BRILLIANT CORNERS-2

本や映画の感想。まれにやる気があるときは別のことも書いています。

映画の感想-「ザ・ファブル THE FABLE(2019)」-190719。

ザ・ファブル
英題:THE FABLE
江口カン監督、2019年、日本

f:id:york8188:20190719235554j:plain

movie.walkerplus.com

ジェット・リー岡田准一柳楽優弥伊勢谷友介
男前四天王 現役映画俳優アジア部門は
彼らでカタい。わたしはそう思っている。
そのうち2人をいっぺんに出してくるだと。

直視するのが つらい・・・
め、眼が! 眼があああ!!

岡田准一の「ファブル/佐藤」役、ハマってた。
もし岡田准一という役者がいなかったら
実写映画化しようという話さえも
出なかったんじゃないかなと思う。
「1年間、『普通の人』の生活を送る」
ボスの言い付けを真剣に守り通そうとする姿。
幼い頃から人殺しとしての英才教育を受けてきて 普通の子どもとしての生活をした経験や一般的な社会教育を受けた経験が乏しいためか
感覚が、なんだかいろいろズレてるが、
マジメな性格がいじらしい。
バイト先で絵をほめられたのがうれしくて
夜中の部屋で鼻歌をうたいながらお絵描きするところとか、
この上もなくシュールだ・・・。
しかも基本的に 家の中では全裸で過ごし
頭の上にインコを乗っけている・・・。

柳楽優弥も良かった。何よりも、本人が楽しんで
演じているように見えたことに、好感を持った。
ジェット・リーもそうだけど
声が高めで、こう言っちゃなんだが
発声がやや「ガチョウ」っぽいのが
役柄の幅をせばめてしまっている感じがして
もったいないなと、ときどき思う。
もっと、いろんな役をやっているところが見たいなー。

本作を、単純に映画作品として考えると・・・
クライマックスが、クライマックスらしく
盛り上がりきらなかったような気はちょっとした。

まず、ミサキ救出作戦の側面で言うと、
この程度じゃ、ちょっと甘いなと。
柳楽優弥が演じた、コジマのやることには
卑劣さと狡猾さがもっと欲しかった。
コジマのやり口が、悪者としてやや中途半端なので、
ミサキ(山本美月)が、あんまりひどい目に遭うことがなく、
したがって、救われた時の「良かったね」感も、薄かった。
ミサキが、今回の事件で、どういう目に遭わされるかは
百歩譲って別だとしても、せめて、例えば
過去にアダルトビデオに出演したことがあり
(出演を要求されたものの断った、ということになっていた)
その時に、関係者に手ごめにされて弱みを握られたか、
暴力を振るわれた経験があるか・・・くらいの
深刻な心の傷を背負っている感じでないと、
物語としては、つまんなかったなと思う。
暗い部分は、躊躇なく、暗く描かないと。
明るい部分の明るさが、際立ってこない。

コジマ回収作戦の側面で言うと
ファブル/佐藤のアクションシーンは・・・
あれは文句なしにスゴかった。
「人を殺してはならない」という制約があることが
敵アジト潜入の場面を おもしろくしていたと思う。
それに、
もしかしたらこんなことは、
まったく重要じゃないかもしれないんだけど、
ひとつ、個人的に印象に残ったことがあった。
ファブル/佐藤の動きだ。
彼はミサキを救出するために敵地に乗り込むと、
以下の一連の動作をただひたすらに繰り返した。
(1)攻撃をかわす
(2)腕に打撃を加えて武器を奪う
(3)気絶させる
(4)奪った武器で周囲を威嚇する
※(1)~(4)を繰り返す
それは、
敵がどこから顔を出そうが、
どんな風に襲ってこようが、
どちらの手にどんな武器を持っていようが関係がなかった。
状況を瞬時に判断し、的確に体を動かし、
機械のようによどみなく、作業を行う。
殺し屋、暗殺者、武器の扱いに長けた軍人
といった類のキャラを主人公とする映画は 
今までたくさん観てきた。
でも
「ああ、彼らが現場でやる作業ってこういうこと」
と、「自分にもわかる」ことという枠組みのなかで
とらえることができたのは
本作が初めてだったな。
想像ができたのだ。
人を殺したことも武器を持ったこともないけど、
「仕事」は、わたしもしてきたから。
仕事は、知っている作業の繰り返しで成り立っている。
よく知っていることを、今日もやる、
それは、仕事の根幹の部分に関わっている。
ずっとやってきたことを今日も明日もずっとやってると
動きにムダがなくなってくる。
着手してから作業を終えるまでの時間が短くなってくる。
作業中に何が起こってもそんなに驚かなくなる。
対処できるということを知っているからだ。
それどころか、仮に何か起こっても、それが起こることが
数秒前から予測できていたような錯覚を覚えることもある。
何度も何度もやってきたことの記憶の集積が
カン、とか経験値とか呼ばれるようなものへと形を変えて
身についていくのだと思う。
また、何回もやると、
肉体的に疲れてきたり、
力の入れ方にムラが出てきたり、
精度が落ちたりする。
繰り返す、ということが心身に及ぼす影響。
わかるようになっていく。
疲労や惰性によってミスが出るかもしれないことを見越して
当日あたりの作業量や所要時間にあたりをつけることも
可能となる。
すべて、仕事だ。それなら理解できる。
ファブル/佐藤を見てて、
彼が仕事をしているということが
実感をもって迫ってきた。
 
惜しいなあと思ったことがあった。
ファブル/佐藤が 仕事の時には覆面を着ける
という設定だ。
岡田准一は確か、何らかの格闘技の分野において
インストラクター資格を持っている。
本作でも、主要な場面のバトルシーンの振付は
彼自身が担当したような話を聞いた。
もしかしたら自分のシーンは
全部、スタントなしでこなしたのかも。
そのくらいのことはできる人だ。
覆面着用の設定は、返すがえすも惜しい。
岡田准一が、自力であれだけのシーンを
やってのけたのだとしても
本当に彼かどうか、わからないことになってしまう。

敵アジトの場面は、
黒スーツのモブヤクザが、叩いても叩いても 
ウジャウジャわいてくるところが
(何しろ気絶させるしかないので、起きたらまた
 追いかけてくるから、敵が減らない)
なんか、白黒時代の喜劇映画とか
吉本新喜劇」とか「ドリフ」の
舞台みたいだな~って感じがあった。
本当は、限られた数しか役者はいないんだけど、
ワーッと一斉にドタドタ舞台を駆け抜けて
舞台裏で急いで服を着替えてまた出てくることで
モブキャラが無限にわいてくるように見せる、みたいな。
そういうのを狙ったんだろう。
バカバカしかった(笑)!!

物語のスケールは
そんなに大きくなく、
言ってしまえば なんということのない話だ。
(原作マンガも確か、そういうかんじだ)
なまぬるいなあ、もっとギリギリ締め付けた
感じにしてくれても良かった・・・、と
思った部分もあった。
でも
話はムリなく、わかりやすく進行した。
メインキャスト以下 どの役者さんも、
自分の仕事をきっちりとやっていた。
アクションとドラマとユーモアが
悪くないバランスで配合されていた。
ファブル/佐藤とそのボス(佐藤浩市)、
コジマとその兄貴分(安田顕)、
この4人のキャラクターの配置はうまかった。
ファブルとコジマのたどる道
つまりボスと兄貴分のそれぞれの選択が
最後にきれいに対比をなした。
全体にまとまり良く作られていた印象を受け
最後まで楽しく観られる映画ではあった。