BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-『イースター・パレード』-190816。

原題:Easter Parade
チャールズ・ウォルターズ監督
1948年、米

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公私ともにパートナーに、という筋書きが、腹落ちしない。
ジュディ・ガーランドフレッド・アステア
それぞれに、キャラが立ちすぎている。
このふたりがくっつきます、といわれても
(芝居とはいえ)ピンとこない。

ふたりの女性の間をふらふらするジョニーには
ちょっとイライラさせられたが、
悩みのなさそうな、軽~い表情、
良いもの食べて育った健康体型、
優雅で鷹揚、・・・今考えると良かった。
金持ち喧嘩せずじゃないけど、
変にガツガツされたらそれはそれで気持ち悪い。
調べたら、役者さんは
本当に英国の上流階級のおぼっちゃんとのこと。

ドン(アステア)とハンナ(ガーランド)の
デュエット・ナンバーとしては
一般的にはルンペンに扮して歌う
「A Couple of Swells」の、評価が高いようだけど
わたしはあれは、そんなに良いとは思わなかった。
ジュディ・ガーランドが歯抜けのホームレス男を
演じてるのが、妙に生々しく感じて、笑えない。
それに、ふたりが出演している舞台の格や曲が、
物語のなかの現実に即してない気がする。
ドンはすでにブロードウェイのスーパースターだ。
長年組んできたパートナーに去られたというくらいで
仕事の格まであんなに下がるもんだろうか。
ブロードウェイはそんなにも厳しい世界なんだろうか・・・
曲もドンのようなスターが今さらやるようなものじゃないと思う。
ハンナの個性に合わせた、という設定は理解できるが
個人的には、やりすぎに思える。

わたしが好きなのは
ハンナらしさを活かすプログラムを
作っていくことで合意に至ったふたりが
セッションを楽しむ場面や、
新作舞台のオーディションの場面。
カッコイイし、アステアもガーランドも
いきいきとして見える。

ドンが、ソロでダンスを繰り広げる場面は、
バックダンサーたちがアップテンポで踊るなか、
ドンの動きにだけスローモーション効果が加えられている。
なぜ ドンだけがスローなのか。
ハンナから見た彼だから、だと思う。
ハンナが、舞台袖からドンをうっとりと見つめている。
イースター・パレード』はハンナの恋の物語なのだ。

昔なじみのバーのマスターに
「恋の終りは新しい出会いのきざしだよ」
と励まされて
ハンナが歌う場面も大好きだった。

「陽気な詩の中なら、それもありかも
 でも現実には二度目はめったにないわ
 次はもっと大きな幸運が、なんて・・・
 次の恋なんてわたしにはないの
 新しく始める決心をしても
 心には穴が開いたまま、ふさがることはない
 言わないで、『また良いことがあるよ』なんて
 そんなことは起こらないもの」


息をするように自然に、翼があるかのように優雅に
歌い踊る往年のミュージカルスターが大好きだ。