BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

読めない/市川春子『虫と歌』-180619。

駅のホームで電車をまっていたとき
フラッシュバックに遭い、そのまま調子をくずし
予定はぜんぶとりやめとなった。

自分でもなかなか 体調の波をつかみきれず
きょうはどうかな?みたいなことが 読めない。
読めない。
どうか、大丈夫そうか、と聞かれてもこまる。
わからないとしか答えようがない。
だが わからないではすまされないのが実際のところだ。
大丈夫そうだと答えて大丈夫じゃなかったときには
周囲に迷惑をかけるし、自分もまことにおちこむ。
「『大丈夫そうだ、がんばる』と口にだしたからこそ
きょうはなんとかがんばれた」と 
振り返ることができる日もある。
わからない。どうしようもない。

でも ずっと内にとじこもって
横になっていることもできないのだ。

自宅を出発した時点では、
こんなことになるとはおもってなかった。
すごくかなしいきもちになった。
こんなことをまだまだ何度も耐えて
いかなくちゃならないのかとおもうと。

出かけておきながら 
このような時間にとんぼ帰りしては
見とがめられて 
安心して休むことなどできない。
図書館とか 座って体を休められるところに
行ってみようかなと考えたが 
座るのではなく、横にならなくてはという体感があった。
ちかくに住む友人に連絡してみたところ
仕事がおやすみとのことで
きていい、一日寝ていろといってくれ、
駅まで車でむかえにきてくれた。
家ではすでにベッドが 
わたしのためにととのえられていた。
夕方目をさましてみると 調子は戻っていた。
まだじっとしてこれでも読んでろ、と
わたされたマンガが傑作だった。
市川春子というかたの作品集で、
『虫と歌』というものだった。

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このように魅力的な物語を かく人がいると知らなかった。
めまいをもよおすほど壮大なSF、言葉少なでやや難解だが
妙にしずかで、ゆったりと時間がながれ、
それに、さびしかった。
彼女の描くマンガの世界にいると呼吸が容易であり、
体がラクにうごかせた。

九井諒子さんを知ったとき以来の感動だった。




わたしも友人が外で調子をくずして 
助けをもとめてきたときに
自分のベッドをあけわたし、一日ここで寝てていいよと
言ってあげられるような人間になりたい。