BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

海猫沢めろん『もういない君と話したかった7つのこと 孤独と自由のレッスン』-191220。

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www.kadokawa.co.jp

最近、高度っぽい本にトライしては
やっぱり全然わかんなくて途中でやめるってことを
繰り返していて
あんまり楽しくない読書生活な感じがしている。
そこで、成功体験を積み上げよう、とか思い
書店で、薄くてやさしそうな文庫本を選んでは、
さくさく、読んで読んで読んでいる。

エッセイとかが良いのかな~という感じだが
特に、こだわらず、何でも良いつもりではいる。

この本は、背表紙の著者名を見た時、まず
「うわー、売れなさそうな名前だなあ・・・」
と思って、それで購入した(→!?)

若い人に共感してもらいやすいように
いまどきっぽい表現を
(「人物像がアップデートされていく」とか)
ことさら用いているところが、
少し、痛々しくて、
そのせいで「何を言ってるんだかわからん」
みたいになっている所も少なくなかったが・・・

わたしは、自分が、この人とだいたい
似たようなことを考えていて、
こういう考えの方向に行きたいと
思って生きている、ということを
はっきりと感じた。
読んでる本とか観てる映画とか
すごい似てるし(笑)

この人の言うことを、ちょっとうっとうしいと思った。
もしかしたらわたしは、ちょっとうっとうしい
人間なのかもしれない(笑)
いや ちょっとじゃないか(笑)

あとがきの最後の最後の文末に
「(読者のみなさんが)
 すこしでも楽に生きられてると
 いいなと願っています。
 でも、楽にならなかったとしても大丈夫です。
 安心してください。
 ぼくも相変わらず同じような気分で生きています」
とあった。

何が安心してくださいぼくも同じですだ、
あんたと同じだからってそれが安心の理由に
なるもんかくそったれ、と 思いつつ・・・
実のところちょっと涙ぐんでるわたしがいた。

この本を読んでいた時、絶えず
柳田邦男の『犠牲 サクリファイス』(文春文庫)を
思い出していた。(柳田國男じゃないよ)

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books.bunshun.jp

学生時代、柳田邦男のノンフィクション作品が大好きで、
発表されている著書はもう、それこそ片っ端から読んだ。
そのなかのひとつだった。
著者のご次男・洋二郎さんが、自殺をはかったすえに
脳死状態に至った時のことをつづる、手記だった。
これだけ、明らかに、わたしが読んだ著作のなかで異質だった。
これだけ、著者が自分自身のために書いたという感じがした。
柳田邦男の文章は通常、豊かななかにもカッチリとしていて
頼りになるお父さん、みたいなにおいがするのだが
サクリファイス』はどうも少し乱れがあり、
客観性に欠ける部分があり、でも
他のどの作品でも到達できていないところに、
突き刺さるかのように、到達していた。

なんだったのかな・・・
「すまなかった、許してくれ」みたいな気持ちと、
悲嘆と、後悔と、怒りと、愛情と、安堵・・・

このあとから柳田邦男のノンフィクションのテーマは、
少しずつ、変わっていったなあと感じる。

わたしには、
サクリファイス』の洋二郎さんと、
『もういない君と~』に登場するKさんが、
良く似ているように思えてならなかった。
あまりに繊細だった所とか。
わたしは洋二郎さんやKさんと会って、
話してみたかったように思う。