BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

メモ。-190829。

ものが言えない木や石や花やそういったものは、自分の美しさを認めてほしい、誰かに見てほしい、そのために人間を作った、そうリルケは考えたのね。宇宙は、自然という存在は、自分の美しさを誰かに見てもらいために人間を作ったんだというふうに考えたんだねえ。これは科学的根拠なんか何もない話で、学問的に考えると、とくに理科系の人は、そんなのは自然の目的論的解釈で、非科学的な哲学だというわけだね。でも哲学でけっこうなんだ。これは哲学なんだから。人間は、この全宇宙、全自然存在、そういうものを含めて、その美しさ、あるいはその崇高さというものに感動する。人間がいなけりゃ、美しく咲いている花も誰も美しいと見るものがいないじゃないか。だから自然が自分自身を認識して感動するために、人間を創り出したんだ。 そう思ったら、この世の中に存在意義がない人間なんか一人もいないわけ。全人間がこの生命を受けてきて、この宇宙の中で地球に旅人としてごく僅かの間、何十年か滞在する。その間、毎年毎年花は咲いてくれる、これはすごいことでありまして、たとえばうちの庭の梅の花も、多少時期は何十日か遅れることがあっても、必ず約束したように、毎年毎年咲いてくれます。そういうふうに毎年毎年花を見る、毎年毎年、ああ、暑かった、ああ、寒かったと言って一年を送る、それだけで人間の存在意義はあるんです。この社会に出て行って、立派な社会貢献をしたり、あるいは自分の才能を持って名前を輝かしたりしなくても、ごく平凡な人間として人生を終わって、それで生まれてきたかいは十分にあるわけです。

・・・渡辺京二