連続ドラマシリーズ
『GET DOWN』をたまに観てる。

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www.netflix.com

1970年代末、行政に見捨てられ
貧困と犯罪の巣窟状態となっていた
ニューヨークはブロンクスを舞台とする物語だ。
主人公の少年エゼキエルはこの街で両親を殺され
親戚にひきとられて暮らしている。
学校の成績は良く、特に作詞の才能に長ける彼は
その素質を見抜いた担任教師の協力を得て
大学進学や政界への参加といった夢を描くまでになるが
その一方で、いまでいうHIP HOP、ラップといった
当時アンダーグラウンドとみなされていた音楽の世界で
チャンスをつかみ、生まれ育ったブロンクスの街を
内側から改革していく力を得たいと願うようになる。
彼の幼なじみで初恋の人マイリーンは
ペンテコステ派キリスト教会 の指導者/牧師?の娘。
厳格な父のもと、息苦しい生活を送っている。
しかし、やがてその天性の歌唱力がみいだされ
当時の若者たちのミュージックシーンの
メインストリームといえるディスコミュージックで
スターダムをかけあがっていくことになる。
物語はエゼキエルとマイリーンの関係を追いながら
当時のニューヨークがかかえていた
さまざまな社会的問題をあぶりだし、
さらにアンダーグランドの世界における
HIP HOPという新しい音楽の誕生の瞬間を描いていく。

レオナルド・ディカプリオが主演した映画
華麗なるギャツビー』(2013年)の
バズ・ラーマン監督が手がけている。

物語が、これからどうなっていくかについては、
それなりにスルスルと予想できてしまうんだけど、
観ていてけっこうおもしろいドラマだとはおもう。

エゼキエルがなかなか自分の進むべき道を
これ!と決めることができない所は
いかにも優柔不断におもえて
みていて本当にイライラする。
あれで案外世間知らずなところがあって
空気を読まずに 舞い上がって
いらぬことを口走ってしまったり
信用ならない相手を簡単に信じてしまったりする。
こんなんであの苛烈なブロンクスの街で
生き抜けるのか 他人事ながら心配だ。
でも、まあ、自分も、彼くらいの年齢のとき、
こんなもんだった。
というか、彼ほどですらなかった。

ヒロインのマイリーンの歌声は、
ソロだと全然 個人的には好きじゃないが
アンサンブルのなかで歌うと
周りと調和しつつ、きれいに映えて
非常に美しいと感じる。

印象的なのは、
まず、劇中で、登場人物のだれもかれもが、
呼吸をするように自然に 麻薬や覚せい剤
売買したり打ったり吸ったりしていることだ。
最初はめんくらった。
でも、あまりにも当たり前のように
みんなクスリをやっているので
だんだんこちらも
それを見ることに慣れてきたというか
慣れないことにはこのドラマは、観ていられない。

また
登場人物たちの、おそるべきサバイバル精神。
自立的な生きかたをしている姿に驚かされる。
すくなくともみんな、
自立的であろうとして、方法を模索している。
エゼキエルやマイリーンは
おそらくまだ16~17歳あたりの設定だと思う。
彼らが師匠と仰ぐ、音楽界のビッグネームたちでも
たぶんせいぜい20代前半とかいった所だ。
でも、そんなに若いのに、
みんな、信じられないくらいタフでハングリーだ。
あぶなっかしいけれど、まがりなりにも
自分の力で自分の生活をまわそうとしている。
どうやってお金をかせぐか常に考えている。
つらい暮らしから抜け出す方法を考えている。
わたしは正直な所、
まだ子どもの彼らが、いったいどうやったら
ラップバトルみたいな野外ライブイベントを開催したり、
自宅を開放して一夜かぎりのディスコを開いたり、
なんてことができるんだか、全然わからない。
もし、やれと言われても、どうやれば良いのかわからない。
わたしが高校生くらいのころ
そんなことができる同年代の友人など
まわりにひとりもいなかった。
それに、エゼキエルのように教師が目をかけてくれて
いい機会を持ってきてくれることも、まれにあるのだが
多くの場合、このドラマの若者たちは、
自分のしたいことに、大人をむしろ、協力させる。
大人に頼み込んでデモテープを作らせる。
大人のコネで有名プロデューサーと会う約束をとりつける。
そういう発想ってすごいもんだなとおもう。
彼らはハングリーだ。
でもそれよりも以前に
すごく考えかたが わたしなどとは
根本からちがうなと感じるのだ。

・・・

連休も後半に入る。
そこそこ予定も入っている。
連休明けにカゼひいたりしないように
気を付けながら行動したい。