BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

マンガの感想-佐々大河「ふしぎの国のバード」6巻-190720。

「ふしぎの国のバード」
6巻
佐々大河 作
ハルタコミックス

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www.kadokawa.co.jp

もうすぐ目的地の北海道に到着するのだが
いろいろと前途多難だ。がんばれ~
わたしはイザベラ・バード
「日本奥地紀行」なら読んだことがあるけど
あの本の記述からだけでは
本作に描かれているようなことまで
想像することはとてもできなかった。

東北地方の一地域のお葬式の光景や
紙漉きの仕事、
頻発した大火災と火消しの仕事などなど
もう今じゃそうそう見ることのできない
明治初期の日本の人びとの暮らしぶりを
熱意たっぷりに描き出してくれている。

わたし、火消しが、燃える建物の上に乗って
纏を振り回すのの、意味を知らなかった。
伊藤鶴吉が、イザベラに説明したところによると、
纏を振る役は、建物もろとも焼け死ぬことになっても、
消火が終わるまでは、屋根から降りないんだって。
仲間たちが必死で消火活動に当たるのは、
纏を振る役を死なせないためでもあるんだってさ。
知らなかったわ・・・スゲエ・・・
火消しが庶民のヒーローってのもわかるわ。
また、火事場は、大工たちの腕の見せ場でもある。
彼らは消火活動が行われているそばから
さっそく家々の建て直しに取り掛かる。
早ければ、火災が起こった当日のうちに
町まるごと再建してしまうこともあるという。
(再築費用はどうなってるんだろうと思ったけど
 そこに関しての説明はなかった。
 貧しい集落の火災だった。
 支払い能力がある人がいるとも思えなかった)
まだ火が残ってブスブスいっている所で
平気で作業をしているので、イザベラが驚いて
どうして完全に鎮火するまで待たないの、
せっかく建てても、また燃えちゃうかも・・・
と尋ねると 
大工は
「何を言ってんだ、この人は」という顔をして
イヤ燃えたらそれもまた建て直すだけだぜ・・・と。
おかしいとかおかしくないとか
ツッコむとかツッコまないとか以前に・・・
このシーンは
同じ日本人ではあるが わたしまで
話が途方もなさすぎて笑うしかなかった。

通訳兼ガイド役の伊藤鶴吉は
外国人相手にずっと仕事をしてきたが
日本人であり、貧しい家の生まれで、
二十歳になったかならないかくらいの青年だ。
西洋人のイザベラの事情や
価値観を深く理解していると同時に
自国の同胞の立場も、わかっている。
イザベラに
「彼らがああいうことをするのは
 これこれという慣習に従っているからです」
などと、客観的な視点から解説を加えることもあるが
例えば、女の子の成人式である「髪結い」が
初潮を迎えたことのお披露目であることを知って
信じられないという顔をしているイザベラの気持ちが
鶴吉にはピンとこない。
消火活動が済んでいない火事場で
早くも大工が働き出したのを見て
イザベラは眼をまんまるにするが、
鶴吉は大工と一緒になって
「その何がおかしいんだ」という顔をする。
鶴吉のポジションはおもしろい。
このマンガにとって、重要なキャラクターだ。

水害で急死した人物の、葬儀の場面は興味深かった。
全部セリフで説明したら紙面が文字で真っ黒になり
絵が隠れてしまっただろうと思うくらい
豊かな情報に満ちたエピソードだった。
一夜にして未亡人となった女性は
人手不足のため、義理の弟と2人で湯灌を行う。
義理の弟が死者の頭を剃る間、
起こした遺体を支える役目を受け持つが、
他ならぬ夫のものとは言え、
剃り落とされた髪の毛が自分の顔にふりかかる。
思わず顔をそむけてしまう彼女の姿が 
すごく印象的だった。

感情を押し殺していることに
ストレスを感じる余裕さえない未亡人の心が、
イザベラの存在によって、
ときほぐされていくところは良かった。