BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

手記-其の弐拾壱(仮題)-20171213-宣戦布告-2

2017年12月13日、
労働組合・総合サポートユニオンに個人で入会。
団体交渉申し入れ書と要求書を
職場にFAXで送信し、「宣戦布告」。

はじめにSさんがわが職場に電話をかけたとき、
専務は不在。
15分もすればという話だったため、待機。
こちらから再びかけてもよかったが、
15分後、意外にも先方から、
ちゃんと電話がかかってきた。

・・・

Sさんの電話は
外部スピーカにきりかえられ
ボイスレコーダもオン。

専務の声は・・・ 
高くハリのある
テノールを想像していただきたい。
言葉のはしばしまでムダに明瞭、
しかしやや のったりとしたかんじに話す。

Sさんは専務より4音分くらい低くて硬質、
ちょっとスモーキーな声。かなりの早口。

専務
「(名乗らずに)そちら、
『総合サポートユニオン』の・・・」



Sさん
「(ちょっとかぶせぎみに、
有無をいわさぬスピード感で)
あ、そうです、はい。」



専務
「代表のミウラ●●さんから
ファックスをいただいたんですけど」



Sさん
「はい、それはわれわれの組織の代表です、
すみません●●●社の専務さまですか?
お名前をおっしゃらないので。すみません」



専務
「Tと申します」



Sさん
「こちら『総合サポートユニオン』の支部のひとつで、
ブラック企業ユニオン』の、わたしはSと申します。」



専務
「はいー、おせわになりますー。」
おせわになるなよ・・・



Sさん
「(かぶせぎみに)
ファックスが
お手元におありだとおもいますが、」



専務
「(かぶせぎみに)
はい、持っていますー。」



Sさん
「御社の従業員のYさんが、」



専務
「Y。Y。はい。」



Sさん
「わたくしたちの労働組合に加盟され、
御社に団体交渉を申し入れます。」



専務
「(小声で)団体交渉・・・」



Sさん
「要求書と団体交渉申し入れ書を
ご覧いただければ
わかるとおもいますが・・・」



専務
「(さえぎるように)
この2枚のファックスですよねー。
えーとなになに
『団体交渉申し入れ書』と
こっちが『要きy・・・』」



Sさん
「(かぶせて)
確認ですが、
労働組合が団体交渉を申し入れた場合、
会社側には誠実に対応する義務がありますので、
団体交渉を拒否されたり・・・」



専務
「(悪気なくかぶせて)
はい、それははい、
対応させていただきますけども・・・
書類の意味とかがよくわからないので
電話させていただいて」



Sさん
「(さえぎるように)はい、
ですが まず確認事項なのですが、
団体交渉を正当な理由なく拒否されたり
誠実に対応していただかなかった場合には、
労働組合法違反となりますので、
ご注意いただきたいです。」



専務
「はい、あのー、
もしなにかありましたら
訴えていただくなり
していただきたいと思います」



Sさん
「はい、イヤ ですから、
訴えなくちゃいけなくなるようなことを
やらないでいただきたい、と
申し上げているのですが(笑)」



専務
「あ、すいませーん。はい。」
そばで聞いているMさん、くすっと笑う



Sさん
「(専務がなおも何か言おうとするのをおしとどめて)
ごめんなさい、さきにお話を。
今後ですが、交渉中にYさんと直接連絡をとったり、
あるいは御社の従業員に
『きみも組合に入っているんじゃないか』と
問いただすことも、組合法違反にあたるので、
お気をつけください。」



専務
「はい、
わたしも知識がないもので、
代理人を立てたほうがいいですかね」



Sさん
「それはどちらでも」



専務
「確認なんですけれども。
一発目の要求は、
タイムカードとビルの入館証と、
雇用契約書と給与明細と就業規則と、
時間外労働に関する労使協定締結・・・」



Sさん
「協定書って、あります? 
労使協定って、ありますか? 
いわゆる三六協定(※下記)ですけど。」
※三六協定:

www.roukitaisaku.com




専務
「社長に確認します~。」



Sさん
「社長に確認する・・・
(あなた自身は把握してないのか、というかんじを
ありありとふくませて)
就業規則はありますか?会社に。」



専務
就業規則も・・・
どこかにあるとおもうんですけど
それも社長に・・・」



Sさん
「あ、社長がおくわしいんですか」



専務
「社長が書類管理します。
就業規則、ないってことはないです。
探します。」



Sさん
「(そしらぬふりで)
では今、会社にはない?」



専務
「会社にはありません。」
また言ってる!!



Sさん
就業規則も労使協定書も、会社にはない。」



専務
「(決然と)ハイそうです。」
そんなにキッパリと!!



Mさん、わたしの顔をみて 笑顔をうかべる。
就業規則は事業所に保管し、
いつでも従業員が見られるように
場所をあきらかにしておかなければならない、
という法律にもとること、つまり会社にとって
今後不利になりかねない事実を 
専務があまりにはっきりと言ったから 
笑ってしまったんだろう。



Sさん
「(幼稚園の先生が、小さい子のおしゃべりを
やさしくさえぎるときのような調子で)
そうなんですね~、は~い、わかりましたー。」



専務
「あと、Yさんと、
『2018年1月20日で正式退職の形をとるけれども、
2017年12月28日で実際の勤務を終了し、
1月20日までは有給消化』という話になってたんですが、
その話はもうなくなったんですかね」



Sさん
「そうですね。12月28日まで出勤すること自体が、
すでに体力的、精神的な意味で・・・」



専務
「それも本人に言ったんですけど、
体調が悪いようならご自由に、
休んだり、遅く出社したりしてもいいみたいな。」
・・・言われてないけど。



Sさん
「休んだ場合は有給休暇扱いになるのですかね」



専務
「というか、
従業員が仮に病気で月に何日か休んでも、
その月の給与は全額だすんですよ。
だからYさんが28日までのどこかで休んでも、
このまえ入院して休んだ分ももちろんですが、
給与はぜんぶでます。
Yさんの、12月28日から来年1月20日の給与も、
実質的には退職しているけど、ぜんぶでます。」
・・・これがほんとに何度考えてもよく理解できない。



専務
「Yさんからはそのこと聞いてないんですか?」



Sさん
「御社が、ケガや病気による欠勤に関して
そういう取り扱いをされていることは聞いています。
じつはその点でうかがいたいことがありまして。
病気で休んだけど給与はだす、ということは、
休んだ日は出勤扱いでしょうかね?」



専務
「(しばらく考えて)出勤扱いではなくて、
まあ・・・休みなんですけど、
有給消化とか、形はなんでもいいんですが、
うちの会社は、病気で休んだからって
給与を減額したことはないんです。
事情で月に数日しか出勤しなかったとしても、
給与は日割ではなく全額でてまして、原則。」



Sさん
「じつは、Yさんは退職後の傷病手当金の受給を
考えておられまして。
Yさんはじっさい医師の診断書がでている状態ですので、
傷病手当金を受給して、
退職後しばらく休養したいと考えています。」



専務
ハローワークの『傷病手当』は受けないのですか
(このあと30秒くらい、
専務による『傷病手当』の受給要件などの
解説がなぜか とうとうと続く)?」



Sさん
「(悶絶ぎみ)
その解説、いま必要あります?
受給を検討しているのは、
健康保険の傷病手当金です、
さいしょに申し上げたように。」



専務
「そうなんですかー、はーい。
でもそれ、在職中にケガとか病気で休んで
給与が出なかったときにっていうのですよね。
でも、うちは休んでも給料でるので、
支給されないんじゃないですか。」



Sさん
「受給を検討しているのは、退職後の傷病手当金です。
その件で、考えていただきたいことが。
退職後に傷病手当金を受給する要件として、
まず、在職中に、退職日を含む最低4日間は欠勤した、
その4日間は無給だった、という事実が必要なんです。
ですから
少なくとも今後 退職日を含む4日分は、
欠勤扱いで、給与も出さないでほしいのです。
その4日の最後の1日を申請日として申請すれば、
退職後の傷病手当金が受けられるので。
2018年1月20日を最後とする、その前少なくとも連続4日間を、
欠勤・無給の形にしてほしいのです。」



専務
「(あきらかに、ぜんぜんわかっていない)
ふーん・・・ 
まあ、そこは交渉ということで。
でも、退職はするんですよね?
退職をしたら、うちの保険使えなくなりますよね。
傷病手当金ももらえないんじゃないですか?」



Sさん
「退職しても任意継続が可能ですし、
退職して健保を脱退しても、受給申請できます。」



専務
「そうなんですか。
法律くわしくないのでまあそのへんは・・・」



Sさん
「次に、要求として、
未払い賃金の支払いの件がありますが」



専務
「(要求書をみながら)
『2015年以降の未払い賃金』・・・
Yさんて2015年入社でしたっけ」



Sさん
「イヤ(未払い賃金などの請求の)
時効の問題がありまして。
もっとさかのぼって払っていただけるなら
それでもかまわないんですけど。」



専務「Yさんて何年入社でしたっけ」
・・・専務、あなたの会社の社員です。



Sさん
「(ややうんざり顔で)
2013年です。
2013年にさかのぼって払っていただけるなら
それでいいですが。それで請求しましょうか?
じっさい残業代、未払いですよね?」



専務
「そうですね。
特別手当以外の残業代は支払えないので、
早く終わらせて早く帰ってね・・・という形なので、
それ以上の残業代は払っていません」



Sさん
「あ、『特別手当』。
たしかにYさんの給与明細を見るかぎり
毎月何万円か『特別手当』が支払われていますが。
これは、月何時間分の残業にあたる手当ですか?」
・・・Sさんは「特別手当」を、固定残業制における
固定残業手当とみなしているみたいだな・・・



専務
「(その質問には答えずに)
能力給みたいなものです。
時間ではかれる仕事じゃないので、
法律上はともかく、
24時間いても1ページも終わらない人もいれば、
1時間で24ページ書いてしまう人もいるので、
できる人には能力給を積み上げていく。
残業をしないでも早くおわる人は、能力給が上がって、
残業代を支払っていないというような形です」



Sさん「うーん。」




専務
「それは入社のときにYさんにも説明をして。
残業代が支払われないブラック企業ですけど、
それでもよければと。」
・・・そんな説明受けてないわ!
ブラック企業でもいいですか?はい。なんて
雇用契約が存在したら、世界が破滅するわ!)



専務
「Yさんは身体面に
ほかの社員と比べてちょっと不安があったので、
契約をめぐって、話し合いは何回かあったんです。
本人の続けたい意志が固かったし、
まじめにやってくださるので、
月に担当する進行の件数を少なめにしたうえで、
続けてもらってました。」
・・・それは事実。



専務
「でも勤務形態にとか不満があったのなら
それは聞かせてほしかったですけどね。
あと、(要求書に)
パワーハラスメントへの謝罪および
本意でない病気退職の原因となった
長時間労働に対する賃金保障』
とありますが、
長時間労働に関してはまあ・・・、でも・・・」



Sさん
パワーハラスメントがあった、というご認識は
専務にはないですか?」



専務
「なんでもパワーハラスメント
なってしまいますからね。
従業員に注意をしたときに
声が大きかった、とかでも、
されたほうがパワーハラスメントと言えば
それはそう・・・。」



Sさん
「では、パワーハラスメントかどうかはおいて、
大声で(編集長が)Yさんを怒鳴ったりといった
ことはありましたか」



専務
「ありましたね。しょっちゅうありましたね。」



Sさん
「専務的にはパワーハラスメント
いうほどのものじゃなかった、
というかんじですか」



専務
「うーん。まあそういうことがあったときは
編集長にあとで事情を聞いて、・・・まあ
あの編集長は大声を出したり、けっこう
あるので・・・言い分を聞いて判断しないと・・・。
編集長が怒鳴ったりするのが
パワハラなのかどうかは
ちょっと自分はわからないですが、
Yさんがそう感じた、ということであれば、
それについては理解しました。でも
編集長はYさんだけにではなくて・・・
けっこうだれに対してもですからね。
期日を守らなかったり
指示と違うことをしたりすると。
編集長自身はそれをパワハラとは
思ってないとおもいますけど。
わたし自身はまあ・・・わかりません。
Yさんと編集長で
見解に相違があるということですね。」



Sさん
「総合的にいって、長時間労働
編集長による11月の1か月間のパワハラ
引き金となって退職せざるをえない状況になったので
それについての賃金保障を求めます。
さらに、Yさんは、
編集長からの謝罪を求めています。」



専務
長時間労働の件はわたしの管轄で、
パワハラは編集長に対してですよね」
・・・理論的には
パワーハラスメントだって専務の「管轄」だ。
経営者なんだから。

 



専務
長時間労働・・・
残業とか、休日出勤は、各自の判断でやるけど、
やったときは報告をするようにと
指示していたとおもうんですけど・・・」
・・・やったときは報告をするように、か。
言われたおぼえがない。言われた社員も
いるのかもしれないけど。わたしが言われたのは
休日出勤はタイムカードを押さないように、
押しても時間外は出ないから、ということだけだ。



専務
「要求書でいうと、
Yさんは編集長に、
ご自分への謝罪にくわえて、
ほかの従業員にたいしてももう同じことをしないという約束、
それから、
会社から編集長への譴責以上の懲戒、を求めているんですね。
でも、ご自分が受けたパワハラの謝罪を求めるのはまだしも、
ほかの従業員がパワハラを受けてもいないのに、
従業員にするなと、Yさんがいうのはどうなんでしょう。
従業員からは、パワハラの訴えとかでてないですよ。」



Sさん
「ほかの従業員はパワハラを受けていないとお考えですか」



専務
「(質問には答えずに)
謝罪文を書けと言うのは・・・」



Sさん
「ごらんいただいている書類には
『謝罪文』とは書いていないですよ。
謝罪です、編集長からの」



専務
「でも実質的には謝罪文ですよね。
それと、自分にしたことをほかの従業員にもしないように
約束してほしいということですが、
これは口約束ですかあ?」
・・・とんとんとんとんとんとん・・・・・という
ちいさな音が、たえまなくひびきはじめる。
Sさんが、電話で専務と話しながら、
机を指でたたきだしたのだ。
たぶんイライラしてきたんだとおもう。



Sさん
「(苦笑)口約束、口約束ですか・・・
もちろん中身のともなう約束にしたいですね。
それと、さきほど、
Yさん以外の従業員のかたが
パワハラを受けてもいないのに、
と、おっしゃいましたが、
会社のみなさんがはたして、
自分はパワハラを受けていない、とおもっているかは、
今はわからないんじゃないですかね。
人間、つらいと思っていても、
なかなか言えないこともありますよね。
現にYさんも耐えに耐えたすえに体を壊して、
今、交渉を申し入れているわけです。」



専務
「ふーん。でも賞与の受け渡しのとき
全員、社長と面接するんですが、そのとき
会社や勤務形態について要望とかがあったら
何でも話すようにって
いつもいってるとおもうんですけど。」



Sさん
「そうですか、それで、
そこで社員のみなさんから
何の要望も不満のうったえもないから、
何もないんだなと思っていらっしゃる、と?」



専務
「いやーでもいつも面談のあと社長に、社員が
なにか要望とかを言っていたか?と確認してますけど
みんな何の不満もない、満足してるって言ってたって
いうから、なにもないはずです。それに・・・」



Sさん
「(失笑)そうですか、
まあまあ、のちほど
きちんとお話していきましょう。」



専務
「あ、わかった! 
Yさんが編集長にやられて傷ついたから、
ほかの社員に今後おなじことがないようにっていう、
Yさんのみんなへの思いやりですか? 
ははは。
Yさんは入院しちゃって休んだから
みんなに迷惑かけちゃいましたしね。
わるいとおもって、
罪滅ぼしみたいなことかな」
・・・せ、専務・・・・



Sさん
「(ややいらだちをあらわにした声音で)
思いやり、ですか。
そもそもですが、
編集長がYさんに約1か月間してきたことを、
Yさんはパワーハラスメントと認識しています。
そしてYさんは、
時期や細かな内容は違っても、
編集長はほかの社員さんにも
自分にしたのと類似の行為をしていた、と証言しています。
くしくもさきほど専務もご自分で、
編集長は大声でどなることがしょっちゅうあったと、
おっしゃってましたけどね。
専務の今の認識は別としましても、
一般的に職場でどなる、モノにあたる行為は
たった1回でもパワハラ、アウトになりえます。
Yさんは、編集長のそうした行為が、
自分が退職したあとも職場で続くのではないかと 
危惧していらっしゃるのですよ。
だから、やめてほしいと、やめると約束してほしいと
おっしゃっているわけです。」



専務
「あー。思いやりだ。ですね。
でも、それって、
指示に従わなかったときとかに
注意をするなということですか?」
・・・せ、専務・・・・



Sさん
「・・・まあいいでしょう、
好きに考えていただいて、今は。」




専務
「でもYさんが
自分にされたことの謝罪を求めるのはわかるけどさー、
自分以外の社員のことまで求めるのの
意味がわからない」
・・・専務 タメグチ!



Sさん
「意味がわからなくはないとおもいますよ、
今、説明しましたけどね。
退職するにしても、自分のことがあったから
職場環境を改善してほしい・・・と求めていくのは
社員の権利として、ありえることですしね。
ふつうに企業で働いている労働者であれば
おもうことではないですか」



専務
「(笑)そうだなあ、じゃあうちの社員に、
『編集長からパワハラを受けたことがありますか』
っていうアンケートでもとったらどうだろう。
たぶん『はい』とは返ってこないとおもうけど」



Sさん
「あ、していただくのもいいと
思いますよ、べつにね。
やっていただけるなら。」



専務
「『はい』って回答が返ってきたら、
Yさんの要求どおり、
もうほかの従業員にたいしても、どなったりしませんって、
約束させるのもいいとおもいますけど、
社員たちがどう思ってるかもわからないのに」



Sさん
「えーーーと、あーのーでーすーね
事実関係についての調査は
団体交渉でだいじなことなので
何らかの形でお願いすることもあるとおもいます。
でも、よろしいですか、今、ここで、
送った要求書の内容全部に
回答していただきたいわけではないんです。」



専務
「でもおー、こうやって紙に書いてあるから~。
編集長がほかの従業員にパワハラしてるってことが
事実、っていうかんじがするじゃないですかー。
でも事実じゃないかもしれないんだし
編集長はもちろんまだ認めてないし。
わからないのに、
『もうしないと約束する』ってのが
意味がわかんないですし~」
・・・専務 なんか口調がヘンに・・・



Sさん
「事実・・・
はい、Yさんは、事実だと、もちろん
認識していますけどね。
ただ、今お話ししたいのは
そういうことではなくてですね。
いや・・・まあ、はいわかりました、
その点については今後よく話し合って、
必要なら実態調査を
お願いしていきたいとおもいます。」



専務
「大声を出してしかるっていうのが、
やりかたとしてひどいっていうことですよね」



Sさん
「・・・。はい、まあ一応そうですねはい。」



専務
「Yさんの言ってる、編集長のパワハラっていうのは
11月中に作ってたホンのときの、あれのことなんですよね?
あれのことだなっていうのは自分もわかるので
あれのことについて調査をして、っていうことであれば」
・・・専務!ちゃんとわかっているんじゃないですか!!



専務
「わたしからのパワーハラスメントっていうのは
Yさんは何も言ってないんですか?」
・・・Mさん たえかねて 声を押し殺して笑いだす



Sさん
「はい、今のところそれについては」



専務
「次の確認事項ですが・・・
(要求書の記載内容を、
国語が苦手な小5男子による
教科書の音読みたいな口調で
ゆっくりと読み上げ始める)」



Sさん
「すみません・・・、
その音読、いま必要ですか?」



専務
「でも行間とかいろいろあるんでー」
行間・・・?



専務
「病気で退職せざるをえなくなったってこと
本人も、本人のお母さんも
何もいっていなかったけどなあ。
言ってくれればよかったのに。
診断書とかがあれば、
これは今月末まで続けさせるわけにいかない、って
対処したけど」



Sさん
「あ、診断書ありますよ。
あとで送りますね。
でも、そういうことを前もって言えない
というのは労働者の心情としてよくあることですから。
信頼関係とかそういうのも
関係してくるのでは。」



専務
「でも賞与の受け渡しのときの面接で・・・」
せ、専務・・・
Sさん、さすがにイライラしてきたか
大きく身じろぎした拍子に
机の脚を蹴ってしまう。
ガツン!!というスゴイ音が聞こえる。



Sさん
労働基準法の遵守はもちろんですが、
労働者が働きやすい環境を、経営者が責任をもって
作っていく姿勢は大切です。
労働者が要望などを遠慮なく言えるだけの
信頼関係をきずくのもそうですし。
それがうまくいかなかったとき、
労働者側の、会社以外の相談窓口として
われわれみたいな組織があるわけなんです。」



専務
「あ、そうなんですか、すみません
いろいろわからなくて、無知なもので(笑)」
・・・専務・・・



Sさん
「今、ここで、
要求書にあることすべてに
回答をしてもらいたいわけではないです。
読み合わせしたいわけでもありません、
わからないことがあれば
別途聞いていただくことはかまいませんが。
団体交渉申し入れのお知らせと、
要求の内容を送るから確認して対応ください、
と言いたいのです。
つきましては、今日から1週間、
12月20日まで期間を設けさせていただくので、
それまでに、要求書の内容への回答をください。
たとえば未払い賃金の支払い要求に対して、
『固定残業だから、払いません』とかね。
その回答と、こちらの要求をつきあわせて
団体交渉をしていきましょうということで。」



専務
「1週間って そちらの一方的な要求で
こっちも準備とかあるから
難しいかもですけど~。」



Sさん
「(かなりいらいらしたかんじで)
難しいのであれば、難しいことと、その理由を
お知らせくだされば 対応いたします。
できれば期間中にご回答いただきたいですが。
とくにタイムカードや就業規則などの資料は
早めに提出いただきたいです。
どれも会社にあるはずのものなので。
顧問弁護士などに相談していただくのも
もちろんかまいません。」



専務
「はーい がんばりまーす」

が・・・がんばれ・・・

・・・

終了

約45分の通話。


Sさん
「いやー 初回の申し入れで
こんなに食い下がられたのはひさしぶりだ」



Mさん
「訴えを起こされて、
戸惑って不安なんだとおもいますよ、
だから 考える時間をかせぐためにあのように
しがみついてくる。
団交を起こされた企業の経営者に
ときどきある反応です。」



わたし
「なるほど。
正直 引きました・・・
でも 考えてみれば
いつもどおりの専務でした。
聞く耳もたない・とりつくしまがない・なんか的外れ。
言ってくれればよかったのに、とか
前もって相談してくれればとか何度も言ってましたけど、
相談しても聞き届けてくれない。それは社長も」



Sさん
「どういうかんじの回答をよこしてくるかな
というのは、話しててだいたいわかりました。
あとは1週間後にくる回答をみて、対応を考えましょう。」



Mさん
「どうせ遅れるでしょうけどね・・・。
期日までに返してきた企業、めったにないですからね」



Sさん
「こういうところで働くのは
大変だったろうな、とおもいました。
ものすごくカンチガイしたことを
目をギラつかせて堂々と主張してくる
経営者も、怖いですけどね。
労基法なんか知らん!俺が法律だ!』みたいな。
じっさいいましたから。
専務はそのかんじではないけど、
また違ったヤバさがじゃっかんありますね。
でもまあ、戦いがいがありそうだ。」



わたし
「(Sさんに)心から敬意を表します」



Sさん
「経営者ってこんなのばっかです(笑)」



Mさん
「当事者の団交への出席は必須ではないですが、
いまはわたしたちがついているわけですから、
働いていたとき 言えなかったことも、
思い切って主張しやすいとおもうので、
ムリがなければ、Yさんにも団体交渉に
出席していただきたいです。
もちろん、編集長は出席しないように、
あらかじめ求めることも可能です。」

・・・


編集長にはもう会いたくないし
声を聞くだけで怖いようなきもちだが
団体交渉には出席したい。

会社がどのような 返してくるか気になる。
1週間でちゃんと返してくれるだろうか。