BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

乙一に失望。-191201。

乙一「シライサン」を読んでみた。

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乙一
文章が良くなくなった。
思い返せばずっとまえから・・・
良くなくなってきていることには気付いてた。

前は圧倒的に良かった。うまかった。大好きだった。
彼の文章がたたえていたあの美しさ、
あの緊迫、あの寂寥は
正確にはいつから、なぜ、
どこにいってしまったのだろうか。
それらとひきかえにして、
獲得したものが他にあるというのだろうか。
そもそも文章が良くなくなる、なんてことが
あるものかなあと思う。
乙一のような作家に限って。
書けば書くほど良くなるもので、その程度に上限はないと
かつて乙一自身も語っていたのだが。
乙一は元もと映画を作りたい人だ。
それはわたしも知っている。
映画作りに役立てるために文章力を磨いてきたようなことを
以前どこかで書いていたのを読んだことがある。
『小生物語』だったかなあ・・・
乙一のその考えが今も変わっていないならば、
映画が作れるようになったから文章はもうイイや、
となったんだろうか・・・
そんなバカな話あるだろうか。
わたしも自分で言っててわけがわからない。

だらしがない文章になったと感じる。
もっとひきしまった、触れれば切れそうな文章だった。
冷たく寂しい美しさがあった。
それがなくなった。
とても残念に思うなあ。

 

ストーリーとしてはどうだろう・・・
終盤は少し 良くなってきたような感じがあったが
こんな風にあわただしく伏線を回収しようとするなんて。
らしくないなあ。
らしくないよ。
いいわけじみているし、説明くさいし、
なんといっても本当に文に味がない。
説明がなければ読者を納得させられないなどと
考えるような作家ではないと思っていた。
読者が作家をこんな風にしてしまった、
ということなんだろうか・・・。

あんなに良い香りのする文章だったのに。

わたしが好きな乙一は 断じて
こんなもんじゃなかった。